吸血鬼とロイヤルミルクティーを

@utau54

【吸血鬼とロイヤルミルクティーを】

第1話 はじめましょう

それはある静寂の真夜中。

天高く昇った満月が、雲一つ無く煌々と照らす。

郊外にある古びた館にて、一人の女が玄関のベルを鳴らす。

暫くすると扉がゆっくりと開き、中からは一人の男が出てきた。


「こんばんは。いい月夜ですね。」


女は男に満面の笑みで挨拶をし、


「懲りずに来たか。女よ。飽きもせず。」


男は呆れたように女を見据えていた。


女はそんな男の様子にも目もくれず


「ええ、もちろん。月に一度のこの日を楽しみに生きてますので。」


「ふん。この変人め。」


「レディに変人とは失礼ですね。まあ…否定はしませんが。」


「しないのか。」


「…ふふ、それにその変人をこうして招いている貴方も、存外に大概だと思いますよ。ねえ【吸血鬼】さん」


【吸血鬼】と呼ばれた男は眉間に皺を寄せる。


「存外も大概も貴様の方だ小娘よ。それに余は約束事を無闇に違えたりはせぬ。

例えお前がどうしようもない夢見がちの子供だったとしてもな。」


「もう、そんなに褒めても血しか出せませんよ。」


「褒めてもないし、いらんわ。」


「ちぇ」


女は拗ねたように小さく口を尖らせる。


「相変わらずいけずですねぇ…。

あっ、今日はスコーンを焼いてきました。ジャムも自家製ですよ。」


「ほう、そちらは喜んで頂くとしよう。」


「上がっても?」


「拒否したところで無駄であろう?」


「ふふ、もちろん」


吸血鬼は小さく溜息を吐きつつも、女に手を差し伸べる。


「では、今宵も始めるか。」



女はそっとその手を取る



「ええ、真夜中の素敵なお茶会を。」





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