カフェの不思議話

@a-eiji

本当になる話

 あるカフェに敏子とます江が来ていた。敏子とます江はお茶をしに来ていた。会話は噂話から職場の愚痴とありふれたものだった。二人はこのあとに来る京子を待っていた。

 待っていると敏子が退屈して、携帯を取り出した。携帯には昔のネットの怖い話があった。

「ねえ、これ覚えてる?」

「え?ああ。これね。2chとかのまとめであった怖い話」

「そうそう。最近動画サイトで流れていて、また見るようになっちゃのよ。」

「へ〜。」

「どれもそこそこ怖い話なのよね。田舎独特の風習のお祭りが実は恐ろしい神事だったり。」

「でも、どれも作り話でしょ?」

「そこはご愛嬌よ。本当だと思って聴くのが楽しいんだから。」

 そこに知り合いがカフェに到着した。

「遅くなってごめん。」

 ます江はいう。

「ううん。気にしないで」

「ちょっと電車が5分遅れちゃってて。バスも事故が起こってて10分くらい遅れたの」

「事故って大丈夫だった?」

「うん。ガードレールに。」

 ます江はその事故のことを思い出す。

「いや、ごめん。ガードレールじゃなくて、標識だった。」

「それじゃあ、警察も来てたんじゃない?」

「ええっと。そこに、2人の警官がいたわ。一人の警官が手際がよかったから私が思ったほど遅れなかったわ。」

 敏子は京子の話し方が引っかかった。敏子は京子と初対面だった。敏子はます江に聞いた。

「ねえ、京子さんの話し方ってなんか不思議じゃない?」

「あ、敏子にはまだ話してなかったわね。京子は話したことがなぜか現実になるのよ。」

「え?」

「この子、高校時代からの知り合いで何故か言ったことが実現するのよ。歴史の先生が忘れ物をするっていうと、忘れ物をするし、数学の先生が計算間違いをするっていうとその場で計算間違いをするのよ。」

「え!?そうなの?京子さん。」

 京子は頷いた。

「へ〜。それじゃあ、あなた願いを叶えたい放題じゃない。」

「そうでもありません。すべて正確に言わないとあらぬ方向に実現してしまうので。気をつけて話さないと危ないんです。」

「へ〜。」

 その時、敏子は怖い話のことを思い出した。敏子は京子に言った。

「それじゃあさ。もし、この話をしたら実現するってこと?」

 ます江は止める。

「やめなさいよ、敏子。本当になったらどうするのよ?」

「大丈夫よ!登場人物がAとかBだから特定の誰かとかじゃないわ。それに、それが起こったら面白いじゃないの」

 敏子は京子に怖い話のサイトを見せた。

 内容は、数メートルのトンネルに入ると、遠くで2mくらいの大男が立っていて追われる。トンネルを出ようとしても出られない。そして、最後に祝詞を上げて大男を追い払うというストーリーだ。

 京子は店の邪魔にならないようにぼそぼそとストーリーを読み上げた。

 敏子はわくわくした。ます江の顔は次第に青ざめていった。

 読み上げると敏子はいう。

「うん。まあ。なにも起こらないわよね。」

 敏子はコーヒーをがぶ飲みした。

 京子はいう。

「まあ。わからないですけどね。でも、ます江が言ったことは本当よ。

 例えば、

 あなたのコップの底が弾けるように割れる。」

 そういうと、敏子のコップの底が弾けて割れた。ます江の表情が更に青ざめた。

「何も起こらないと思うけど、まあ気をつけてね。」

 その日の帰り道。敏子は自分の家に帰る。最寄りのバス停を降りると、トンネルを通って帰っていった。ただ、敏子は京子のことを思い出した。敏子はいう。

「きょ、今日は別の道で帰ろうかな。」

 ただ、足はトンネルの方にしか向かない。足を別の方向に向けようとすると力が出なかった。

 試しにトンネルに向かって右足を一歩踏んだ。左足を別の方向に向かせようとしても動かない。

 どんどんとトンネルの方向に近づく。

 トンネルの中腹につくと、大男がトンネルに立ちふさがっていた。

 敏子は逃げ出す。敏子はトンネルを走った。敏子は全速力で走るが大男との距離が縮まらない。敏子の走る速さでこちらに向かってくる。速度を緩めると大男が近づいてくる。

 敏子は大男を倒す祝詞を思い出していた。

「ええっと。確か確か確か!」

 息も絶え絶えになったときに敏子は祝詞を思い出した。そして、祝詞を大男に唱えた。

 しかし、大男はいなくならない。それどころかこちらに向かって来る。

 敏子は何度も何度も祝詞を唱えた。敏子は気づく。


 京子の祝詞は一文字間違っていた。

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