融合家族
黄呼静
プロローグ
【家族】(かぞく、英family)
家族とは、婚姻によって結ばれた男女や、その血縁関係にある人々の集団。
しかし今日では様々な紛争、災害、疫病、差別、政治的迫害等の個人の権利を脅かす様々な要因からそれらを保護し尊重し合う個人の集団として、新たな家族の形が要求された。
いわく、融合家族は、人種、宗教、国籍、性別に限らず、またその中核として婚姻関係を結ぶ、構成員の数を問わない。
いわく、国連家族人権委員会は、そうした個人の尊重・包摂の場としての家族の形を、彼らの所属する国家や地域の法令を問わず認め、その差別・弾圧には抗議を行う。
国際連合加盟国は、これら核家族、拡大家族、また特定のアイデンティティによって集合した同性婚や選択家族等の融合的概念としての、この新しい家族の形へ理解を示し、国際的に彼らの権利を守る努力をしなければならない。
家族とは、個人の権利を互いに尊重し、そして社会に包摂、立脚させるための、分かつことの出来ない最小の社会単位である。
正直なことを言えば、こんなお題目なんて当時誰も信じてなんかいなかった。
ようするにこんな制度は、国を追われて欧米のような個人主義の国で暮らさなければならなくなった、難民家族の権利を守るための条約だろう、と。
ただそれでも、こうした制度を受け入れるべきと、なんとなく感じるくらいには、私たち自身今までの家族というものを無条件には信じられなくなっていた。急速に移り変わっていく世の中に、みんな酷く混乱していた。
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