絶望魔法少女!
黒瀬
第1話|冴えない日常
ぴぴっ、ぴぴっ、ぴぴぴぴっ……。
うるさい目覚まし時計の音で目を覚ます。時間はいつも通り六時半を指している。未だ鳴り続ける目覚まし時計を止め、眠気に負けかけながらもベッドから起き上がった。そのまま鏡の前に立ち、鏡横に掛けてあった制服を着て部屋を出ると、がちゃり、音がした。玄関のある左側を見ると、鍵がまわされた様子。どうやら今日ははやく家を出ないといけなかったらしい。
(また今日も話せなかったな)
なんて考えながらリビングへ向かい、用意されていてとっくに冷めている朝ごはんを一人寂しく食べた。
ゆったり食べていると、あっという間に時間になった。何時も要らないと言っているのに用意されている弁当の中身を軽く確認してから鞄に入れる。それを持って誰も居ない部屋に向かって行ってきますと言っていつも通りの通学路を辿り、いつも通り八時二十分に学校に着く。仕度をして、席に着き早くも帰りの時間を待った。
退屈な授業を聞きつつ落書きをしたりしていたらあっという間に帰りの時間になった。今日は五時間の日だし、部活にも入っていないから早く帰れる。心のなかでガッツポーズをして軽く伸びをし立ち上がった。
一緒に帰れる程仲の良い友人なんていない私は一人で帰路を辿った。
がちゃり、鍵を回しドアノブを捻る。……あれ、開かない。再度鍵を回しドアノブを捻ると、開いた。閉め忘れたか、否、確実に閉めた。なら誰かが……、恐る恐る玄関に上がると、誰かが居る気配。怖いものの好奇心が勝りリビングに向かうと、私より十数センチ程背の低い男の子がゆったりとこちらを向いた。
「お帰りなさい、沙羅。今日はどうだった?」
コンプレックスでもある私の名前を呼ばれどきりとする。
こんな人知らない、赤の他人。なのにさも当然というような様子で飄々と話すから余計に怖い。怖くて、取り敢えず外の人に助けを求めようと身を翻すと、男の子の声は大きくなり、焦りからか早口になる。
「えっ、どこ行くの!? 待って、不審者じゃないよ、ボクはダリア! ごめんねビックリさせたよね……!」
「え? いや、あ、大丈夫です……、私は姫宮沙羅」
「うん、知ってる」
あまりの勢いに押され、私も自己紹介してしまう。でも、何故だか男の子……基ダリアは私のことを知っていた。そういえば先刻ナチュラルに名前を呼ばれた気が……。
「で、唐突なんだけど、君には魔法少女になってほしいんだ!」
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