確かにきっかけは『先生に恋をしている少女』に声をかけた事でした。
でも、本当に大切なことは彼女と関わりを持ち、主人公である結也の心境に変化が訪れる事。
ヒロインである汐里とのふれあいの中で、『人付き合いなんか面倒くさい』と思っていた結也が他人との接点を持ち、そしてお盆に帰郷した際に起きる大きな出来事もあって、人付き合いに、そして恋に前向きになること。
少年の青春に訪れるちっぽけなようで、とても大きな心の変化の、なんと心地よいモノか。
優しく、緩やかに流れていくストーリーと、落ち着いた文体で綴られる地の文はとても読みやすく、一話あたりの文章量も丁度良くて、ポンポンと読み進められるテンポの良さがありました。
また、セリフ回しも一人ひとりわかりやすい特徴づけがなされており、『誰が喋ってるのかわからない』という事態が起こらないような配慮も感じられます。
ボチボチと誤字誤用が出てくることを除けば、スイスイ読ませてくれる筆力があると思います。
単純に面白かったです。
劇的なイベントやバトルなんかなくても、娯楽小説たりえるのだぞ、ということを思い出させてくれました。