第78話 無念

ちゅんちゅんちゅん


「………記憶がない」

「え?」


胡桃さんの部屋の前まで行ったのは覚えている。しかしそこからの記憶がない。


「あれ?あえちゃん、覚えてないの?」

「え?」


何か自分はしたのだろうか。

もしかしてお酒……?んなわけないか。


「いやあえちゃん……………….部屋の前で寝たんだよ?」

「は?」


ことの顛末はこうらしい。


〜昨夜〜


「ついに胡桃ちゃんたちの部屋までたどり着いたね!」

もーねが私の方を見る。

「そうだ……ね」

私がウトウトと首を上下に振っていたらしい。


「あえちゃん…….寝よっか」

「二人の……百合を……見る…..ま……では……寝れな……zzzzz」

ついに、私の意識は途切れ、そのままダウンしてしまった。

それどころか、ダウンした時の衝撃で中にいた胡桃さんたちに気づかれたらしく、無様な寝顔を写真に取られてしまったらしい。


そして倒れた自分はもーねに運ばれ……..今に至る….と。


いやわかるよ?最近忙しかったしね?しかも体は子供だからね?無理できないのはわかるよ?

自分があえかとして人格化した時から、徹夜できたりできなかったりしてたしね?


けどよ…….少しは耐えてくれよ……。いや自分の意志が弱かったのが敗因なんだろうけどさ……。

百合とか見るしかないだろ……。


ん?

自分ともーね?

いやいやいや、それは別に……百合だけど尊くないし……『あえか』ともーねは尊いけどね?


って誰と会話してんだろうかこれ。


「そういえば、今日はどこいくー?」

「んー……まぁ前回は普通に外じゃなかくて中を満喫したし…..外行ってみる?」

「いいねぇ!」

「って…..最近思うんだけど、もーね近くない?」

「ピャ!?そ、そんなことないと思うよ?」

ピャってなんだピャって。え、異世界人?

「まぁ外国の人だとこれくらいの距離か。ごめん。なんか変なこと言った」

「だ、大丈夫だよ…..」

なぜかもーねががっかりしていたが何かあったのだろうか。


「外に行くって具体的にどこ行く?」

「うーん。近くの神社とか行ってみる?」

「ジャパニーズビルディング!」

「え、もしかして言ったことなかったの…….?」

『うん!』

時々母国語に戻るのがもーねって感じがしてなんか安心するなぁ……。

「んまぁ、じゃあとりあえず着替えて行ってみますか」

『行ってみよー!』



後から知ったことなのだが、私の寝顔の写真は『木漏れ日』のマネージャーによって拡散されてしまっているらしい。これには完全に私たち二人は驚愕せざるを得なかった。……..赤面の間違いかもしれないけど。

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