異世界で生きるキミと
太田千莉
はじめまして、異世界のキミ
あーあー、こほん。えー、本日は終焉なり。というか昨日も今日も明日も終焉なりー。きっこえてますかー? なーんて――
わわっ?! えっ、これホントに聞こえてるの!? お、おーい……?
聞こえて、るんだ。まさか本物だったなんて……。
おっ、と。ごめんごめん。何が何だか分からないよね。
えーと、まずは自己紹介から。私の名前はエリューシア。恐らくキミとは違う世界に生きてる、普通の女の子だよ。
あれ。混乱してる。はいはーい、落ち着いてー。それじゃあ何言ってるのか分からないから。
え? 何も言ってない? でもさっきからずっと聞こえてるよ?
"なんだこの声"とか"ドッキリか何か?"とか、えっと、その……”可愛い声だな”とか…………。
喋ってない? 考えてるだけ? えっ、もしかしてこの魔道具、考えてる事も伝えちゃうの?
ちょっと待ってね………………。
どう? 何か聞こえた? 聞こえてない、って事は私からキミに伝わるのは声だけみたいだね。良かったぁ。
え、だって、心の声が全部筒抜けなんて恥ずかしすぎるでしょ? 私だったら耐えられないかも。
まぁ、キミはそんな状況なんだけど。
あはは。ごめんね。
えー、そんな事言われても。私もこの魔道具のこと良く分かんないし、変にいじって繋がらなくなっちゃったらイヤだし、このままじゃダメ、かな?
……か、可愛くお願いしたつもりはないけど!? ま、まぁ納得してくれたなら良いや。う、うん……。
えー……、っと! そう! この状況の説明だったね! そうだそうだ!
いま私は、魔法を使ってそっちの世界に話しかけてるの。
私の自力じゃなくて、古代の魔道具を通じてではあるんだけどね。私、魔法はそんな得意なワケじゃないし。普通の人間だから。それで――
ん? 魔法は魔法だけど。
もしかして……そっちの世界に魔法は無い?
え、それならどうやってこの通信を受け取ってるの?
頭に直接声が響くって……、受信側の魔法や魔力に関係無く通信を可能にするとか、どんなトンデモ技術……? 流石は古代の遺物、謎ばっかりだぁ……。
あ、でも物語とかでは有るんだね、魔法。
ふんふんふん。うん、大体その認識で合ってるよ。えむぴー?とかはよく分からないけど。
お、当ったり~。いやー、便利だねぇ。考えてる事が全部分かるの。えへへ。
それで、その魔法で私は今キミに話しかけてるの。あ、突然話し掛けちゃってごめんね? すっごく今更だけど。
なんで話しかけたのか? うーん……、好奇心?
そんな事言って~。キミだって、目の前に『別の世界に繋がる装置』とかあったら、とりあえず一回試しちゃうタイプでしょ?
ふふーん。そうだと思った。
そりゃ分かるよぅ。
あ、違う違う。これは心の声が聞こえるから、とかじゃなくて、キミとお喋りしてたら何となく分かっちゃった。
私ね、旅をしてるんだ。
こっちの世界は面白い事とかなーんにも無くてさ、ただジッとしてるのも退屈で退屈で。
それであっちにフラフラ~、向こうにフラフラ~、ってしてたらこの魔道具に――キミに出会ったの。
……これはもっとなんとな~くそう思っただけなんだけどさ、きっとキミも同じだったんじゃないかな?
楽しい事が大好きで、ワクワクする事、ドキドキする事をいつも探してて。
そうしているうちに偶然、私の通信を受け取ってくれた。
普通の魔法による通信でも、元々同じ波長を持つ人同士か、同じ波長に合わせた人同士じゃないと通信出来ないの。
もしかしたらこの魔道具は、世界を越えて同じ波長の人を探して、通信を繋げる機能があるのかも。
ってことは私たち、似た者同士、だね。
……ねねっ、これからもキミとお話ししたいな。良い、かな?
ホント!? やったっ! ありがとう!
それじゃあ、これからよろしくねっ。
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