そして7月7日が来た…
夢未 太士
第1話 ブロロロローグ
ブロローグ
それは思い出、あの日の思い出。
今から数十年前、まだ若かった頃 怖いものなど何も無かったあの日。
ずいぶんと時間が経ってしまったが、今年も七月七日がやって来る。
俺は20代で独立しお店を持つようになった、それは端から見れば早いと言えるが。
独立して出店するのは何もしっかり計画していなくてもできる事だ、勢いさえあればなんとかなる。
だがそこから先ちゃんと仕事をしなければ個人店などすぐに閉店しなければいけなくなる。
若い頃は仕事をちゃんとしていても同じぐらい遊んでしまう事が多々ある、その頃の俺は仕事を終えた後、ストレスを発散する為に峠道まで走りに出かけていた。
あれは20代でまだ店を出したばかりの頃、俺はその当時独身であり、付き合っている女などいなかった。
まあ仕事柄女性と会う機会が多いのでその中から見つけることもできただろう。
だがそれをやると客商売と言うのはあっという間に信頼をなくしてしまう。
だからそちらへ向いていた気持ちを発散する為に俺はバイクへとのめり込んでいた。
俺の20代は殆どバイクに費やした、別にレースに出ていたという分けではない。
仲間内にはそういうやつもいたが、俺はそこまで人生をつぎ込もうとは考えてはいなかった。
その代わり毎年、思いっきり走るため、ある場所へと行く計画を立てていた。
そこはライダーならば一度は訪れたい場所、一人で行くにはかなり勇気がいる場所だ。
初回は友人と行ったが3回目からは一緒に行く友人も仕事が忙しくなり、結局一人で計画するしかなくなった。
俺はどちらかというと飛ばし屋ではなく峠小僧に近い、毎日店が終わると郊外の峠道目指して走っていた。
そこはワインディングロード、高低差のある峠道、そこまで行くとコーナーリングの技術を磨くため駐車場から次の駐車場までを何度となく往復する。
当時そういうバイク野郎をUターン族と言っていた、当然のことながら事故も経験したが、俺はそれでもその危険な行為を辞めずにいた。
あれは一種の病気に近い、流行りの病のようなものだった。
誰が一番早い?どのコーナーを何キロ出した?他愛ない自慢に花を咲かせ、いい気になっていた頃。
そんな状態を数年続け何時しか自分が一人になっていることに気が付いた、周りは皆就職し昇進を目指していく。
中には家庭を持ち子供を作り、家を建てたなんて言う話さえ聞いていたが、俺はそれでも走り屋をしていた。
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