正直者(だけ)が生きる世界で

武 頼庵(藤谷 K介)

正直者(だけ)が生きる世界で




 ギラギラと照り付ける太陽が憎らしい季節になっても、俺、比嘉慎太郎ひがしんたろうの心の中は、どんよりとした梅雨空のままだった。


 理由は簡単だ。


「おい陰キャ!! クラスの親睦を兼ねて皆でプールに行くから、誘いたくねぇけど一応、一応!! お前も誘ってやるよ!! まさかこねぇなんて言わないよな!! なぁ!? ぎゃははははは!!」

「おいりょう本当の事だけど正直すぎるぞ!!」

「いいんだよ陰キャなんてこんな扱いで!!」

 教室の片隅でジッと本を読んでいた俺に、仲良さげに肩を組みながら近づいて来たかと思えば、そんな事を言い出す二人。前者はクラスカーストのトップで陽キャ全開の館林了たてばやしりょう。顔はもちろんイケメンで暮らすどころか学年でも大人気な男子の一人である。後者はカーストツートップと言われている一角でこちらもイケメンしかもスポーツ推薦で入学してきた事もあって、女子からの人気が凄い男子若林省吾わかばやししょうご


 凄く頑張って狙えるギリギリの良い高校を選び、運よく合格して入学してみれば、実際はクラスの中には明らかながあった。

 ほぼほぼ顔見知りなどいない学校で、1年生にも関わらず既にグループ訳でもされていたんじゃないかと思うくらい、見た目にも成績的な物でも差がありありと浮かんでくる。


 もちろん先ほど館林が言ったように、俺は黒髪黒眼で少しは見た目を気にしているけど、髪型は野暮ったい稍長髪。眼が悪いやけじゃなく、乱視が酷いので授業や何か読んだりする時は矯正眼鏡をかけるのだけど、それがどうも彼らの心に引っかかったらしく、入学2日目から何かあるとこうして俺の前までやって来ては、一言二言言い放つと笑って離れていく。


――何が楽しんだ? 毎日毎日良く飽きないもんだ……。

 俺は去って行く二人の後ろ姿を見ながら、聞こえないように大きなため息をついた。 


「比嘉君!!」

「え?」

 下を向いていた俺にとても透き通るような声が掛けられる。

 ふと顔を上げると、俺の机の横に立ち俺の事を覗き込んでいる女子の姿が有った。


「吉田さん……?」

 彼女の姿を確認して息をのむ。


 吉田香澄よしだかすみという名の彼女は、クラス分けされる前から顔だけは見たことが有る女の子だった。

 入学式当日、体育館にて行われた式で、入学生代表として挨拶をしたのが何を隠そうこの吉田さんなのだ。

 つまり、入学者全体を含めても一番優秀だという事がそれだけでもわかるけど、実はこの吉田さん陸上競技で全国大会へ行くほど身体能力も高い。専門は走り高跳びらしいけど、短距離でもその能力を発揮してそちらでも全国大会へ行く事も可能だと噂されている。

 

 まぁそれだけでも人気になりそうなのは分かるけど、少し茶色掛かった黒髪を頭の後ろでポニーテールに纏め、少し日に焼けた素肌を隠すことなく晒して、きらりと光る白い歯を見せつつニコッと笑うと目が半月を描くような形になる。元々少したれ気味な大きな瞳をしているので、そこがまた可愛いと大人気。更に先ほどの二人のように棘のある言い方をしない事で、俺の様なクラスの日陰者扱いされている人にも優しい。


