純愛

吉木 海

第1話 告白

「好きです。付き合ってください。」

中古の黄色い軽自動車を八乙女駅の高架下に止め、静まった夜に彼女の目を見れないままで、震えた声のままぼそっとつぶやいた。


奏は、純朴に見られる。童顔で、内気で素直というインターフェイスゆえに、良くも悪くも何処でも特別扱いに慣れた少年であった。


玲子との出会いは、ショッピングモールで働いていた時に兄ちゃんとしたっていた先輩と

お姉ちゃんとしたっていた彼女さんの紹介であった。

純朴にみられがちだが。奏は、小学生の頃からエロ本やらAVやらが周りに溢れていて、頭の中は常に不純な欲望の塊であった。

「奏君彼女いるの。」

「いないですよ。」

本当は欲しいのに照れというのか、青年期の母に対する態度で

「彼女は欲しいけど、あんまり恋愛とか興味無いんですよね。」と

今思えばガキだったんだと思う。


高さんと咲さんは、本当に強引に優しかった。

飲み会に連れてってくれたり、合コンに連れてってくれたり、仕事や恋愛を惜しみなく。

猫の首根っこを掴むように奏を連れ回す。

そんな日常を奏は少しの大きな喜びと多くの小さな鬱陶しさと捉えていた。

その強引な優しさの一旦で、玲子を紹介された。


最初に会った時には、タイプじゃないと。

しかし、このまま恋愛を知らない自分に情け無さや恥じらいを感じて、なんとなくデートを重ねた。

近場のファミレスへ行ったり、ドライブをしたりして、ネットで3回目くらいのデートで付き合うという記事を見ていて、好きかどうかも分からないまま告白をした。

それは、幼少や青年期の恋心なぞがなかったので、本当に好きという気持ちがなかったのだと思う。


玲子は「本当に私でいいの。」と言った。

奏は内心で素直さゆえに分からないと言いたかった。分からないけれど付き合って見たかった。やり目に近い心境だった。そんな不純に塗れたままで

「玲子がいいんだ。」と言った。

暗く静まった夜の車内で玲子は目を閉じた。

そっと重ねた唇は柔らかく心地良かった。

震えていた。感動なのか何なのかわからない。熱くなった心臓の鼓動と混乱が全身を満たしていた。

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