シュレディンガーの猫【短編集】

甘木

 目の前に箱がある。



 綺麗に包装された大きなダンボール箱。


 不自然に道の真ん中に置かれたソレに私は立ち止まる。


 箱の中から「にゃー」と聞こえた。


 「あぁ、捨て猫か」

 

 私は箱に近づく。


 足音に反応したのか箱の側面でカリカリと爪を研ぐ音が聞こえてくる。


 「開けるからには拾わなきゃだよなぁ」


 そう1人で呟きながら貼ってあるテープを剥がしていく。


 このダンボール、所々染みになっていて少し汚い。


 「さてさて、どんな子がいるのかな……」


 そう言い箱を開ける。


 「にゃあ」



 「は?」



 子供、そう認識した時には私の喉笛は掻き切られていた。



 カラン、と得物かまが落ちる音がする。



 意識いのちが消える寸前、聞こえたのは猫の鳴き声だった。


 


 





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