第40話 白虎様の加護

大陸の南にあるホワイトマウンテンという山には神獣の白虎が住んでいるという噂を聞いたレイ達は、神獣の加護を得る為、ホワイトマウンテンへと向かっていた。


雪で覆われたその山は、レイが前世でしていたゲームでも存在はしていたが、実装されておらず行った事がなかった。リアルになってもその山は誰も近づかない山として君臨していた。


そんな場所に向かい、レイ達はホワイトマウンテンの中で無事に白虎を見つける事に成功していた。


「あれが・・・白虎様・・・」


「よく来た。人の子よ。お主達の事は青龍より聞いておる。」


「俺はレイといいます。こっちはマリーで、後は聖獣のエンキです。青龍様が俺達の事を言ってたんですか?」


「ああ。青龍が人の子に加護を授けたと言っておったからな。聖獣を従えている者だというのも聞いておる。我の所にきたのも我の加護を欲しての事だろう?」


「はい。」


『一つ、我の問いに答えよ。我の加護を得て何をする?見た所お主はすでにかなり強いであろう。それに聖獣を従えておるなら我の加護なんぞなくても問題なかろう。』


『ん?これは?』


『ああ、今はお主の心に直接話しかけておる。そこの娘には聞こえぬから安心せえ。前世の記憶を持つ人の子よ。』


俺の事を知っているのか、前世の事を言ってきた白虎様に少し警戒するも、問われた事に対して更に質問を重ねた。


『白虎様は俺の事をどこまで知ってるんですか?』


『我は神の代行者だ。お主がこの世界に転生してきた時から知っておる。もちろんお主の中にいる魔王の事もだ。』


『そうなんですね。そうですね。白虎様の加護を求めているのは、俺が単純にもっと強くなりたいからです。俺のが転生してきた時から知っているのであれば俺が転生した時に、勇者達から殺されかけてた事も知ってるかと思います。俺はこの世界の事は前世のゲームで知っていますが、俺の知っているゲームではあの時、レイドールが死んで終わるバッドエンドだったんです。だけどどうせならハッピーエンドを迎えたい。あの勇者ではこの世界を平和にできない。なら勇者よりも圧倒的に強くなるしかないでしょう。』


『聖獣を従えれば勇者よりも強くなるだろう。現に殺される前のお主は勇者よりも強かったはずだ。』


『そうですね。ですが、それでも俺は殺されかけました。もっと・・・もっと強くなる必要があります。そしてそれは一緒にいるマリーも一緒です。俺は目に映る人を守りたい。その為には力が。人々を守る為に力が欲しいんです。』


『守る為の力か・・・お主なら力を得ても勇者のようにはならない・・・か。わかった。お主達に我の加護を授けよう。だが、我はお主を今後もみておる。力に溺れたり、我に言った言葉を反故にするようならば我が直接お主を殺す事にする。』


『ありがとうございます白虎様。見ていてください。俺は白虎様から頂いた力を人々を守る為に使います。』


人々を守る為か・・・。今の世界は皆がボルテックスを魔王を倒した勇者だと称えているからある意味平和だ。だけどそれはまちがいだ。このままボルテックス達を許せば、今後どうなるかわからない。過ちを犯した者には罰を。俺がボルテックス達を制裁しないと偽りの平和だよな。ざまぁ発動って感じか。他の魔王達も今後こっちを攻めてくる可能性もあるし、もっともっと強くならないとな。


「レイ?」


「あ、ああ。白虎様と念話で話してたんだ。白虎様は俺達に加護を与えてくれるみたいだ。」


「本当!?やったわね。神獣様、ありがとうございます。」


「ああ。これで俺もマリーも強くなる。ミストの懸念も払拭できただろう。」


神獣様の加護はたしか、能力の1割アップとレベル上限を25増やすだったよな。これで2体目の神獣様の加護だ。後の2体も今後の事を考えると加護をもらいたい。ダメ元で白虎様に他の神獣様の場所を聞いてみるか。あ、あと他の聖獣の場所も聞いてみよう。聞くのはタダだからな。


「白虎様。他の神獣様、朱雀様と玄武様はどこにいるのでしょうか?できれば他の神獣様からも加護をもらいたいんです。」


「レイよ。たしかに我は他の神獣の居場所を知っておる。だが、それを教える事はできん。それは青龍にも言われたであろう?」


「それは・・・」


『レイよ。お主が前世の記憶を持っていてもこの世界にはお主の知らぬ事がまだまだ多くある。自分の目で見て様々な事を知るのだ。それがお主の為でもある。』


『俺の為・・・わかりました。』


バッドエンドで終わりのはずの世界にきてしまった俺の今後するべきことは、ボルテックスよりも先に魔王を倒す事。残り3体の魔王を倒す為にも今の強さでは無理だから神獣様の加護と聖獣の力を借りる必要がある。あっ、マリーとは良い感じだけどミュラ王女とももっと仲を深めたい。もちろん聖獣達とも楽しく過ごしたい。王様になるのはちょっといやだからその辺は自由にやっていきたいって感じか。


『うむ。まあ好きに生きよ。この世界はゲームではなく現実だ。リセットはできぬぞ。』


『わかっています。前世で俺はパッとしませんでした。ここでもまだ俺の存在は、勇者によって死んだままです。ですが俺はこの世界に来れてよかったと思ってます。自分の目でこの世界を色々見てみようと思います。』


『ここにはいつでもきても良い。と言っても我がいる以外何もない山だけどな。』


無事に神獣白虎の加護を手に入れたレイ達は、二人目の魔王アルフェン討伐に向けて行動を開始するのだった。


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