第1部 1章 新たな門出

 桜の蕾が咲き始め、肌寒い季節から少しずつ暖かく変わり、春の訪れ告げ、新たな出会いの季節へと移り変わっていた。

 そして、ここ東日本第1戦士育成高等学校は本日4月7日、新たな戦士を歓迎する入学式が行われる。

 

「だりぃ・・・入学式とかめんどくさ」

 

 そう言いながら、気だるそうに学校へと続く道を歩いているのは、虎城雷音こじょうらいとと言う青年だ。茶髪で全体的に少し短目に揃えられた硬めの髪、鋭い目つきに筋の通った鼻、制服越しでも分かる引き締まった肉体美。制服を着崩し、髪の毛もボサボサの状態で、まさに寝起き直ぐに家を出たといった状態だ。欠伸をした後に、頭をワシャワシャと乱暴にかき、めんどくさそうなにしながら1人学校へと向かっていた。

 

「眠い、帰りたい」

 

 そんな愚痴をこぼして居ると、「よっ!」と後ろから可愛らしい声の女の子に不意に背中を叩き、横からひょこっと顔をのぞかせ、

 

「雷音!おはよ。相変わらず面倒くさそうな顔してるね」

 

 そう声を掛けてきたのは、守武凛もりたけりんと言う可愛らしい女の子。紺白の髪は肩より少し上の所で整えられ、大きくキリッとした目と整った容姿。少しボーイッシュな感じを漂わせている女の子だ。雷音の後を追い走ってきたのか、少し呼吸が荒かったが、すーはーと深呼吸を数回繰り返し息を整え話し始めた。

 

「院長先生心配してたよ。雷音はめんどくさがり屋だからちゃんと入学式に出席するのかな?って。電話も繋がらないから大丈夫か心配だって」

「・・・あぁ・・・寝てて気づかなかった」

「はぁ・・・全くもう。そういう事にしといてあげる。でも後でちゃんと連絡しなよ、ものすごく心配してたんだから」

「まぁ、気が向いたらするよ」

「必ず、絶対にしなさい、わかった?」

 

 目の笑っていない笑顔で雷音にそう告げる凛は、先程のにこやかな時とは違いとても威圧感があった。

 

「うっ・・・わかったよ。帰ったら必ず連絡する」

「うん、偉い偉い!」

 

 ボサボサの髪を撫でられ鬱陶しそうにする雷音と、髪を撫でながら嬉しそうに笑う凛の2人は、他の新入生と思わしき生徒達と一緒に校門を潜る。

 雷音と愛李は同じ孤児院で小さい頃から一緒に育った幼なじみである。学校に入学が決まってからは孤児院を出て、学校の寮で暮らす事になっており、ちょうど1週間前に寮へ入居し、現在はそこから登校している。

 

 校門をぬけて、学校のエントランスへと歩みを進める。エントランスには新入生のクラス表が貼り出せれており、その前には自分のクラスを確認する為に新入生がごった返していた。互いのクラスを確認し喜び会う人、自分のクラスを確認しそそくさと移動する人、名前が見つからずに慌ててい人など反応はそれぞれだった。

 

「どお?自分の名前見つかった?」

「見つけた、1年5組」

「そっか。私はまだ見つからない・・・身長が低くて全然見つけられないや」

 

 凛の問に対して淡々と答える雷音に対して、凛は話を続ける。

 

「私の名前探してくれない?雷音身長それなりにあるから簡単に探せるでしょ?」

「めんどくさっ・・・」

「お願いね」

「・・・わかったよ、探しとく」

 

 口は笑っているが目が据わっており、少し威圧感のある口調、それらを見聞きした雷音は、渋々と言った表情をしながら、小さくため息を着く。

 

「見つかった?」

「・・・・・・あった。1年5組」

「本当!?やったー!雷音と同じクラスだ!1年間一緒にだね!」

「そうだな」

 

 雷音の肩に手を置き飛び跳ねながら喜ぶ愛李を尻目に、

指定されたクラス1年5組へと重い足取りで進む。

 教室の扉を開けると、既に仲良くなったのか数人で楽しくお喋りをしているグループや、入学前からの知り合いなのか同じ席に集まり同じクラスになった事を喜んでいる人、中には1人静かに席にすわっている人などで、既にクラスの雰囲気は出来上がっていた。

