復讐の舞台・闇に蠢く陰謀と血の絆、婚約者の王太子から長年理不尽に扱われついに婚約破棄された公爵令嬢は、剣の天才だった。

克全

第1話:血と誇りの舞踏

 舞踏会場は、王城内の一角にひっそりと佇んでいまます。

 重厚な大理石の柱が天井までそびえ、壮麗なシャンデリアが優雅な光を放ちます。


 その光は、舞台に立つカップルたちの華麗なダンスを照らし出し、まるで星々が舞うように美しい輝きを放ちます。


 床は一面に敷き詰められた美しいタイルが、足元で舞踏者たちのステップの響きをやさしく包み込みます。


 その上を軽やかに滑るドレス姿の女性たちの足音が、まるで優雅なメロディーのように響いています。


 男性たちは、一挙手一投足に心地よいリズムを奏でながら、パートナーとともに舞台の中心で調和のとれたダンスを奏でます。


 舞踏会場は、愛と情熱が溢れる場所です。

 人々の間には、視線と微笑みを交わし、瞬間的な触れ合いがあります。

 その瞬間に恋が芽生え、心の中で愛が育まれていくかもしれません。


 壁一面には、美しい絵画や彫刻が飾られています。

 愛の神々や官能的な風景が描かれた作品たちは、まるで愛の魔法がかけられたような魅力を放っています。


 舞踏会場にいる人々は、その美しい作品たちに囲まれながら、愛に満ちた時間を共有しているのです。


 一方で、舞踏会場には切なさや秘密も漂います。

 暗闇の一角で密かな出会いや禁断の愛が生まれるかもしれません。


 たとえば、王子と身分の違う女性の間で交わされる恋の誓いや、身分を偽った男性が恋人を魅了するなど、ドラマチックな展開が繰り広げられるのです。


 舞踏会場は、一瞬一瞬が永遠のように感じられる場所です。

 愛と幸せが満ち溢れ、夢のようなひとときが過ぎていきます。


 しかし、時が過ぎれば舞踏会は終わりを迎え、人々はそれぞれの現実へと戻っていくのです。


 しかし、舞踏会で交わされた愛の約束や思い出は、永遠に心に刻まれ、人々を幸福へと導くのでしょう。


 王城の舞踏会場は、愛と情熱、切なさと秘密が交錯する場所。

 人々の心が一つのリズムで響き合い、運命の糸が絡まり合う場所でもあります。


 そんな舞踏会場で、私は常に独り壁の花です。

 婚約者が舞踏会場にいるにもかかわらず、独り壁のシミです。

 今日の舞踏会も屈辱の時間が続きます。


 公爵家の令嬢として、王太子の婚約者として、これほど理不尽な扱いを受ける謂れなど一切のないというのに。


「みなよく聞くがいい。

 貴族が貴族たりえるのは、高貴な血を引き継いでいるからだ。

 卑しい血が流れた者に、貴族を名乗る資格などないのだ」


 好き勝手言っている王太子は、お気に入りの令嬢を側に侍らせています。

 本来なら、そこは私がいるべき場所です。


 ですが王太子は心底私を忌み嫌っています。

 私が王太子より強いから、私の母が卑しい身分だから。


「確かに貴族であろうと、剣はたしなまなければならない。

 だがそれはあくまで貴族としての剣だ。

 貴族の剣は優美でなければならない。

 強くなるためだと、粗野になってはならないのだ」


 確かに私は、嫋やかな貴族家令嬢とは一線を画しています。

 全身が鍛えられた筋肉に覆われ、動きは騎士のようにキビキビしています。


 いえ、私は騎士だったのです。

 王女様を御守りする、選び抜かれた姫騎士だったのです。


 普通なら王女様を御守りするのは侍女です。

 侍女では頼りないと考えられる時は、戦闘訓練を積んだ戦闘侍女が配されます。

 ですが、戦闘侍女では高貴な集まりまでついて行くことができません。


 王宮に貴族を招く時は大丈夫なのですが、有力貴族に招待された時に、ついて行けない場合があるのです。


 特に問題なのが、他国の王家に嫁がれた場合です。

 当然王女様御一人で嫁がれるわけではありません。


 選び抜かれた侍女や騎士が、嫁ぎ先の情報を母国に送るべく配されます。

 ハッキリ言えばスパイです。


 同時にいかなる場所にもついて行ける女性騎士が、守護役として選ばれます。

 私がそうだったのです。


「片親から高貴な血を受け継いでいようとも、もう一方の親から卑しい血を受けついていては、貴族とはいえないのだ。

 みなもそうであろう。

 父母がそろって高貴な生まれだから、跡継ぎとして遇されているのだ。

 卑しい血の混じった庶子は、家を継ぐことはあるまい」


 王太子は私を揶揄しているのです。

 私は名門公爵家の長女ではありますが、母親は正室ではありません。

 正室どころか、母は旅芸人だったのです。


 類稀なる美貌と妖艶な踊りで、大陸中に名を轟かせた踊り子でした。

 そんな母が、ログレス公爵領で踊りを披露した時に父上に見初められ、無理矢理手籠めにされた時に出来たのが私です。


「もっとも高貴なる血が流れる王家の後継者たる余には、同じく高貴な血を受け継ぐ令嬢こそが婚約者に相応しいのだ。

 だから余はここに宣言する。

 母親から踊り子という卑しい血を受け継いだレティシアとの婚約は破棄する!」

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