先読み

うさぎ赤瞳

第1話 縁

    プロローグ


 いにしえ席巻せっけんしたたたりが、現在げんざいよみがえった。ときは今、おのれ不甲斐ふがいなさに、なさけなくなっていた。


 人々ひとびとこころむしば諸悪しょあく根元こんぽんわかっていても、それしの精神せいしんやしなわれていない。はぐくむことをめてしまった顛末てんまつは、まれない現実げんじつちひしがれたのである。それ気付きづいた女神めがみたちが、人間にんげんうつらずに暗躍あんやくしていた。


 神頼かみだのみさえしなくなった所以ゆえんは、科学かがくがもたらす結果けっかが、蔓延まんえんしたからだろう。天災てんさいがもたらす被害ひがい分析ぶんせきできない事実じじつは、科学者かがくしゃたちに依存いぞんしてしまったことにつきる。


 たのみのつな経験けいけん模索もさくできない現状げんじょうは、退化たいかしたというしかなかった。それでも原点回帰げんてんかいきしないだけ、まだまし? なのかも知れない。原点げんてんらない人間たちに、しのの手を視据みすええられたら、かたりよう。そんなやさしさを持つ創世そうせいしゅおくったものが、人の可能性かのうせい視限みかぎった。修正しゅうせいはかる女神たちはまだ、人間の可能性をしんじていた。


 たみねがいである平穏へいおんらしは、源頼朝みなもとのよりともによりうちたてられた。そのかげささえたのは、かくいう神々かみがみである。その神々がらすものがいわくとなり人間にんげんこころ疑問ぎもんける。それさえも気付かない人間たちに、たたりとして、わざわいりかかる。


 人々はかたぎ、生けにえそなえた時代じだいは、きざすすまれていた。現在の時代背景じだいはいけいいろどかげかくれた悪意あくいを、女神めがみたちつぶす。そのために奔走ほんそうしたのが、先見せんけんめいつ女神であった。


 創世そうせい記録きろくはないが、創世そうせいしゅがもたらしたおもいに化学かがく反応はんのうこして誕生たんじょうしたのが神々かみがみであることは間違まちがいない。

 その馴初なれそめはおいおいにかたるとして、頼朝よりともおとうとである義経よしつねたれたことに、神々かみがみ頭領とうりょうである女神めがみ奔走ほんそうしていた。

 

 その名は、卑弥呼ひみこ

 キリストきょう尊師そんしんだ女神である。

 邪馬台国やまたいこくの卑弥呼として、日の本のくにりている。この時はまだ、こころたましいが一体であり、はぐくはなせるものではなかった。独立どくりつさせることで、降臨こうりんできるものに変化へんげさせたかった。蔓延まんえんする悪意あくい退しりぞけるために。


 傘下さんかおよ八百万やおよろず神々かみがみささえられ、時空じくう凌駕りょうがして、修正しゅうせい? 粛正しゅくせい? をはかっていた。そんな時代じだいわることは、先見せんけんめい女神めがみには理解みえていたのだ。

 

 ゼウスという傲慢ごうまんな神が、人間にその意志(悪意)をのこしたことを粛正しゅくせいするために心血しんけつそそいできた。神の残したいわくは、神が是正ぜせいするべきとおもったからである。

 先読さきよみのかみが、日の本の國にのこした逸話いつわ紐解ひもとこう。端詰さしづめ物語はなしは、とき(時間)の不憫ふびんさでもある。

 見えないものをみたいかたおくりたいとおもう心が、やみあらがすべ披露ひろうする。

 運命さだめ忠実ちゅうじつな神々と、未来みらい希望きぼうたくすなんちゃって科学者かがくしゃ魅了みりょうされた者々ひとびと奮闘ふんとうのこした物語ストーリーである。


 

    一


 丑三うしみどき静寂せいじゃくに、雷鳴らいめいとどろいた。

 夏至げしひずみに便乗びんじょうした、神々かみがみ降臨こうりんである。


 女神めがみえらんだこころは、ともか であった。

 おさないながら、感性かんせいはぐくんだ心を、選別せんべつしていた。るぎおもいをはぐく幼女ようじょは、方向性ほうこうせい見失みうしなやすい。純真じゅんしんだからこそ、そのおもいをつたやすいと判断はんだんした。


 次妹つぎまいは、女神めがみ行動こうどう注視ちゅうししていた。におうように際立きわだ不安ふあん見逃みのがさなかった。それで、みわ に宿やどっている。


 おくれをとりたくない三妹さんまいも、せいら に降臨こうりんした。

 横浜市の長津田から、日の本の國の純真じゅんしんおもいの改心かいしんはかることになった。

 社会しゃかい勉強べんきょうに出たなんちゃって科学者かがくしゃが、かたくななおもいをきほぐしていたからだ。


 身近みじかる男の子たちは、暴力ぼうりょく正義せいぎ勘違かんちがいしている。正義の遂行すいこうに、それを推奨すいしょうすることは、メディアにより蔓延まんえんされた。よわ人間にんげんたちは、そういった風潮ふうちょう感化かんかされやすい。してや子供なら、是非ぜひ分別ふんべつはぐくまれていない。つよいにまとわりつく責任せきにんを知らないからである。


 そこに気付いたうさぎが、下準備したじゅんびととのえていた。先見せんけんめい共有きょうゆうしていたからである。ときは今、すがおもいで、動向どうこう注視ちゅうししている。めることさえいとわない決心けっしんさえっていた。


 2,023年の初夏しょかは、おもいもたぎるほどのあつさに見舞みまわれていた。例年れいねんるいをみないうなるような気温きおんは、世界中せかいじゅういた場所ばしょ猛威もういをふるっていた。

 干上ひあがる場所にくらべると、記録的きろくてき降水量こうすいりょうも、めぐみとわざるをない。梅雨つゆそう降水量こうすいりょうが、数日すうじつることは、天災てんさい匹敵ひってきした。

 島国しまぐに利点りてんは、海に流せることだった。ただし、地中ちちゅう循環じゅんかんする水量すいりょうしで、地中はよんどころない状況じょうきょうおちいっている。人間のうつらないところで、わざわいのもとくすぶっているのである。

 能天気のうてんきよそお人々ひとびとでさえ、その恐怖きょうふかんれた。異常気象いじょうきしょうと云われ続けた結果、恐怖感は『またか』とあなどらせる結果けっかを生み出した。

 集中力しゅうちゅうりょく持続いじ苦手にがてにするのが人間であった。努力どりょく持続じぞくと同じで、無期限えいえんおよぶ持続は、簡単かんたんではない。わるいことに、不用意ふよういな時にかぎこるのが、天災てんさいであった。それはているかのようで、被害ひがいいのちにまでおよんでいた。

 

 電磁波でんじはみとれない人間たちに理解りかいもとめることは、至難しなんわざであった。そんな時だけ純真じゅんしんよそおう人が出るからである。SNS を通して、その事を理解りかいしていた。そのSNS でさえ今は、ねこ成長せいちょう記録きろくになっていた。まれない時間の矯正力きょうせいりょくだれもが知るところだが、あしらうように流されて終うのだ。後悔こうかいは先にたたず、なのだった。


 むち苦手にがてなうさぎはあめだけで、それおしえようとしていた。結果往来けっかおうらいにするために、言葉ことばおもいをかさねたのだった。純真じゅんしんこころには、かならとどくと、しんじてうたがわなかった。

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