 

 教室に入り指定された出席番号の席に座り1人静かに携帯をいじる雷音。凛の方は前の席の女子と仲良くなったのかお喋りしている。

 すると、大きな音を立てながら教室の扉が勢いよく開かれた。

 

 教室に入ってきたのは、クラス名簿と思わし物を片手に持ち、腰から刀を下げた担任と思わしき男性教師じった。

 身長も高く、あごに髭を生や来ているせいか、ものすごく怖い印象の教師だ。

 

「お前ら席に着け」

 

 黒板の前にある教卓に向かいながら男性教師がそう告げると、皆一斉に静かになり、速やかに自分の席へと戻っていく。

 

「1年間お前らの担任を務める、柊清十郎ひいらぎせいじゅうろうだ。そして、もお知ってるとは思うがこの学校は『狂獣』と戦う戦士を育成する為の学校だ。お前らを1人前の戦士にして使えるようにするのが俺の役目だ。厳しく行くから覚悟しとけ」

 

 東日本第1戦士育成高等学校の紹介と威圧感のある自己紹介を終え、1人1人出席を取っていく。

 確認が終わり、勢いよくクラス名簿を閉じ、今日の流れを軽く説明し始めた。

 

「とりあえずこの後直ぐに、大講堂で入学式を行う、終わり次第教室に戻り、教材やらなんやら必要なものを配布する。それが終わり次第今日は解散だ。お前らわかったか?」

『はい』

 

 清十郎の問に対して、皆しっかりと返事をした。いや、返事をしないと不味いと思ったのだろう。だが雷音は返事をすることなく静かに外を流れていた。

 

「よしっ!それじゃあ大講堂に移動してくれ、各席に名前が書かれた紙が置いてあるから自分の名前の所に座って待機だ」

 

 大講堂に移動し式が始まるのを待っていると、突如講堂ないが暗くなり壇上の照らされる。入学式開始のアナウンスと共にプログラムが進んでいき、最後の校長の挨拶が始まった。

 

「皆、この度は入学おめでとう。儂はこの学校で校長務めている皇道三すめらぎどうざんと言う。余り長話しても退屈だと思うので手短に話そう」

 

 そう言うと一つ一つの事を簡潔に話し始めた。主な内容はこうだった、勉学に勤しんでくれ、友と切磋琢磨して頑張ってくれなど、ごく普通の校長挨拶と言った感じだった。だが最後の話だけは少しだけ雰囲気が違くて、講堂内に緊張感のある空気が流れ始める。

 

「最後になるが本校は狂獣と戦う為の戦士を育成する学校である。卒業後は様々な機関や部署に配属され、狂獣と戦う事になると思う。中には学生の内から戦場に出る物も出てくるだろ。戦闘に出るということは、無事に帰る者もいれば、戦死してしまう者もいる」

 

 その言葉を聞いた瞬間さらに緊張感が高まり、緊張からか唾を飲み込む者、拳を強く握りしめる者、聞き慣れない戦死という言葉に血の気が引いてしまう者。狂獣と戦うという事がどれだけ大変で恐ろしいものなのか、この講堂内の雰囲気からひしひしと伝わってくる。

 

「戦場では何が起きるか分からない。だからこそ私達教師は厳しく指導していく。いつあ終わりを迎えるか分からないこの戦いで、必ず生きて帰ってきて欲しいから。だから私達を信用してついてきてほしい、必ず一流の戦士としてこの学び舎から卒業させて見せよう」

 

 そう告げる校長の話が終わりを迎えた。


 教室に戻る帰り道の新入生の雰囲気や顔つきは、登校して直ぐの時とは大きく違い真剣なものになっていた。

 教室し戻った後は、当初の予定通り教材など学生生活で必要な物の配布を行い、その後は明日以降の大まかな予定を担任の柊先生から伝えられた。

 

「明日は1日掛けて身体測定と体力測定、適正検査、これらの能力試験を行うから戦闘着忘れるなよ」


 そして、全ての予定が終了し入学初日は終了した。

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