――仲が良いかと言われると、実はそんなに話したこと無いんだよなぁ……。

 だからこそ話掛けられたことにビックリする。


「えっと……二かな?」

「気にすること無いよ?」

「え?」

 少しだけ俺の方へとかがんで顔を近づけながら、俺に向かって話しかける。

ってどこにでもいるんだから、気にしなくていいよ」

「そ、そう?」

「うん!! それでね……確認なんだけど、比嘉君……親睦会……来るよね?」

 少しだけ俺から顔を背けつつ、吉田さんはぼそっと問いかけて来た。

「え? あ、まぁ……行かないと更に何か言われそうだし……」

「そっか!! うん!! ……良かった……」

「え?」

「あ、ううん!! 皆着てくれるから嬉しくてさ!!」

「なるほど……。学級委員趙さんも大変だね」

「そんなこと無いよぉ~」

 えへへと笑うその姿を見ながら、やっぱりこの人は良い人なんだと改めて思う。



 ただ――。

「あのくそ陰キャが!!」

「香澄ちゃんはあんな奴に……」

 という、俺達とは反対側にいたアイツらの会話は、全く知らないままその日を迎える事になる。






 最近の俺には日課にしている事が有る。

 学校ではお世辞にも楽しいという事があまりない俺にとっては本当に癒しともいえる時間。


「おいで!!」

「にゃぁ~」

 てこてこと駆け寄ってくる小さなもふもふの生物。


「お? ちょっと大きくなってきたか?」

「にゃ?」

 ちょっと首を傾げる仕草にどきゅんと胸を打たれ悶えかけるも、寸前の所で留まった。


 所謂『捨て猫』で『野良猫』であろうその生物とは、本当に偶然に出会ったのだ。

 

 自分の家から学校までは歩いて20分程度で着くのだが、学校が嫌――というよりもクラスが嫌なのでなるべく遅く着くようにと、最短距離で着く通学路を使わず、遠回りで時間を稼いだ時の事、自分ちの周りはけっこう子供のころから走り回って遊んでいたこともあって知っている馬車がほとんどだが、その行動範囲外になると途端に初めて目にするものが多くなる。


 その子猫と出会ったのも、そんな場所の一つ。新興住宅街となって久しい山裾にある場所にできた少し小さめの公園。

 周り府が既に山であるから緑を取り入れる必要がない為か、必要最低限の物しかないその公演で、一人時間を潰そうとベンチに座っていると、どこからともなく聞こえるか細い泣き声。


 初めはあまり気に留めなかったのだけど、その泣き声が長く続くものだから、ちょっと心配になってその声の主を探してみる事にした。


――どこから?

 土地勘が無いし、始めて来た場所で何処を探せばいいのか分からないから、とりあえず端の方から探し始めた。

 すると、探し始めてから数分して、公園の山際にある小さな物置小屋の近くに段ボールが一つ落ちている事に気が付いた。

 

 近寄ってみるとふたがしっかりと仕舞っていないようで、バタバタとふたが動いているのが分る。そんな段ボールの中からか細くも『行きたい』と願う様な必死な泣き声が聞こえて来た。


――この中か?

 気が付くと駆け寄っていて、段ボールの動くふたを掴み、そっと広げてみた。


「にゃぁ~!! にゃぁ~!!」

 小さな体を目いっぱいに広げ、グッ!! 前足を精一杯伸ばして箱のふたを押していた真っ黒でいて、小さなグリーンの瞳がくりくりとした子猫がと視線がばっちりと合ってしまう。


――一匹……だけ?

