第62話【女神SIDE】良いのかな...



これは困った事になったわ…この場合は一体どうなってしまうのかしら…ハァ困りましたね。


この世界ルミナスは人間側は私事女神イスカルが治めていて、魔族側は邪神ザゲルが治めています。


ですが…今回、とんでもない事が起こりそうなのです。


人族と魔族の間で停戦が決まりそうです…


此処迄は良いのです。


此処迄は女神として『平和な世の中が訪れた』と祝福が出来ます。


これから先、異世界人の召喚者も無くなり、


私もジョブやスキルを与えないで良い、まさに理想の世界です。


そこ迄は…です。


ですが…『魔族と人族の統合?』


なんですか?! それは…?


本当に困った事になりそうです。


今迄は邪神と私でこの世界の均衡を保ってきました。


人間側が私、邪神側が魔族を守護する、それが古からの習わしです。


邪神ザゲルが魔王を誕生させ、私が勇者達を召喚させ戦う。


そんな関係が長く続いてきたわ。


二柱の神がお互いの種族を守護している状態。


それが、この世界ルミナスです。


魔族と人間の統合…そうなってしまったら、この世界はどうすれば良いのでしょうか?


一つの種族に二柱の神。


この世界をどのように統治して行けばよいのか…


考える必要があるのかも知れません。


◆◆◆


邪神側と話す必要がある。


そう思った私は、創造神様に許可を得てザゲルの元に向かう事にしました。


「ああっ、種族統合の話なら聞いていますよ!」


なんだか随分軽く感じるわね。


私が思っている雰囲気じゃないわ。


「ザゲル…これは一体どういう事なのかしら?」


「ああっ、先日、魔王が人間と交わり魔族の子を産んだ、その報告が既に私の所にきている」


魔族と人間が交わって生まれて来たのは魔族。


まさか、そういう事なの?


「人間と魔族が交わり、生まれてきたのは魔族…だから、この世界の統治権は貴方にある!そう言いたいのかしら?」


「「本来なら私が治めるゆえ貴方には引退して貰う!」と言いたい所だが、そうも、言えなくなりそうだ」


「それはどういう事なのかしら?」


「私が闇、貴方が光、私の力と貴方の力は表裏一体でこの世の中は回っている! これから先、種族が交わればその種族は両方の力を持った全く新しい存在になる!」


「だから?」


「本来は1種族に統合されたら1柱の神が相応しいのかも知れぬが、私では光の部分に問題が出た時に対処が出来ない」


「確かにそう言う事があるのかも知れないわね」


「そうだ…異世界では違った犬同士を掛け合わせてミックスという変わった犬を作るのが一部でブームらしい!犬を育てる職業をブリーダーと呼ぶそうだが…そうだな…チワックスというチワワとダックスフントという犬のミックスを育てるには両方の知識が必要になるそうだぞ」


「犬と人族や魔族を一緒にするのは不謹慎だわ」


「魔族にはほぼ犬の様な種族も居るのでな、気に障ったのなら謝罪をしよう! 私が言いたかったのは魔族と人族が交わり生まれたのが魔族であっても、その体には人族の血肉が入るのだから、人族の知識が必要だ! そう言う事だ」


「確かに言われてみれば、お互いの知識経験が必要ね」


「お互いに数千年掛けて見守って来た種族、お互いの言わば最高傑作だ交わった後に問題が起きたら目も当てられぬ…」


「確かにそうね」


例え魔族に全員が変わっていっても、その体には私の愛した人族の血肉がある。


そして、その部分の知識は間違い無く私の方がある。


「それで、イスカルよ!私はこれでも結構な美男子であると思うのだが、貴方の目から見てどう見える?」


確かに、長い漆黒の髪に女神の私以上に白い肌。


スラっとした肢体に整った顔。


間違い無く、美青年ね。


「私相手に邪神が自惚れているわけ…なんの冗談?」


「いや、冗談では無く、この際、私の嫁にならぬか?」


「?…はい?」


今、ザゲル『嫁』とか言って無かった?


聞き間違いよね…


相手は邪神よ、何かの間違いだわ。


「あ~っ...私はこう言うのには慣れておらぬのだ! 嫁になってくれぬか!」


「え~と、それはなに? 貴方が私と結婚…そう言う事? これは結婚の申し込みという事なの?」


「そう言う事だ! 魔族と人族が子をなす世の中だ!邪神と女神が結婚しても可笑しくないだろう。それに私は戦いと言う形ではあるが、数千年の月日を一緒に過ごしてきたのだ、最初は殺伐としたもので、どうやって『貴方が召喚した勇者を魔王に倒させるかばかり考えておったよ』また例えが悪いと思うかも知れぬが、何千年もの間仲良くチェスを打っていた仲とも言える。自分の人生を振り返った時、私の頭の中に居たのはイスカル貴方だったのだ…そのな」


ううっ、言われてみれば、そうじゃない。


人族と魔族をお互いが守護しながら一つの世界に関わり一緒に過ごしてきた。


はぁ~


お互い他に目を向ける事は無かったから、言う通り私の頭の中もザゲルばかりだわ。


恨み、憎しみも多くあるけど…困ったわね。


それ以外の感情も沢山あるわ。


「そうね…これから時間を掛けてゆっくりと人族と魔族の垣根が無くなるわ! 取り敢えずは婚約をして完全に1つの種族になったら結婚、それで如何かしら?」


「やった! それじゃこれからもよろしく!」


「こちらこそ…」


邪神と女神が婚約…良いのかな…




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