第2話:プロフィールを言おう
話はまぁ、もうかれこれ20年ほど前……
自分がピッチピチの小学生だったころに戻る。
俺は最初から悪魔の一介であったわけではない。
誰しも冗談で「悪魔召喚」について考えた、あるいはやってみたという苦い思い出があるだろう。
その中でも俺は当たりを引き当ててしまったというわけだ。
本物を呼びだすための手順を知り、子供ながら一週間かけて材料から魔法陣までの準備を行い少年の一種の夢である「悪魔召喚」を見事成し遂げたのである。
結果として「老い」を感じない体を手に入れた。
その代償として身長が長らく伸びなかったため、ずっとチビ助のままだった。
このころの夢は背の順で並んだときに腕を前に出すことだった。腰に当てるのではなく。
今となると、ずいぶん可愛らしい夢だなと思う。
しかし、緩やかではあるが身長は伸びていた。
いや、本当に数
だが見た目は中学卒業の時期でもまだまだ幼げのある小学生低学年程度にしか見えなかった。
さすがに疑われる。
杞憂かもしれないが高校には万全を期していきたくはない。
でも高校には行きたい。
と、あれやこれやと悩んでいる間に、ずいぶん長らく時間が過ぎてしまった。
……ざっと20年ほど。
いっそこうなるならば誰か儀式に呼んで俺と同じ目にでも会わせればよかった。
が、悪魔召喚の手順に一人でやれとあったため、俺一人でやるしかなかった。
悪魔は1対1の契約がしたいらしい。
もっともらしい理由だ。
しかし20年も経つとやっと自分が「高校生です」とキメ顔でいえるだけの背格好にはなっていた。
ので、こうしてアラサー男子の高校生活がやっとの思いで始まったのだ。
どうやら俺の体質は悪魔になってから一般的なニンゲンの成長速度と比べて5分の1ほど遅くなっているらしい。
つまり、悪魔と契約する以前の約10年の人としての人生にプラスして20年
合計14~16歳が今の見た目上の年だ。
見た目は子供(高校生)で頭脳と精神な大人なアラサーである。
悪魔との契約内容についてさらに詳しく話すと、実はあまり言えない。
20年前の話なのだ。忘れても仕方がない。
が、これによって得た固有スキルはさっき言った不老不死のほかにもしっかりとある。
「悪魔の召喚」「対霊能力の識別」だ。
悪魔の召喚は現に少年時代にもできた。
だが、悪魔のはしくれとなった今ではあの頃のような召喚のための準備に丸一週間とかからなくなった。
今となってはミコンを開いて呪文を唱えればパパッと悪魔召喚ができるようになっている。
さながらネクロマンシーといった感じである。
対霊能力の判断というのはスパッと言うと『霊感診断』のことだ。
具体的には人を見るだけでその人の霊感が数値化されるのだ。
数値化というがフリーザのスカウターのように1とか100と出るわけではない。
ただ俯瞰的にわかるから、勝手に自分で数値化させてしまうだけの代物だ。
この能力は基本的にはあまり使わなかった。
なぜならニンゲンと関わらない生活を送っていたから、見る対象すらいないに等しかったからだ。
だが、最近だととってもお世話になっている。
学校でやることがなくてひまなんだよ。
やることって言ったら人間観察なんだわ。
とりあえず、ひまに乗じて俺のクラスで診断してみた。
霊を完全に理解できる数値を100(つまりは俺のような人のこと)として、うちのクラスの最大評価は俺を抜いて54か。
ちなみに50でも「ん? いる?」程度で霊の存在に気がつくが、目を凝らさないと見えないって具合だ。
対して、最低評価は実に驚いたことに0だった。
0は霊の存在にまっっっっっったく気がつかないどころか心霊現象なんてものと無縁すぎるある意味レアな存在だ。
虫にだって5くらいあるというのに……
……まぁ、言ってしまえば「鈍感」だ。
ドを超えて「ドドド鈍感」だ。
そんな珍しさが相まって、授業中も暇ならそいつを「0だなぁ」と眺めていることも多かった。
だから話すことはなかったがよく知ってはいた。
そいつの声も何者なのかも知らないが、顔だけはぼんやりと知っていた。
そして今現在。夜の体育館。
そいつと運命的に(?)出会ったのだ。
この霊感0のレアキャラ女に。
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