思いつきで美味しいトコだけ書く

新木稟陽

鎧の下が可愛かったやつ


「エル……」


 魔術師である俺を庇ったエル。お陰で敵を倒すことはできたし、エル自身も大きなダメージを追ってはいない。

 だが。


「……み、るな」


 頑なに外さなかったバイザー。それがパッカリと割れてしまっていた。

 エルは居心地悪そうに後ろを向く。

 彼女の顔には、対角線上に大きく横断する傷があった。きっと、それを気にしているのだろう。

 それにしても。


「結構かわいい顔してるな。」

「?」

「もっと厳つい顔かと思ってたよ」

「……そうか」

「あっ」


 厳つい顔、というイメージが気に食わなかったのか、彼女はズカズカとダンジョンを進んでいってしまった。


「クリス、結構気効くじゃん」

「なー」

「痛って」


 回復職のアリアと戦士のダインが両サイドから肩パンしてくる。ダインはマジでやめてほしい。本当に痛いので。





「クリス」

「なに?」


 最近。エルは度々、こうしてやってくる。元々寡黙で必要最低限しか声を出さないヤツだったから、大きな進歩だ。なんだけど。


「どうだ?」

「どうって……何が?」

「…………」


 これだけ言って、帰ってしまう。

 意味がわからない。


「なぁアリア」

「なに朴念仁」

「あれなに?」

「さぁ、なんだろうね」


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思いつきで美味しいトコだけ書く 新木稟陽 @Jupppon

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