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「ご無沙汰しております、葛西凛太郎です。」
凛さんから急に“先生”な感じになった凛さんが、いつもの優しい笑顔でお父さんとお母さんに挨拶をしている。
お父さんもお母さんもいつもより綺麗な格好をしているし、お母さんなんて絶対にこの日のために新しい服なはず。
そんなお母さんがゆっくりだけどお辞儀をして・・・
「は、るかの・・・はぁはです。」
「お久しぶりです・・・。」
先生が恥ずかしそうにそう言ってから、お父さんを見て・・・
「お父様、悠さんが中学3年生の時の面談以来ですが・・・悠さんから聞いていた話と随分違うので驚きました。」
「・・・話、聞いてるかな?」
「はい、太ったと聞いていたので・・・。」
凛さんが本気でそんなことを言っているのでこれにはやっぱり笑ってしまう。
お父さんは首を傾げながらペッタンコのお腹を擦っているし・・・。
そして、途中で買った手土産を凛さんがお母さんに渡したのを見て・・・なんだか嬉しくなった。
お父さんは戸惑っていたけど、そんなお父さんを無視してお母さんはゆっくりとキッチンに向かった。
お父さんが凛さんをダイニングテーブルの椅子に促したので2人でそっちに向かう。
そしたら、その時・・・
“ハナビ”がチョコチョコと私に近付いてきて・・・
と、思ったら・・・
凛さんの足元に近付いた。
それには驚いた。
ハナビは警戒心が強くて、お母さんと私にしか懐かない。
お父さんにもヘルパーさんにも近付いかないくらいで。
凛さんの足元でじゃれついているハナビを、凛さんは困った顔で笑っている。
「ごめんね、俺は動物を飼ったことがなくてどう可愛がったらいいのか分からないよ。」
「いいんじゃない?
足元でじゃれてるだけだし。
警戒心の強い性格なのに、こんなに急に懐いてビックリなんだけど。
私なんて素通りだったし。」
そう言ってから凛さんの足元にしゃがみ・・・
「ハナビ~!!!」
ハナビをワシャワシャワシャとした。
「ハナビか・・・。」
凛さんにそう言われ、苦笑いで凛さんを見上げる。
「前のネコは漢字で“花火”で、この子にも同じ名前って変かな?」
私が大学1年生の時に拾った“花火”は、死んでしまった。
この黒いネコ、“ハナビ”は2匹目のネコ。
「カタカナだけど同じ名前にして・・・。
“花火”の代わりっていうわけではなくて、“花火”の続きをこの“ハナビ”が鳴らせるように。」
「“花火”の続きを・・・?」
「うん、“花火”の花火の音の続きをこの“ハナビ”が鳴らせるように。」
悠side..........
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