第2話 キミとの再会

 姉が拍子木を両手に持ち、キミの前に出てきてしゃがみ込む。


 カンッ、カンッ!

 拍子木を打つ渇いた音が姉妹とキミの三人しかいない夜の公園に響いた。


東西とざい、トーザイ、このおんにぶらさげますのは仁輪加にわか標題ひょうだい。キミとの再会、キミとの再会。あいえんじまするわ『キミの事が好きな私たち姉妹』。まずは口上こうじょう、後はなにやらかやらめちゃくちゃのはじかまり、東西、トーザイ」


 最後の「東西、」で大きく打ち、小さく鳴らしながら姉が戻って行った。


『おーいッ! 急がへんと遅刻ち  こ  くしてしまうがなも』


「───待ってくんせぇ。そんな事を、言われても、足は、急にはようならんわな」


 妹が出てきて、後を追うように姉も出てくる。


『おまはん、その足は飾りかな? わっちには、あ る い て いるように見えるんだがなも』


「そーゆう、おまはんこそ、そのハイカラな靴は、どないしよったんやな。同じ家に住んどるわっちやがな、は じ め て見たんやがな」


 姉が妹の靴を指差す。それを見た妹がトントンと靴で地面を叩く。


『おう、コレかな。コレはな、ちょう 足が早うなる靴やな』


「それはそれは。そんなええ靴があるなら、なんで、わっちのぶんも買ってくれんかったんやな」


『それにはな、ふか〜い事情があるんや』


「ほう。ほうかな。そのふか〜い事情とやらをわっちに話してみてくんせぇ」


『まあまあ、それは置いといて』


「置いとくなやが』


 軽いツッコミを姉が入れる。


「そこに、素敵な人がいるやろ?」


「はぁ⋯⋯、置いとかれたのは置いといちゃるが、確かに素敵な人がいるおるな〜」


『そうやろ? でな、その人ととの出会いをちょっとばかり振り返ろうと思うんやが』


「まあ、確かに、わっちは二人が仲ようなった切っ掛けは知らんな。なら話してみんせぇ」


『あれはな、わっちが初めて図書館に行った時のことやけどな。友達もまだおらん中でな、一人きりで読書ど  く  しょしとったんやな』


「待て待て、おまはん、な ん で 、姉たるわっちに声をかけんかったんやな」


だ れ  が 頭お花畑でコスプレしてる、妹より精神年齢の低い姉を連れてくんや』


「よーゆうわ。おまはんこそ、本の虫で、一人で本ばかり読んでたやろう」


『まあ、その通りやからわっちは否定せえへんけど、そのおかげで"キミ"と仲ようできたんやな』


 妹がこちらを見ながら。


「そりゃー、どういうこっちゃ」


『その図書館でキミとの出会いがあったんやがな、親から図書館には行くなと言われてしもうてな。キミがおまはんの同級生で、友達として再会できた時は嬉しかったなも』


「それは良かったなも、そういえばキミもハイカラな靴を履いてるんやな。本が好きってのもよー似とるなも」


『再会した時のキミも親から図書館に行くなと言われたったんやろな。靴を見たらすぐにまだ本が好きと分かって嬉しかったなも』


「おまはん、どーして靴を見ただけでまだ本が好きとわかるんやな」


『ただの靴やなくてハイカラな厚底の靴を履いとるからやわな』


「ほんなら、ただのハイカラの靴を履いていたら本は好きではないんかな」


『そんなもん決まっとる。このハイカラな 早すぎる 靴を履いとったからやからやわな』


「そりゃまたどうしてじゃな」


『さあ、キミと早すぎる靴のことならなあ』


「どうじゃな」


『ほんで(本で)禁止(近視)になるわな』


「『エッキョウ』」

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