 箱は小さいと言っても、小荷物が入る位の大きさがあるし、その中にはまだ食べかけのキャットフードが少しと、暖かさをしのぐだけの為のタオルが入っていた。


――もしかして……。

「おまえ……最後まで残ったのか?」

「ぬにゃぁ~ん」

「そうか……お前も一人か……」

 いつの間にか俺はその子を抱いて、近くの芝生の上へと腰を下ろしていた。


「ほら……食うか?」

「んにゃ」

「そうか……」

 嬉しそうに俺が上げた弁当のタコサンウインナーを頬張る姿を横で見ながら、もうすぐやって来る夏に想いを馳せる。


――このままこの場所にいたら、こいつは……。

 朝早くから俺の為に弁当を作ってくれた母さんに申し訳なく思いつつも、目の前でタコサンの頭からがっつくもふもふを見るとなんだかそれでもいいかと思ってしまう。


――あ!! 学校!! ……まぁいいか。今日はもうさぼっちまうか……。

 気が付いて腕時計を見ると既に午前10時を少し回っていた。ため息を一つついて、決心を固めると、その日はその子猫と一緒にずっと公園で過ごしたのだった。


 うちにはネコ好きな父が居るのだが、残念ながら好きとはいえかなり重度の猫アレルギーを持っている為、連れ帰ることが出来ない。

 迷った挙句、出来る限り日影が出来そうな場所で、カラスたちからも見つからないような場所へと子猫を段ボール箱のまま移動し、後ろ髪惹かれるままその公園を去った。


 それから俺はその公園へ足しげく通う事になる。





 ただ、その公園に通っていたのは俺だけじゃなかったみたいだ。時々だけど餌をやったような跡が残っているし、いつの間にかタオルなどが増えている。


――優しい人が居るんだな……。でも、やっぱりそういう人ばかりじゃないんだ。

 少しだけ、本当に少しだけだけど、俺の胸の奥がほっこりと温かくなるのを感じる。








そして――。

行きたくはない。いきたくは無いけど行かないとまずい事だけは分かる。そんな日はけっこうな速度を保ちながら足早にやってくるもので、とうとう親睦会という名のトップカーストたちの遊び場となる日がやって来る。


その日の為に渋々と買った新しい水着。地味目な色合いで、だけどあまり地味な模様にならないように気にしながら数件お店周りをしてようやく見つけたソレを、濡れたものを入れても汚れないバッグへ詰め込み、着替えなどを入れるようにビニール袋も数枚ぶち込んで、何が待っているのか知らない母さんの暢気な掛け声を後ろ背に聞きながら、俺は足取り重く家を後にした。


