第2話 クララって何 前編
不名誉ながら我が母校となった、にかほ市立第二中学校。通称にに中。ダサいこと極まりなく、この学校にお似合いの呼び名だ。2036年度の新一年生は1クラス25〜26人、3クラス計76人。田舎にしては多い。去年近隣の中学2校が廃校となったことを考慮すれば妥当な数字だろう。
強制的に地域でまとめ上げられ、集団行動を取るには多すぎる人数と少なすぎる脳のガキどもの入学から二ヶ月半。夏休み前にもなると力関係が分かってきた。
「明日の6時間目の学活は学級委員主催のレクをやりますっっ!!」
学級委員のなんとかハララは昨日も元気よく騒いでいた、ダサい。
「劇をやるぜっっ!!」
同じく学級委員のなんとか桐也は以下略。
2人とも顔は整っている方だろう。力関係の上位に位置している。その下に5人ほど金魚の糞がおり、他はまだ様子見している。
「ポスター作りましたっっ!!見てくださいっっ!!」
1日前にポスターを貼って何が変わるのだろうかと思った。そんな無意味な自己満足イベントの確認のためにわざわざタブレットを開きたくなかった。
しかし、まあ一応確認した。へー。ふーん。表題は『アリスinにに中』。原作者はヤク中。学びの場に当時は先進的だった児童を純粋に楽しませる娯楽小説を持ち込むのは洒落てる。考えてやっているなら。
教室が沸いた朝礼が過ぎた後は、草臥れた中年とヒステリックな中年のどちらかを選べる選択科目、自習という名の先生の職務怠慢、自習の方がマシな新人、その新人よりもボロボロな老人、多様な意見など求めていない道徳。機械的に荷物をカバンに詰めて足を前後に動かし、うつった匂いを取り払い、必要な栄養を摂取し、記憶の反復作業を行う、今見ているのもそうだ、昨日もいつもと変わらない酷い1日だったと残しておこう。
今朝の朝日は少し違う。目覚めてすぐに思った。
6時間目、体育館に集まり、正座させられ、ステージを見る。
「学年レク始まるぜいっっ!!」
なんとか桐也の掛け声。きっとつまらない。きっとダサい。
幕が上がった瞬間に私の心拍数も上昇したのがはっきり分かった。
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