短歌連作 退化する本能

石田理論

退化する本能



第一話:若草色の戦士達、土仮面から稲田を守る


第十話:青銅剣を輝かし、巨大土偶の胸を貫け


黒色に固く閉ざした田の下に仄かに光る青い文明


内出血 掌に紫の海 楓に緋の海 無に無の海月


そのむかし、みみずに地底を譲る前、馬は巨大な國を築いた


そのむかし、鳥に翼を捧ぐ前、馬は積乱雲に潜んだ


そのむかし、猿が知性を奪う前、馬は言葉で世界を割った


飛べるほどの大きさはない羽だから僕ら地上で抱きしめ合った


円周率三千桁を記憶したあなたを一桁ずつ思い出す


タイムマシン 二十年後の未来へと二十年かけて行く 獄中記


雪山にケビンは死んだ。この男、つまり私の発見を待つ。


あなたから供給される嘘のみを点滴にして生きてるひとら


アマゾンの首輪みたいだ広場にて僕を囲んで蹴る10の骨


暗闇の央から赤子が現れて赤子が赤子が溢れて止まぬ


洋刀を火輪に入れた裂け目から銀の群卵揺らめいている


口内にゆるくハイチュウ溶かしつつ脳しゅるしゅると萎縮していく


人間の脳を三つ買う、これでまあまあのパソコンが作れる


暗幕の隙間銀ナイフとフォーク 食べられる快楽を見つけた


正中線谷折にして人類は紙飛行機として空を征く


退化する本能 ヒトは避妊してウマは全力でサーキットを回る

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