◇間奏1
アレクシア王国の剣士を束ねる最大の組織「ブレイヴ・ピラー」、その本部の地下にある一室にスガワラは足を運んでいた。
「お忙しいところありがとうございます、リンカさん」
地下への階段を、2人の剣士が魔鉱石のランプをかざしながら下っていく。その後ろをスガワラとどこか気怠そうな雰囲気をした女性が並んで歩いている。
彼女の名は、リンカ・ティンバーレイク。ブレイヴ・ピラーの9番隊、救護専門部隊の隊長を務める女性だ。垂れ目の顔は常にどこか眠そうな気配を漂わせている。長く美しい金髪をバンダナでまとめて上げていた。
前を行く剣士をはじめ、組織のほとんどの人間が軍服のような制服を着ているのとは対照的に、彼女は薄手の白いブラウスに同じく白のパンツスタイル、救護隊らしく「白衣」をまとっているのだ。
「カレンもサージェくんも出払ってましてねー。けど、マスターの許可があるんでしたら遠慮なく声かけてくださいな? お仕事サボる口実にもなるんで来客は大歓迎ですよ?」
リンカは白衣の上のボタンを大胆にも3つ外している。大きな胸が今にも露出しそうでスガワラは、話しながらも目のやり場に困っていた。
彼がここを訪れたのは、「ある男」と話をするため。懇意にしているブレイヴ・ピラー所属の剣士カレンを通じて、組織のギルドマスターであるシャネイラにその許可をもらっていた。
自然の光が一切入らない地下の道を、前を行く剣士に先導されながら進む。空気はどこか冷たく湿っており、話し声は出口を求めるように上へと響いていった。
石壁にはめ込まれた鉄扉の前で彼らは立ち止まった。
「危険を感じたり流血したらすぐ声を上げてくださいね? あと会話の内容は一応記録とるのが規則なので許してください」
スガワラは「流血」の言葉を聞いて苦笑いをしてみせた。リンカは他人の血を欲しがる異常な好みをもっているのだ。
彼はリンカの話に頷いた後、先導の剣士が開いた扉をくぐり、部屋の中へと入っていく。背中から、大きく無機質な鉄扉の閉まる音が響いた。
魔鉱石の灯りだけの薄暗い部屋、中央には鉄格子がはめてあり、スガワラの会いに来た人物はその向こう側にいた。彼の姿を確認したスガワラは、軽く息を吸った後に声をかけた。
「久しぶり――、と言うほどでもないか、ブリジット?」
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