第10話 視線

あれ…誰かに見られている・・?

例えば、お風呂でシャンプーしている時の背後…とか。

すっと振り返っても、もちろん誰もいない。

そんな時は…注意してください。


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じいちゃんが死んだ…

急な一報だった。


成人になってからなかなか会いに行く機会がなく3年ぶりに会ったのが、棺で動かないじいちゃんだった。


「…なかなか会えに行けずごめんね」

目の当たりにした横たわるじいちゃんを見て涙が止まらなかった。


お通夜・告別式、まであっという間に過ぎ、火葬と収骨へ。

火葬場には初めて来た。

異様な空気の火葬場は、恐怖と言うよりは悲壮感などを強く感じる場所。


「おじいちゃん、みんなが来てくれて嬉しかったと思うよ」

そうゆう母に。


「…うん」

と返すものの、会えていなかった後悔が僕の心に残った。



その帰り。

自宅の最寄駅に着く頃には当たりは真っ暗。

夏の夜は蒸し暑く嫌な感じがする。


たったったっ

家族で自宅に向かう中


「んっ…?」

視線を感じた。


すっ…

振り返るも誰もいない。


「あれ…?」

気のせいか。



てくてくてく


再び歩くも。

「…あ・れ、見られている??」

すっ…

「えっ気のせいかな。。?」


「あっ、ねえねえ、なんか誰かに付けられている気がするのは僕だけ」

少し前を歩いていた母に聞いた。


「はぁ?」

すっ

「誰もいないじゃない。今日初めてのことがたくさんあったから疲れているんだよ。早く帰ろう」

やはり僕の勘違い…か?


いやでも、、確かに感じたんだけどな。

そう母に返されまた振り返るも誰もいない。


「…」

気になりながらも歩く。


てくてくてく

が、やはり感じるなぁ。。


すっ…

もちろん誰もいない。




自宅まであと5分ほど。

と。

「あーごめん、先にトイレ行かして!!!」


「あっ」

母の一言を聞かず鍵を手に僕は走った。

今日は緊張などもあり、トイレする意識が全くなくなっていた。

しかし、自宅のいつもの道を見て緊張がほぐれたのかトレイしたくなり駆け出した。


ガチャ


真っ暗な自宅。

電気も付けずにトイレへ。


「ふぅ…間に合った」

スッリキした僕はリビングの電気をつけみんなが帰ってくるのを待つ。

ぴっ

テレビをつけバラエティ番組を見ても今日はなにも感じない。


ピロンっ

LINEが鳴った。

確認すると母から。


「夜ご飯は作らないから、近所のスーパーに寄って帰るから少し待ってて」

との連絡。


「わかったー」

と返す。が今日はあまり食欲もない。


「じいちゃんにもっと会えばよかったな」

誰もいないリビングで無意識に口に出た。


「。。。ん?」

思い出したかのように帰り道で感じたものが…。


すっ

まわりを見渡すもいつものリビング。

人なんかいない。


「あ〜れ…疲れているんかな。。」



「…いや、めっちゃ見られてる。。」

というか、視線ではなく人の気配を強く感じる。


すっすっ

再度見渡すも人はもちろんいない。


「…なんか、や・やばいかも」

理由はわからないがそう思った。


けど、身体が動かない。


さらに人の気配が強くなった。

冷や汗がとまらない。

冷たい汗があごから落ちた。


ぽたっ


とその時。


ガチャ

玄関が開いた。



「おまたせ〜」

母の声だ。



「あんた、早くこっちきなさい!!!」

怒りにも感じる声色で母が呼ぶ。


その瞬間身体が動いた。

すっと玄関のほうに目をやると、母がいる。


「えっあっ、うん」


たったったっ


玄関まで着くと外まで引っ張り出された。


「えっなに??」

わけがわからない僕に対し母が。


ぱっぱっぱっ

と何かを僕にかけている。


「…これは?」


「いいから、立ってて」

そうゆう母がさらに


ぱっぱっぱっ


「これはね、清めの塩」


「なにそれ?」

聞き返すと。


「お葬式とかに行くと必ず家に入る前にしないといけないって言われているものなの」

「お葬式場はそうゆう場所だから穢れ《けがれ》が体に移って連れてきちゃうこともあるから必ず渡されるの」

「でも、お前先に帰っちゃったし、まだしてなかったでしょ。だからやったのよ」


そうゆう事をするのを知らなかった。


「あっそっか。ありがとう」


「これでもう大丈夫」


「うん」



みんな自宅に着きスーパーで買ってきたお惣菜をいただく。


ふと、先ほどの母の声色を思い出した。


「さっきなんであんな強く怒りながら言ってたの?」

「確かにそうゆうの知らずに家に入ってしまってごめんなさいだけど…」

そう話すと。


「…」

「あんたさ、家に1人で居てなにか感じなかった?」

重い口を開くように聞いてきた。


「えっ…」

身に覚えがあった僕は少し怖くなりながらも。

「…」

「実は感じた。でもあたり見たけど誰もいなくて」

「だから疲れてるのかなって思ったんだけど…」

そう返す。


「…たぶん、火葬場でなにか嫌なもの連れてきたんだと思うの」


「えっ??」


「帰り道でも言ってた視線のこともね」


「???どうゆうこと」


「私が玄関開けたでしょ」

「キッチンを通してリビングにあるあんたが見えたんだけど」

「その時ね…」


「あんたの真上から真っ黒な人の手が伸びてたんだよ」


「…え、、、」


「だから大きな声を出してあんたを呼んだの」


それからその視線は感じていない。

だけど、あの時感じたのは確かだった。


多分あの時の視線の原因は、周りではなく上からなにかに見られていたのかもしれない。


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