恋人
@Mukimuki111
第1話
四月の新人研修期間の一ヶ月間で二人は仲を深めた。わからないことはお互いに聞き、休み時間はプライベートのことを聞いて相性を確かめ合った。周囲からは二人がいずれ良い関係になることは明白だった。
最初に仕掛けたのは若菜の方だった。仕事帰りに映画に誘い、彼の心を揺さぶった。
優也の方もまんざらではなく、彼も動きを見せた。支店配属すぐのゴールデンウィークでどこか行かないかとデートに誘った。若菜はいいよと頷いた。優也の心は既に若菜に夢中だった。
そしてデート当日。最高な気分でデートを終えた優也は、二人の関係性を変える言葉を発した。
『好きです。付き合ってください』
恋愛経験が浅い彼は極度の緊張で一世一代の勝負にかけた。けど、不思議と振られる感覚はなかった。
優也が求めていた答えは、彼女から返ってきた。これほどまでに心が震えたのは久しぶりだった。
恋人関係になってお互いのことがさらにわかってきた。
まず若菜は結構サバサバした性格だと言うことだ。恋人関係になる前は、意外と積極的だったが、関係後は不思議とさっぱりとしている。この変化には優也はさすがに驚いた。
会う頻度も彼女は月に一か二でいいと言う。優也としてはもう少し会いたかったが、彼女とのペースを合わせるために了承した。
優也の方はどちらかというと甘えたいタイプだった。けどベダベタまではいかない。手を繋ぐ、愛情表現をする。そういったことをして恋愛を楽しみたい。あまりそういう気のない彼女とは正反対だった。
連絡は一日に一往復か二往復。話は仕事のことばかりだ。
優也は信頼できる同期には若菜との関係を明かしていたが、「それって本当に付き合ってるのか?」と苦笑いされた。
優也は気にする性格で彼女と上手くやってけるか不安だった。付き合いたて当初は彼女のことばかり考えてしまうし、彼女がサバサバした性格だから冷めたのかと思い、仕事に集中できないことがあった。
しかし、何だかんだ付き合って三ヶ月は経った。若菜は相変わらずの性格だが、デートはしてくれるし、連絡はくれるから、一応は彼氏としては見てくれているのだろうと思った。
『まあ、俺たちは俺たちのペースでいっか』
優也も付き合いたてよりは気持ちが落ち着いてにきて、心地よい日々を過ごせるようになった。これからがやっと仕事と恋愛が楽しめる。そんな軌道に乗ってきた。
だがしかし。付き合って三ヶ月と少しが過ぎた頃。突如として優也は姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます