第2話 神様にツッコミ

蒸し暑い森の中、照りつく日差しに鳥の鳴き声、どこかわからない場所に俺はいた。


「いや、どこ。ここ。普通遅れたとはいえ、クラスメイトと同じ場所に転生するもんじゃないのか?王城とかさ」


口に出してそういうが、返事は当然返ってこない。色んな書物で異世界の森に転生した時、どうしていたかを思い出す。

例えばスライムやゴブリンなどのモンスターになってたり、神様からもらったチートで、森を開拓したりしていたな。うん、全然俺に該当しないわ。


「あれ?ってか神様に会ってないから、俺ってチートもらえてんの? 

 ステータス鑑定エクスプロージョン!」


語呂のいい言葉を発するも、特に何か起きるわけもなく、ただ、俺の言葉が森に響き渡る。

この状況、もしかして相当まずいよな。どうすればいい?まずは、衣食住で優先順位を考えて、水と食料、そして寝る場所、最後に住処だな。異世界転生して、右も左もわからないこの状況で水を得る為に、川とか湖、あとは海とかを見つけ出さないといけないが、それはもはや運に頼るしかない。


「よし、考えててもしょうがないし、とりあえずまっすぐ進んでみるか」


周りを警戒しながら、適当に進んでいく。異世界といえば、ゴブリンやオーク、そうそう無いとは思うがオーガとかドラゴンも出るわけだし、気を付けないと。いや待て、普通に蛇とかでもやばくね?

焦りつつ思わずスマホを取り出す。不安から何かに縋りつきたい気持ちで、文明の利器、スマホに電源をつける。


「異世界じゃ、そもそも電波も届いてないし、普通に日本でも繋がるわけないけど、やっぱこういうのって癖だよな。って繋がっとるやんmi-fi!なんか新着メールも来てし...宛先が神様て!?」


驚き、届いているメールを開く。


『件名:異世界転生について


佐藤 郁斗様


お世話になっております。

スーアサポートの神と申します。


この度は私の異世界、スーアへのお招きが遅くなってしまい大変申し訳ございません。


時の神、クロノスに説教されており佐藤様にご説明の時間がなく、メールにて連絡させていただきました。

また、お招きさせていただいた理由は、こちらの不手際による転生ミスでございます。重ねて謝罪申し上げます。

代わりと言っては何ですが、異世界でなるべく不自由なく生活していただくために、チートをお渡しいたします。


もう存じ上げているかと思いますが、佐藤様のチートはそのスマホ機能とツッコミおよびボケとなります。


基本的にスマホは、普段お使いいただいているマップや翻訳、カメラのスキャンによる鑑定などができます。電源は魔力を代用とさせていただいております。使い過ぎると魔力制限がありますのでご注意ください。


ツッコミおよびボケは、佐藤様がツッコんだ現象、またはボケた際にその内容に沿ったことが現実に反映できます。ただし、ツッコミやボケは疲れると思いますので、ご注意ください。


それでは、異世界ライフをよろしくお願いいたします。


追伸

元の世界へは一定時間を過ぎれば元に戻れることとなっておりますので、ご理解ください』


「へーそうなんやって、ならんやろ普通! あと、長いねん! 遅くなってごめん、ミスってみんな転生しちゃった。お詫びにチートあげるから、なんとか生き延びて。しばらくしたら帰れるよ。ぐらいでまとめれるやん! ってか、どんなミスしたらこうなんねん!!!」


ねん、ねん、、ねん、、、と俺の言葉が木霊する。


「...まーでも、神様も社畜で大変そうやし、情状酌量の余地ありか。マップもあるみたいだし、さっさと近場の村とか町に行くとしよう」


ツッコミを入れると落ち着いたので、気持ちを切り替えてマップアプリを開き、現在地の森を確認。すると、近くにスポットのピンが立っているのが目に入る。なんとなくタップする。


公爵の馬車 ピンチ

徒歩9分 ダッシュ4分

対戦時間外 対戦開始9:45


「公爵の馬車ピンチ? 対戦時間外ってなんやねん。今が9時25分だから、これから20分後くらいに起こる未来の出来事ってことか?考えててもわからんし、行って確認してみるか」


経路を押すと、そこまでの道のりが表示される。それに従いながら、早めにつくために、軽く走る。その際中にもし戦闘になったらどうするか、ゴブリンみたいなモンスターなんかを殺せるのか。もしくは———。などと考えていると目的地の途中にある少し離れた高い丘に上がる。そこから長い街道が見え、まだ舗装されていない草木の陰から複数人のガラの悪い人が見えた。そいつらにスマホを向け、カメラ機能にて鑑定を選ぶ。


マケーヌ・カマセーヌ 33歳

職業:剣士[剣閃流]

体力:まあまあ

攻撃:かなりいい

防御:まあまあ

速度:すごくいい

魔力:ダメかも


なんか、わかりづらいようなわかりやすいような表記でカメラの画角に盗賊のリーダーっぽい人物のステータスが表示される。他に全員で10人いるらしく、ほとんど微動だにせず、待ち伏せを続けている。その間に他の人物も鑑定するが、まあまあやダメかもといったレベルばかりだった。

マップの情報が正しいのならこれからもうすぐ、あそこで戦闘がおこるだろう。その時に俺は、助けに行けるのか。

もしくは———人を殺す覚悟を持てるのか。

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