第39話 神獣白虎

ホワイトマウンテンは、その名の通り真っ白な山で移動する事も困難だった。ミストから空を飛ぶ魔法を教えてもらったレイは、マリーと共にホワイトマウンテンを空から確認する事にした。地面は雪、空は吹雪の為、空を移動して山を登る事もできなかったので、どこか山の中に入る所はないかと思い、山脈を一周すると、海側から山の中に入れそうな洞窟があった。


洞窟と言っても海から入って行く形になっていたので歩きでは入れない。だが、丁度タイミング良く空を飛ぶ魔法を覚えたので、レイ達はそこから洞窟へと入って行った。


「レイよ。気を付けろよ。ここはもう洞窟の中じゃ。転移の魔法は使えんぞ。帰還魔法は使えるが、帰還先は海の上じゃ。」


「ああわかってるよ。暗いし光の魔法で周囲を照らしてゆっくり進むよ。」


それにしても真っ暗だな。普通こういうダンジョンみたいな所って移動しやすいように光ってるんじゃないのか?ゲームなら当然のように明かりがあるけど、ここは何もない。光魔法を使ってなければ何も見えない暗闇だ。まあゲームではここは実装されてなかったからなのかもしれないが。キュービダンジョンは壁が特殊なのか普通に周囲が見えたもんな。


それにしても全然、上に登ってる気がしないけど大丈夫なのか?ずっと下は海だぞ・・・まさか!!どこかに道があったか?いやそれほど早いスピードで進んでる訳じゃないし見逃したりはしていないはずだ。山の中にドンドン入って行ってる感じだ。たしかにミストの言う通りだな。いきなり攻撃を仕掛けられたりしたら危ないな。マリーにも伝えておくか。


「マリー。光の魔法で周囲は照らしてるが何があるかわからない。警戒しててくれ。山の中を移動してるはずなのに一向に海面が見えたままだ。どこかで道が分かれてたりするのかもしれない。周囲は注意深く見ててくれ。」



「わかったわ。たしかにレイの言う通りね。山を登るなら海面じゃなくて地面が見えてもおかしくないわね。」


まあ向こう側には山の中に入る入口がなかったから、進んで行けば行き止まりにぶち当たるか上に上がる道に続くかだと思うけど・・・それにしても魔物も一体も出ないな。どうなってんだこの山は?本当にこの山に白虎がいるのか?まあ普通に考えてこんな雪山に魔物が生きてる訳ないか。どう考えてもここじゃ動く事さえできなそうだもんな。


「レイ!ようやく地面が見えたわ。」


「おっ本当だ。これでようやく歩く事ができるな。」


けっこう中に入ったよな。まあ道はまだ続いてるから白虎がいるとしたら奧か・・・。帰還魔法で脱出する事はできるから勝てない魔物が現れても大丈夫だとは思うけど・・・あまり強すぎる魔法を使って山に刺激を与えない様にはしないとな。洞窟が崩れたらさすがにヤバい。俺がとっさに帰還魔法を使ってもマリーは残されちゃうもんな。ああ、それに山の上で雪崩が起きても大変だよな。あれだけの雪だ。かなりの被害が出そうだ。その点も気を付けないといけないな。


空を飛んで移動していた俺達は、海から陸に変わったタイミングで空を飛ぶのをやめて、まだまだ続くであろう奥へと進んで行った。相変わらず光がなかったから、光魔法を使って明かりを確保し、前に後ろに左右を警戒しながら進んでいくが魔物は一体も現れない。途中、坂みたいになってる所はあったから、山の上には近づいているとは思うが、それほど急な坂ではないので、これで頂上までたどり着くのにどれ程歩かないといけないのか不安になっていた。


「それにしても長いのぉ。いまだに先が見えぬのじゃがどうなってるのかのぉ。」


「だよな。そういえばミストはこのホワイトマウンテンの事は知ってたのか?」


「いや名前は知っておったがそれぐらいじゃの。神獣の事も知らなかったぞ。」


「そうか・・・」


そうして、道なりに右にカーブして真っすぐ進み、左にカーブして真っすぐ進み、警戒するのがバカみたいに何もなく、分かれ道もないので迷う事もなく、先に続く道をひたすら歩いていく。


すると・・・


「マリー!!あれ。光ってるぞ!」


「本当だわ。何かあるわね。」


あそこが最奥か?普通に考えたらあそこに白虎様がいるって感じだよな?それにしても魔物が一体もいないのにこんな所に本当に神獣様がいるのか?行ってみればわかる事だけど、罠って可能性もない訳じゃないな。


「噂通りならあそこに白虎がいるかもしれない。だけど、罠という可能性もある。警戒しながら進むからマリーとエンキは俺の後に続いてくれ。」


「わかったわ。」


「わかったのだ。」


俺の目の前にあった光は、始めは小さな光だったが歩いて行けばいくほど、光は強くそして大きくなっていった。そして目の前までくると、先が見えないぐらいの光が広がっていた。


「先が見えないな・・・」


「そうね・・・ここに白虎様がいるのかしら?」


「わからない。今までとは違うんだ。何かあるのは間違いない。一応はなれない様に手を繋いで行こうか。」


「!?ええ。わかったわ。」


マリーが顔を赤くしていた。それを見て、俺も恥ずかしくなって顔を赤くしてしまった。


そして、真っ白く強い光の場所に入ると、今までの寒さがなんだったのか、急に温かく感じ、いつ現れたのか、目の前には真っ白い虎がいた。一目でわかる威圧感、神獣白虎様が目の前にいたのだった。

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