クラスメイトに弱みを握られて、ご主人様になるよう強要されました。

草壁

衝撃の告白

学年末テストが終わって、もう少しで春休み。ほとんどボーナスタイムみたいな期間のことだ。


下駄箱の中に封筒が。

いまどき古朴こぼくなことをする奴がいるんだなあと思い、少し浮ついた気持ちで手紙を読んでみると、野郎にしては随分綺麗な文字だ。と言うか可愛らしい文字だ。


手紙には放課後に空き教室に来てくださいとしか書かれていなかったが、これをラブレターだと断定するのは早計だろうか。いや、そうではない。きっとラブレターだ。私は今日、今年に入って実に3回目の告白を受けることになる。そう、私はそこそこ可愛い。そこそこ故にかなりモテる。


ちょっとだけ楽しみにしながら授業を受ける。あんまり内容が入ってこない。結構楽しみなのかもしれない。


別に、彼氏が欲しいわけじゃないし、好きな人がいるわけでもないので、告白されても付き合ったりしないけど、おおよそ全てが平均値な私は、承認欲求も人並みにあるわけで。


そして放課後。


指定された教室は特別棟にあり、夕日がちょうど入らない場所にあるので薄暗くてなんだか不気味だった。いや、これから起こることを考えると、妖艶と言った方がいいか。


というか、呼び出したくせに遅れるなよ。


なんとなく、窓際に立って雰囲気を出しながら待ってみる。


………


ドアの隙間から出てきたのは白くて細い手。

綺麗な手だったので少しテンションが上がった。手が綺麗な男は大体イケメンだ。




「ごめんなさい、姉川あねがわさん、1分ほど遅刻してしまったわ。」


手が綺麗な美少女だった。


背は私と同じくらいなのに、顔が小さく胸がでかい。肩まで伸びた髪をハーフアップにしていて、容姿を一言で表すなら、清楚なお嬢様と言ったところだろう。

同じクラスの、藤原さんだ。藤原天音ふじわら あまね

色白で細くて、いつも本を読んでいるような感じの子。


私はあんまり話したことないんだよな。

たぶんすごく清楚で真面目な子なんだろう。


困っちまうぜ。女子に告白されるのは初めてだぞ。もちろん振るけど、規範的な振り方がわからない。配慮に欠けたことを言わないように気をつけなければ。


「あの、姉川あねがわさん…」

きた。藤原さんが自信なさげに体の前に置いた手が震えている。


告られるやつだ。

私にそっちの趣味はないんだ…

あと、付き合うわけじゃないけどイケメンを期待してたからちょっと残念だ。


「私のことをってください!」



は?


勝手?狩って?刈って?買って?

頭の中に文字を思い浮かべるが、どれも状況的におかしい。


「かってって、なに?モ◯ハン?」



「いや、かるじゃなくて、飼う。」


「買う?人身売買?可愛い女の子なら間に合ってます。」


「そうじゃない。ペットを飼う、の飼う!」


本格的にこの子は何を言っているのだろうか。えっちな本の読みすぎではないだろうか。




「いやいや、無理無理。頭大丈夫?」

煽り抜きで心配している。いや、マジで。




「だから、ご主人様になって欲しいって言ってるのよ。」


なんでそれを少し高圧的に言えるんだろう。


「いや、やだよ。そういう趣味ないから。」

女同士は置いておいて、SM的な趣味はない。

彼女の言葉にかなり引いた。


すると、彼女は自らのバックの中から、何かを取り出す。




「ふーん、じゃあ、このノートをクラスに貼っておいてもいいってことね。」


藤原の手には、見覚えのあるノート…


「そ、それ、なんで私のノート持ってんの!?」


所謂黒歴史ノート。内容は伏せるけど、人に見せられるものじゃない。


「もちろん中身を確認したわよ。こんなモノを書いているなんて、いいセンスをしているわ。だけど、このセンスがわかるのは私くらいじゃないかしら?みんなに見せて、確認してみる?」


この女、変態ドマゾみたいなことを言ってくる割に、えげつないサディスティックな行為をしてくる。


「わ、わかったって…飼うよ。その、藤原さんの…ご…ご主人様になる。」


「やったあ!これから私はあなたのペットだよ。」



端から主従関係が逆転している。

しもべの方に脅されて主従関係を結ぶって、意味がわからないよ。


「なんでもご主人様のいうことを聞くわ。

危なかったりするのはダメ。痛いのは…痛いのは傷が残らない程度ならいいわ。あとえっちなのももちろんアリだから。」


あまりにも変態的すぎる取引に巻き込まれた。

今すぐ私のノートを燃やして私から離れろって言ったらそうするのか?


「あ、ちなみにノートはコピーとってあるし、パソコン取り込んであるから。」


心を読めるのかこの女は。

まあ、エロいことは置いておいて、なんでもいうことを聞くっていうのは少し魅力的な条件だ。そういうことにしよう。なんでも前向きに捉えるのが肝心だ。


こうして私は、同級生の藤原天音を飼うことになった。

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