第186話 親離れ

神樹国の問題が終わった頃に頻繁にアンバス辺境伯の3男、レイレルがキルドに良く顔を出すようになった。

だいぶ血色も良くなり、元気な顔をしていた。


「おはようございます」元気にレイレルが受付に顔を出す。このところ3日と開けずにギルドに来る。


「レイレル様、おはようございます。今日は何をされますか?」


「はい、ハイ・オークの所に行きたいと思います。何か見合った依頼はありますか?」


「そうですね」

受付の子が悩んでいる間に、俺が変わった依頼を渡す。オーク階層にたまに出現する。レアモンスターの捕獲だ。


ハイ・オークの中で特に美味と言われるオーク。額に3つの黒い印がついてるオーク。


このオークの討伐だ。


「アール様。お久しぶりです。

やっとまともに動けるようになりました」


「レイレル、よかったな。良ければこの依頼を頭に入れておいてくれ。期日は無い。取れたらラッキーっていうだけだ」


「ちょっと、アール様! 勝手に私の担当をとら無いで下さい」

受付の子に睨まれた。


「はは、ごめん。悪気はなかったよ」


「それより、ミカとルミが今日出発します。顔を見てきたらどうですか?」


「わかった。そうするよ」


受付から闘技場に来るとミノタウロス2体と走竜が2台の荷台を押して荷物をのせていた。


「ミカ、ルミ。何処まで往くんだ?」


「アール様」「私達は鉱山に帰ります。鉱山で働く人の食糧を沢山持って行かないといけないので」


「そうか。ミノ、ルッツ、ライ。また元気で会おうな」

「「モボー」」「ギャー」


「アール様位です。私達以外でこの子達の名前を呼んで相手をしてくれる人は」


そう言ってギルドを後にする。見送りには元Aランク冒険者の受付、カミュも一緒に見送る。


「なあ、アール。モンスターの見分けってどうするんだ?」


「なんだ、元冒険者のカミュ様でも判別付かないか。

ミノタウロスのミノは角が半分かけてる奴、ルッツは腕の太いミノタウロス。ライは鳥みたいなモンスター、走竜だ」


「いやいや、ミノタウロスの細かい見分けが出来るってアール位だぞ。


は? もしかしてそっち系の趣味が!!」


「カミュ、いい加減にしてくれ。これでも子供の親だ。親にそんな噂があったら嫌だろう。勘弁してくれよ」


「はぁーい」カミュのやる気の無い返事を聞きながらギルドに戻る。食堂でくつろいでいるとガリアがギルド回りを終えてやって来た。

「アール、腹へった。私にほどこしを」


「ガリア、十分な給料は出してるはずだか」


「うー。アールのケチ。こんな可憐な乙女が泣いてるのに慰めてもくれない」


「おー、お前を慰めると何処までも付け上がるからな。

おばちゃん。ガリアになんか食わせてやってくれ。俺のおごりだ。好き嫌いは許さないから、何でもいいぞ」


「あいよ。今日は激辛料理が余ってるからエールと一緒に出そうか?」


「おばちゃん、俺のもあわせてお願い」


「ま、待って、激辛は勘弁してぇ…」


辛い料理が苦手なガリアの悲痛な叫びを無視して食べ物をお願いする。


調理担当のおばちゃんが両手に料理を持ってやってきた。

「あいよ、ガリア。あんた少し太って無いか? 辛い物は体の調性をしてくれるんだよ。嫁入り前の体だし

少しはいたわりなさい」


「は~い」ガリアの熊耳がペタンと垂れている。

でも出された物は、たいして辛く無いように調性してくれたみたいだ。


「辛い~! でもって私でも食べれる。これ何のお肉?」


「それはワイルドボア、ホーンラビット、ライ魚ですよ」

ガリアの顔が固まる。全部ガリアの苦手な食べ物だ。

「かっら!! おばちゃん、俺の辛すぎない?」


「ああ、ガリアにいれる分全部たしちゃった。辛すぎた?」

おばちゃんが俺の顔を見て苦笑いしていた。


「ガリア、ダンディーから手紙届いていたぞ。受付で預かってる」

仕方なく超激辛料理を食べながらガリアと話す。


なぜかガリアは浮かない顔をする。

「そう浮かない顔をするな、ダンディーは問題が無くなったから断って来ただけだ。だからと言ってダンディーとの関係が壊れるわけじゃない」


「わかってるけど、急に仕送りいらないって言われると。必要無いって言われているみたいでさ。何かさみしい気がしてさ」


「何時までも親元にいるわけじゃない。巣立ちの時期なんだろう」


「巣立ちか。私はまだ、ここにいたい」


「好きなだけここには居ても良いぞ。俺達はガリアを必要としている。

それと来月ルックスと旅行に行くんだろう。休みをちゃんと申請しとけよ。前回見たいに急にいわれても出さないからな」


「オニ- 悪魔 訴えてやる」その後本当にマリアンノに愚痴をこぼし慰められていた。


その後、レイレルから手紙を渡される。俺に直接渡すようにと父アンバスから言付かったらしい。

手紙を見ると暗文(暗号文)によって書かれていた。これは軍やロイヤルナイトが良く使う暗文だ。


簡単に内容を見ると俺の母親を名乗る女性を保護、エルフの屋敷にて預かっていると書かれていた。


「メルシー、ちょっと時間が欲しい」

メルシーの執務室に入ると文官3人と執務にあたっていた。

「どうなさいました。顔色が悪いですが」

心配したメルシーが近づいて来た。


メルシーにアンバスからの手紙を見せる。


メルシーが驚いた顔をしていた。

「行かれますか?」


「ああ、確認しないとね。今までのいたずらとは、あきらかに違うしね」

過去にも俺の両親を名乗る者がいなかったわけではない。だか、誰も本物はいなかった。


当然だ。冒険者学校をたった一年で卒業した2人た。その時点で今の俺より強かったらしい。そんな奴が剣が扱えず、魔法を使えないわけがない。


「では、気をつけて行ってらっしゃい」

メルシーが静かに頭を下げる。


メルシーの部屋を出てマリアンノに声をかける。マリアンノも何か覚悟したような顔をしていた。


誰にも気付かれずにギルドを出る。隠匿魔法をかけ、路地裏を通りエルフの屋敷まで来る。

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