プールに着くとそこには舘林たちの姿は無く、俺と仲良くしてくれている男子数人が建物の外で俺の事を待っててくれた。


「あれ? アイツらは?」

「あぁ……おいつらが俺たちの事を待ってるわけないだろ?」

「まぁそうか……」

 ブスッとした表情を隠そうともしない友達Aこと高島章たかしまあきら


「俺達よりもあいつらのお目当ては女子だからな……しかも、本命はバレバレだぜ!!」

「あぁ……吉田さんか?」

「それ以外はもちろんアウトオブ眼中だろうよ」

 既に中ではしゃいでいるであろう人達の事を思いつつ、舌打ちをする友人Bこと菅原秀隆すがわらひでたか


――まぁ初めから、俺達はおまけでおもちゃでしかないんだろうけどな……。

 などと俺も建物を見ながら深いため息をついた。


「私がどうしたの?」

「「「え!?」」」

 そんな俺たちの背後から聞こえる凛としていて綺麗な声。

 俺達は一斉にバッ!! と後ろを振り向いた。


「え? あれ? 吉田……さん?」

「ん?」

 首を少しだけ傾げてニコッと微笑んでくる吉田さん。


「どうして……? もう中に入ってたんじゃ……」

「あぁ……比嘉だっけ? あんた」

「え? は、はい……」

 吉田さんから少し遅れて、なんだか気怠そうな表情をしたまま顔を出した女の子。


「えっと……」

「……コイツ?」

「う、うん……」

「ふぅ~ん……」

 そういうと俺の事を上から下まで一通り見回す。


「あんまりパッとしないわね。まぁ私の好みじゃないわね」

「ちょ、ちょっとみさき!!」

「いいんじゃない? じゃぁ行きましょうか? ……あんまり行きたくないけど……」

 そんな言葉を遺してすたすたと先に歩いていく女子。


「ご、ごめんね!! 悪気はないと思うんだ!!」

「え? あ、うん……えっと……」

 何が起こっているのか分からない俺たち三人はただそこに立ってることしかできずにいた。そんな俺に先ほどの女子が言った事を代わりに謝ってくれる吉田さん。


「えっと……あの子は?」

「あぁ……あの子は隣のクラスの町田岬まちだみさき。私の幼馴染ななんだ」

「そうか……。え? でも今日は……」

 俺の言いたい事が分ったのか、少しだけ吉田さんの表情が曇る。


「……うん。ね本当はあの人達苦手なんだ。相談したらついて行くからって言ってくれて……」

「「へぇ~……」」


「ねぇ!! そろそろ中行こうよ!!」

「あ、うん!! 今行く!!」

 建物の入り口から町田さんが大きな声で呼びかけて来た。それに吉田さんが返事する。


「いこ!!」

「え? で、でも……」

 俺達は顔を見合わせる。


「私が一緒に行きたいんだからいいの!! ね?」

「うぅ~ん……」

 再び見合わせると、ちょっと戸惑いつつも三人で頷きあった。

 そして吉田さんの後に続くように、プールのある建物へと静かに歩いていく。




 案の定というか、舘林を含めて俺たちの姿を見つけると表情が一変した。しかし直ぐに吉田さんへと近づいてくるとそのまま連行するように連れて行ってしまう。

 時間が少しだけ過ぎて、俺達は皆がみんな受付をすますと着替えるために中へと入っていく。勿論俺たちは一番最後になる様にはくのだけど、それを待っていたかのように中で舘林達数人が待っていた。


「おい陰キャ!!」

「え?」

「勘違いすんなよ!! 香澄は偶然お前らと一緒になっただけだからな!!」

「そうだぞ陰キャども!! つけあがるんじゃねぇぞ!!」

「クソが!! そのまま帰っちまえよ!! 本当に来るんじゃねよ!!」

 言いたい事だけ言うとそのまま更衣室を出て行った。


「……なんだあれ?」

「ださ……」

「まぁ、いつものことだろ?」

 俺たち三人は大きなため息をつきつつ、なるべく時間をかけて水着へと着替え、更衣室を後にした。



 まぁそのまま終わるわけがないのは知っていた。

 ことあるごとに俺達を――いや、何となく俺だけだと分かる――標的にした、イジリと暴言の狭間ギリギリの所を突くような態度を取られつつ、懇親会は時間だけが過ぎていく。


 男子は女子の水着姿に浮足立っていたり興奮したりしている奴もいるけど、女子達はそんな男子から遠ざかっていたり、トップカーストのやつらと一緒に俺たちの事を言いたい事だけ言って行ったり様々だ。


 俺達は慣れているから聞き流そうと努力した。努力はしたけど我慢の限界はある物で、さすがにもう限界で言い帰そうとした時――。


「あなた達いい加減にしなさいよ!!」

「そーだそーだ」

 腰を持ち上げようとした俺の前に、パレオ付きのピンク色の水着を身に纏いパーカーを羽織っている女子と、黄色のセパレート型水着を身に纏う女子が、舘林などとの間にスッと割って入ってきた。


「か、香澄……? 何だよ何もしてねぇだろ?」

「舘林君!! 少し……いえかなりあなた達の言っている事は気分が悪くなるわ」

「そーだそーだ」

 声の感じで、かなりお怒りな事が分るけど、その声はいつも凛としていて優しい感じの吉田さんの物で間違いなかった。そして相槌を打つヤル気の全く感じない声は、たぶん吉田さんの幼馴染の町田さんだろう。


「香澄にはかんけぇねーだろ? 本当のことを言って何が悪いんだよ!! そいつらいんきゃじゃねぇか!!」

「そうだ、クラスに陰キャはいらねぇんだよ!!」

 ツートップが吉田さんに言い帰す。

「そうよねぇ……キモいし」

「きゃはは、ホントそれな!!」

 それにつられるように声を上げ笑う女子数人。


――名前? そんなの知らん!! 興味がない!!

