第1話

「はぁ」


 鏡の前で身だしなみを整えながら、思わずため息をついてしまう。

 登校初日なのに気分が重い。鏡に映る自身の姿に、何度夢であってくれと願ったことか。


『お兄──お姉ちゃん、ため息なんてついてたら幸せが逃げちゃうよ!』


 《スホ》から、明るく咎める声が聞こえてくる。声の主は、妹のサクラだ。

 心配なのか、信用がないのか、俺が諸事情により家を出なくてはならなくなってから、毎日のように通話を掛けてくる。

 

『毎日早寝して、朝ごはん食られるように余裕を持って起きるんだよ?わかった?』

「何回その話するんだよ、通話する度に『お姉ちゃん、口調!』……何回言うの桜、言われなくてもちゃんとするよ」

『学校でボロ出さないように気をつけなよ?』


 母親のごとく確認してくる妹に、いつものように返事をすると、鋭く注意が飛んでくる。慌てて言い直すと、再度心配して問いかけてくる。

 ここ最近、毎日しているやりとりなのに未だに慣れない。


「心配しないで。お姉ちゃん、ちゃんとやれるから」

『本当かなぁ。……あ、もうこんな時間だ。そろそろ私も学校行くからお姉ちゃんも頑張ってね!じゃあね!』


 そう言って、言いたいことを言い終えると、返事をする間もなく通話が切られた。

 俺には口調を直せと言いながら、桜が昔から注意されているそそっかしいところは全然治ってないじゃないか。

 しかし、本当に気をつけなければ。もしも、男だったということがばれたら、学校中で好奇の視線にさらされることになるだろう。そうなれば、華やかな高校生活がまた遠退く。


「よし、気合い入れるぞ!………入れるよ!」


 俺は…木米キマイ ランは、女として生きるしかなくなってしまったのだから。



────────────────────


人物紹介

名前:木米キマイ ラン

性別:女性

容姿:黒髪黒目・ロングヘア・眼鏡(伊達)

身長:167cm

好きなもの:家族・食事

嫌いなもの:いじめ・くさいもの

所属:魑魅高校1-A

能力:TSF・──

備考:TSしてしまった元男子高校生。割と正義感はある方。

前の高校で起きた事件の被害者で、本人はあまり悪くないが解決方法がまずかったため、学校で浮きまくった。学校側も対処したかったが噂が先行しすぎて、転校しか道がなかった。政府から研究協力を条件に、国立の魑魅高校に転校させてもらった。

ゲームはあまりしないが妹に誘われるとする。キャラクリは凝る方。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る