第2話 2 初めてのバイトって緊張しない?

「ハイハイ、唇青くなるからプールから出てね。」


「「「「はーい。」」」


「おにーさん!おはなしして!」


 小学生にモテモテな俺です。

 子どもに欲情するほど飢えてないのです。

 そういった性癖を持っていないのです。

 時代的性癖を持っていないのです。


「はいはい、いったん水分補給してからね。」


 初日に来た子たちはラッキーと言わんばかりに俺に群がり始めた。

 先生からも言われたが大学生の男性がこの手のバイトをすること自体珍しいのだという。

 あまり稼げる仕事ではないし、それこそボーイズバーやボーイズカフェなるモノと言ったところで稼ぐのが良いらしい。

 他にもお金を稼げるバイトはいっぱいあるからねえ。


「ねえねえこのバグモン知ってる?」


「知ってるよー。」


「うんいい子だねー。」


 子どもの性の自認に関しては進んでいる。

 ってか外国レベル。

 スポーツって言ってる協会がある国レベル。

 つまり早い。

 そんだけ。

 本能を落とし込めるには早いうちからの性教育ってことだね。


 んで、プールの子どもたちは良いんだけど。

 そのねえ。

 親御さんたちがフェンスから食い入るように俺を見ているのはいただけない。

 後俺の母親&姉ズ。

 結局のところ男の需要が多くなるのが男女比逆転世界なのか知らないけど、現状としては施行された法律的な観点から話せば、確かに需要に対して供給は少ない。

 男性の意見を尊重した結果のコミュニティとして成り立っているんだろうけれども、日本の女性の社会進出計画と似たような形になっている。

 ユートピア25実験(マウスを用いた何不自由ない楽園での社会性実験のことでマウスの場合、(種によるが主に)性比は男女比4:6となっており、男女比が人間とよりやや女性よりの数値となっている。

 人間の男女比は105:100)の実験経過の内容の一つとして、頼りがいの無い雄もしくはDVを起こす雄しか居なくなると雌同士が集まり団体を組むという社会性が視られた。

 男女比は違えど、前世日本でもユートピア25実験のマウスたちと同じことが見受けられる。

 バブル時代に確立されたお金持ちで自分を守ってくれる男性というのが崩れ、女性を優位にするように仕向けるための団体やサービスが多くなった。

 それに伴い男性を蹴落とす傾向にある。(財布のひもを握るなどの家計簿の移行が最もな例、かつては男性が財布のひもを握っていたがバブル崩壊とともに女性が握るようになりATMと呼ばれるような男性が増えて行ったのは事実。)

 そしてもう一つユートピア25実験ではパートナーを手に入れられなかった雄に対してある傾向がみられた。

 雄の独身生活の不衛生な生活を送るという内容である。


 つまりは、男性の独身化は技術の発展が伴うにつれて必然的に起る課題の一つに過ぎず、男女逆転世界で必然的に求めているコミュニティの男女比が女性の割合が過剰に多すぎることは非常に珍しい。

 ただし、ユートピア25実験と違うところがあるとするのならば、種の保存のための法則を網羅した法律が施行されているということ。

 極端な男女比が壊れている世界で無ければ成り立つ社会構成をすることは驚愕すべき点だろう。

 男性はあくまでもボランティア、もしくはルーティン的に作業を行う種族保存行動とすることで争いをそこまで起こさないルールを生み出している。

 その代償に女性の性への目覚めを早めさせる必要があったのかはわからない。


 現状、奥様方が血走った目で俺を見てくることから、絶賛男性は引きこもりになるのがほとんどのなのか。

 俺もひきこもりだったし、社会の表に出ることは極めて珍しいことは事実。

 スポーツ選手として活躍する人たちも居るが如何せん活気が前世の頃と比べると弱い。

 一応小学生の中にも男子は居る筈なのだが、一人が好みの様で女子児童が話しかけようとしているのに無視したりぼーっとゆらゆらと揺れていることが多かった。


 男性としての闘争本能が薄れているのかもしれない。

 男性ホルモンはいわゆる闘争ホルモン、無いし競争社会性ホルモンとも呼ばれ、競い合う意欲を高める効果がある。

 競い合う効果を高め合い、競い合わせることで、女性はより優秀な遺伝子を選別した上で子を成すための種族での蟲毒が行われていたのだが、男女比が狂った世界ではそれに伴った種族本能が備わっているらしい。


「こっち見て―。

 娘の嫁にー。」


 流石に性欲というよりも娘の将来性という意味合いでアピールしていると言ったところか。

 この世界の今の時代は結婚が幸せという認識は無いが、結婚しておいた方が良い税金の都合上有利になる法律や市民支援制度などが充実している。

 それでも男性が独身を好むため、書類上だけ通すパターンもあるらしい。

 夫婦内別居ってやつ。


「アルバイトがんばって!」


 姉ズ、普通にバイト先に親戚来るの恥ずかしいんですけれども、やめてくれません。


 ってか絶対来るなって言ったよね。

 せめてオカン(俺の生みの親)だけ黙ってみる分には良いけどって言ったよね。

 とオカンを見ていると、舌を出してごめんと言っていた。

 ふざけんな!