 などと声を上げる女子を見ながら考えていると、舘林達と吉田さんの言い争いがヒートアップし始める。


「何でそいつらをかばうんだよ!! 香澄はこっち側の人間だろ?」

「そうだ!! 香澄は俺達のどちらかの女になるんだから、そんな奴ら気にすんなよ!!」

「……いやよ……」

「あん!?」


――あぁ~……何か、どさくさに紛れて舘林のやつ吉田さんに告りやがった……。

 俺たち三人は既にスッと覚め始めて冷静になりつつある。ただ言い合っている奴らは言った事をはっきりと判別できる状態じゃないようだ。


「ぜっっっっったいに!! い・や!!」

「「はぁ!?」」

 思った以上に大きな声でそう宣言する吉田さんに、さすがの二人も驚いた様子。


「それに勝手に名前で呼ばないで!! 読んでいいなんて言ってないし!! ううんあなた達に呼ばれるのはもっと嫌!! 呼んで欲しいのは――」

「え? あ、おい……かすみ――」

 少しうろたえ始めるツートップ。


スッと大きく息を吸う吉田さん。

「好きな人だけなの!!」


「か、かす――」

「名前で呼ばないで!!」

「え? えっと吉田おまえまさか……」

「私は比嘉君が好きなの」

「何でそんな陰キャなんて……」

「俺たちの方が絶対――」


「あなた達のその態度を見て、感じて好きになってなると思う?」

「いやいや俺たちイケメンだし、人気あるんだか――」

「見る眼が無い人達なのね……」

「なっ……」

 クルっと俺たちの方へと振り返り、ニコッと微笑む吉田さん。


「行きましょう」

「え? あ、う、うん」

 その場に呆然と立ち尽くす人たちを振り向きもせず、俺達は他のクラスメイト達がいる方へと歩いていく。


「私の好きな人って……あなただから……」

「え?」

 小さな、本当に小さな囁くような声が、俺の隣を歩く女の子から聞こえた。

 スッと俺のから視線をそらすように顔を伏せた吉田さん。でも真っ赤に染まった耳だけは隠す事が出来なかったようだ。





 時は過ぎ、高校生になって初めての夏休みも終わりに近づいた頃――。


「やっぱりかわいいよね!!」

「うん。しかし驚いたなぁ……まさかこの子が吉田さんの家にいるなんて……」

「香澄って呼んでよ!!」

「あ、いやでも、まだ恥ずかしいし」

 居間に通されて床に座るとすぐ俺の元へとにゃんこダッシュしてくるもふもふ。


 

 ご覧いただければわかるかもだけど、俺達はあの後無事に御付き合いを始めた。


「付き合ってください!!」

「え? 俺!?」

「うん!!」

 足しげく通っていた公園で、いつもは直ぐに見つかるはずの子猫を探していると、首輪をつけた黒いモフモフを抱いた香澄が近づいて来た。

 まず吉田さんがいる事にビックリしたけど、その胸の前に手ギュッと吉田さんにしがみついている子猫にも驚いた。


 なんとこの公園は香澄の家から徒歩数分の所にあり、俺と子猫との出会いからずっと今までの事を陰から見ていたらしい。

 初めは本当に偶然見かけたようだけど、ネコ好きな事もあり、一緒に楽しそうにしている俺の事が気になりだしたのだという。


 そして、そのネコにエサなどをやっていたのも香澄で、情が湧いた香澄さんは子猫を迎え入れる為、両親を説得していた所だったのだ。


 ようやく両親が納得し、子猫を家へと迎え入れる事が出来たところで、俺に告白することを決意したと真っ赤に顔を染めながら話してくれた。


「あなたの優しさと、その笑顔が好きになりました……」

「本当に?」

「えぇ本当よ……。慎太郎も知ってるでしょ? だって――」



 『この世界は嘘が付けないのだから』

 

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