クラッシャー令嬢! 今日も近くで婚約破棄! 新たに生まれた真実とは?
甘い秋空
一話完結 クラッシャー令嬢
「貴女との婚約を破棄する」
近くにいた男爵令息が、令嬢に宣言しています。
「なぜですか、私たちの婚約は、侯爵様からのご紹介ですのに」
令嬢が、困惑しました。
王宮で行われている“王子の婚約発表パーティー”での出来事です。
国王が夜会を避けていることから、いつも、日のある時間帯にパーティーを開催しています。
私の名前はギンチヨです。銀髪で眼鏡をかけ、意図的に青緑の瞳を見えにくくしています。
孤児だったらしいのですが、目も開かぬうちに、チバーナ伯爵家の養女となり、今は恵まれた生活をおくっています。
私の隣には、学園で同級生だったクロガネ君がいます。黒髪で黒色の瞳、留学生で、成績優秀、イケメンと、とてもモテます。
今は、国王直属の従者として働いています。
彼とは学園時代から気が合い、今日は久しぶりに会ったので、話し込んでしまいました。
一緒にいると楽しい、唯一無二の男性です。
「ギンチヨ、ここから離れよう」
「そうですね」
修羅場から離れて、今あった事を話し合います。
「ギンチヨ、俺たち二人が揃うと、クラッシャーと呼ばれる、よく言えば、真実を語るスキルが発動すると、、、考えているのだが」
「同じことを、私も考えていました、、、いきなり、あの婚約破棄は、おかしいですもの」
スキルの共鳴という異常現象を、聞いたことがあります。
「貴女との婚約を破棄する」
近くにいた子爵令息が、令嬢に宣言しました。
え? こちらでも……
「私たちの婚約は、侯爵様のご紹介ですよ、どう報告すればいいのですか」
令嬢が、怒っています。
「クラッシャーか! ギンチヨ、ここからも離れよう」
「そ、そうですね」
修羅場から離れると、だんだんと上座に近づいてしまいます。
伯爵ご夫妻の近くまで来てしまいました。
「さっきの令嬢とは、どのような関係ですか、また浮気ですか」
伯爵夫人は、ものすごい剣幕です。
「もう我慢できません、離婚です、出ていきなさい」
伯爵はムコ殿でしたか!
「俺たちは、侯爵様のご紹介で結ばれた夫婦じゃないか、少しの浮気くらい勘弁してくれ」
ムコ伯爵は、青い顔をして、懇願します。
「勘弁など、できません!」
夫人の決意は、固そうです。
「ギンチヨ、ここも危険だ、離れよう」
「そ、そ、そうしましょう。クラッシャーって恐ろしいですね」
会場の上座、王族の近くまで来てしまいました。
近くに、主役の王子と婚約者がいます。
本日の主役である王子の宣言が始まりました。
「ここに、私の婚約を発表する」
さっきまでの修羅場の喧騒が嘘みたいに、会場は静まりかえっており、王子の声は息づかいまでよく聞こえます。
「うれしい、今夜も可愛がってくださいね、侯爵様」
婚約者さま? 今、なんておっしゃいました?
王子に向かって、侯爵様と言い間違えましたよね?
婚約者の声が、会場の隅々まで聞こえたようで、皆さん固まっています。
「どういうことだ、侯爵?」
国王が、侯爵を問い詰めます。
「娘として可愛がるという事です」
侯爵が苦しい説明をします。
「いいえ、娘じゃなく、愛人として可愛がってもらってますよ」
婚約者が、爆弾発言をしました。
「娘は、養女でして、その、、、私の愛人です」
侯爵が白状しました。
会場は、シーンとしています。
「侯爵様のために働いてきた私はどうなるのだ! 国王の生まれたばかりの赤子をすり替える犯罪まで犯したのに!」
ムコ伯爵が、こちらも爆弾発言をしました。
「え? 俺は、偽物なの?」
王子は驚いています。
冷静な国王まで固まっています。
会場がザワつき始めました。これは王国の一大事です。
「静まりなさい、真偽を確かめる必要がある。真実の水晶玉を持ってこい」
国王が、沈静化に努めます。
「ここに」
クロガネ君は、なぜか水晶玉を持っていました。
私とスキルが共鳴したのは、あの水晶玉のようです。
「水晶玉よ、私の子供の真実の姿を映し出せ」
国王が魔法を発動します。
空中に映し出されたのは、銀髪の美しい令嬢でした。
「え! これって、私ですよね?」
思わす声を上げてしまいました。
「貴女は、誰だ?」
国王が、私の方を向きました。
「チバーナ伯爵家の養女、ギンチヨと申します」
カーテシーをとり、答えます。
「面を上げなさい。そうか、貴女がクロガネが言っていたギンチヨ嬢か」
国王の、美しい青緑の瞳が、一瞬、光ったように感じました。
「そのメガネを外しなさい」
国王の命令です。メガネを外し、私の青緑の瞳を見せます。
「カーテンを閉めて、ロウソクの灯りに切り替えよ」
国王の命令です。国王は、私の瞳の秘密を、知っているようです。
驚いたことに、ロウソクの灯りで、国王の瞳も、赤紫色に変わりました。
たぶん、私の瞳も赤紫色に変わったはずです。
会場の皆さんは、暗く、遠目であり、何が起こっているのか、わからないようです。
「間違いない、王族の瞳を持っている」
国王の赤紫色の眼に、涙が浮かんでいます。
「このギンチヨ嬢を、私の娘と認める」
国王の宣言に、どよめきが上がり、会場が拍手に包まれました。
「侯爵を、王国の乗っ取りを図った罪で、牢に投獄する」
国王の命令で、侯爵は、うなだれたまま連れて行かれました。たぶん、関係者を含め、生きては出てこれないでしょう。
カーテンが開かれ、会場は明るくなりました。
「さて」
国王の顔つきが緩みました。
「クロガネ、状況は変わったが、想いは変わらないか?」
なにやら、彼に訊ねます。
「もちろんです」
彼は即答しましたが、何が起きているのでしょうか?
「ギンチヨ、俺と結婚してくれ」
私が国王の娘で? さらにクロガネ君からプロポーズされてる? どうなっているの?
理解が付いていけません。
でも、単純化すれば、私は彼と結ばれたいと思っていたわけで。
「はい、愛する男性はクロガネ君だけです」
私は、真実を語ります。
「決まりだな。今ここに、この王国の女王と、隣国の第三王子との婚約を宣言する」
国王様、今、なんとおっしゃられました?
クロガネ君を、隣国の第三王子って言いましたよね?
「二人は、我が国と隣国の、友好の懸け橋となるだろう」
私たちは、祝福の拍手に包まれました。
爵位がどうであろうと、彼と一緒にいられる未来が、楽しみです。
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あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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クラッシャー令嬢! 今日も近くで婚約破棄! 新たに生まれた真実とは? 甘い秋空 @Amai-Akisora
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