 普通に考えてよ、親がバイト先に来るってどういう状況よ。

 モンスターペアレントですよ。

 それ以外に在り得なくない?

 モンスターペアレント以外だったら子どもがマザコンで親が親バカで何でもしてくれるってこと?


 俺はんなことは死んでも嫌だがね。

 男は貴重だから一人はしょうがないと思うけど、オカンはしごとがあるじゃろうがい。

 今日は確か普通に出勤日だったよね。


 姉ズは年齢の近い人たちだと、俺の1つ上とかかなり近い。

 大学には通っているらしいのだけども、俺にかまちょが多い。

 俺よりいい男はいくらでもいると思うんだけどねえ。

 貞操観念逆転世界でも遺伝子の基礎本能はそこまで廃れていない。

 俗にいう近親交配における抗体の劣化を防ぐための本能という奴だ。


 これらに関しては、最低限備わっているため、親戚間での交配行為は推奨していないし、俗にいうパパのパンツとは洗うの別にして問題ももちろん起きている。

 人間には気付かない程度ではあるが、他の人間の匂い、オスの臭いが移ると嫌がるメスという構図ができる動物はそこそこいる。

 若干だが人間にも残っているためだ。


 しかし、何故か姉ズには俺の匂いはとてもいい匂いとして捉えられるらしい。

 できることなら共有財産として飼育したいとまで言われたこともあったので、アルバイトには猛反対していたのだが。

 結局心配で来るとは。

 誰よりも最前線でバイト参観される気分は嫌だな。


「はい、10分たったからまた入っていいよう。」


「「「はーい!」」」


 元気の良い子どもたちだ。

 大学生でもインドア派、意外と肉体労働の多い監視員は何かと身体にこたえる。

 こりゃあ明日は筋肉痛かな。


 小学生たちはパワフルだなあ。

 でも、危険な遊びをしている子どもがいないか注意するのも俺の仕事。

 命を預かる仕事でもあるから、注意はしないとね。

 子どもたちのかまちょアピールを交わしつつ、他の子に気配りするのは車の運転によく似ている。

 全方向にある程度の注意を持ちつつ、前方を注視する。

 まだ、車の操作をしていないだけで楽な方だけど、バス運転手とか大変なんだろうね。


「あんちゃん!」


 全身を覆うボディ水着を着用した男の子が何やら、思いつめた表情をした後こちらに話しかけてきた。

 人見知りなのかな。

 顔色を伺うそぶりがそこそこある。

 人の目をきちんと見て話そうとしているけれども、やや怯えているようにも捉えられる目は俺のような人見知りの反応と合致する。


「なにかな?」


 こういう子にはまず同じ目線に立つことが大事なので、監視員と梯子からおり目線を合わせる。


「あんちゃんは将来に何になりたいの?

 先生?」


 あー、珍しいバイトをしているものだから何かしら壮大な夢があるのかと勘違いしたのかな。

 ベタな奴だと教師とか後任を育てる立場かな。


「先生か。

 僕の夢は無いよ。

 クラゲのようにのらりくらりと生きていきたいねえ。

 でも、かけらの野心が残っていたとすれば世界一周してみたいかなあ。

 そして漫画家になりたい。

 君は?」


「俺は、先生になりたい。

 体育の先生に見たいになりたい。

 もっと大きくて強くなりたい。

 どうすればなれるか知ってる。

 あんちゃん弱弱しいけど、なんか知ってそうだったから聞いてる。」


「その先生がどういう人かはなんとなく想像は付くけど、その問いに関する答えは僕は持ち合わせていない。

 というのも人間の科学では人間という生命体は個体差が大きすぎる。

 先生のように成るための君へのヒントはプールの水を他のプールにバケツで入れ替え続けるのと同じくらい大変な工程が必要になるんだ。

 その工程に対する現在判明している中で有力なモノ、正解かもしれないし不正解かもしれないモノを君が学んで納得できるかな?

 もし、人のせいにしたければ僕にその答えを聞けばいい。

 自分でどうしても諦めきれないモノがあると言うのなら、調べる方法を教えてあげる。」


 クサイセリフ吐いたなあ。

 後で自己嫌悪に陥りそう。



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メイン小説

換金スキルとショップスキルでバグ技現代無双〜無限に増える1円玉でスキルを買いまくる~


酔っぱらってダンジョン行ってたらお姉さん持ち帰りしてて朝チュンしてた件~スキル乳化の美肌ボディエステは女性冒険者を虜にする~


こちら二つもよろしければ拝読ください。


次回

3 いつの時代も子どもの悩みを聞くのって教育をする人だと思う。正解のない答えって難しいね。


スライム道

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