私の嫌いな最頂点の幼馴染
キノシタ
第1話
小学生の時、聞いたことのあるな〜って歌がある。友達100人できるかな〜って絶対無理じゃん!って思う歌詞の歌。
高校に入学して半年。高校で出来た友達の数は1人。うん、あと99人なんて無理だし、絶対無理だし、自他認める陰キャだし。
なのに、この状況どうしたらいいの?
近いし!!!
めちゃくちゃ近いし!!!
目の前にいる女の子は頭がバグっているだろうか?それとも馬鹿なのかな?
「可愛い顔してるのに、なんで眼鏡してるの?」
はぁぁ?何を言っているのと言いたい!だって!だって!みんな、そう思うよね?
めちゃくちゃ可愛い子が地味で陰キャの私にこんな風な発言をするのは揶揄っているのか、頭のネジが飛び思考回路がぶっ飛んでいる人でしかない。
「眼鏡、取っていい?」
「無理!馬鹿なの?」
私に冷たい言葉を言われた陽キャ代表の佐倉凛が項垂れるように落ち込む。突然、変なことを言われ否定しただけの私は悪くないはずなのに私が完全に悪者みたいだ。
「ちょっと、落ち込まないでよ…」
「だって、ちーちゃんに馬鹿って言われた」
「えっ…(何で私の小さい頃のあだ名を知っているの?)」
飼い主に怒られてシュンとしている子犬みたいに落ち込む佐倉凛は私とは初対面でさっき初めて会話を交わした女の子だ。
突然、私の前に現れ、私の絵を褒めてくれて、急に私の顔を覗き込み、眼鏡を取ろうとする恐ろしい女の子。
佐倉凛のことは知っている。クラスは違うけど廊下で見かけたことあるし、何より私とは全く違う世界で生きている人間だ。
そう、私と正反対の陽キャという人種で私と永遠に接点がないであろう人種。なのに、その人種が私の目の前におり落ち込んでいる。
「ごめん…言いすぎた(納得いかない…何で私が謝ってるの)」
「私が勝手に眼鏡を外そうしたから…私の方こそごめんね」
「うん…」
「ねぇ、千紘っていつから眼鏡してるの?」
「はぁ?」
えっ、さっきはちーちゃんって言っていたのに急に呼び捨てに変わり、態度が仲の良い友達みたいな言い草だ。
「高校に入学してからだけど…」
私は頭をフル回転させ、佐倉凛を理解しようとしたけど無理だと判断し、仕方なく素直に答えた。小さい頃は視力が1.2あったけど暗い場所で漫画の読み過ぎてしまい、徐々に視力が下がり私は高校デビューならぬ眼鏡デビューをしたのだ。
「そっか。うん、でも眼鏡ありでも可愛い」
「はぁ?な、、何、言っているの!」
「千紘はずっと可愛いね」
もう意味が分からない。初対面の人に突然可愛いと言われ私の頭の中はパニックになり、パンクしそうで今にも口から煙が出そうだ。
佐倉凛のまるで私(陰キャ)を弄ぶような態度がムカつくけど私は疑問を口にする。
このままでは私は動けない。私は佐倉凛に顔を近づけられた時、驚いたせいで床にへたり込み腰を抜かしている。
そんな私に対し、佐倉凛は逃げないようになのか私の腕を掴み離してくれない。
「ねぇ、、何で私の名前を知ってるの?」
「何ででしょう?」
真面目な話をしているのに揶揄うような表情をされ腹が立つ。ちょっと顔が良いからって何でも許されるとは思うなよって言いたい。
「知らないし!」
「えー、私のこと覚えてないの…?」
「だから、知らないって!」
「佐倉凛って名前に聞き覚えない?」
「ない」
「そっか…」
あっ、また佐倉凛が落ち込み始めた。でも、このおかしな状況に必死に対応している私を褒めてほしい。
放課後、美術部の私はキャンパスに向かって1人で絵を描いていた。1人で黙々と絵を描いている時に佐倉凛が突然現れた。
私が所属する美術部は私を含め3人しかおらず、2人の先輩は只今、修学旅行中で…くそ!タイミング悪すぎる。
まるで狙ったかのように1人しかいない美術室に来て、私は佐倉凛に暴言を吐き落ち込ませた悪者になっている。
でも、いきなり私の名前を呼ぶし…
佐倉凛なんて本当に知らないし。
「あっ、そうだ。りんごって名前は覚えてない?」
「林檎?」
「うん。りんご」
林檎、リンゴ、アップルは違うか。りんご…あっ、そういえば幼稚園の時、親の転勤でいなくなった私の隣の家に住んでいた女の子のあだ名がりんごちゃんだ。
でも、おかしい。私の知っているりんごちゃん(5歳)は大人しくて、私と同じ陰キャの雰囲気がある女の子だった。
「本当にりんごちゃんなの…?」
「思い出してくれた⁉︎」
「まぁ…(今の姿と過去が全く一致しないけど)」
りんごちゃんが引っ越してから11年。月日は恐ろしい。私とは正反対の陽キャになり、私の前に突然現れた。11年ぶりの幼馴染が…
「久しぶりだね」
「うん…(この笑顔、なぜかムカつく…)」
「ずっと、会いたかった」
「そうなんだ」
「えー、反応悪いよ。11年ぶりだよ」
「そうだね」
「私のこと忘れていたし…」
11年という月日が長い。だからそんなの当たり前で当然だ。なのに、凛は悲しそうな顔をし拗ねる。性格は子供のままみたいだ。
「佐倉さん、こっちに戻ってきたんだね」
「佐倉…って。何で名前で呼んでくれないの?」
「えっ、久しぶりだし。無理だし」
「えっ…」
しまった…思わず本音が漏れてしまった。慌てて口を押さえたけど発した言葉は取り消すことは出来ず、凛がまた落ち込んでいく。
でも、これも仕方ないと思う。陰キャの私と陽キャの凛は住む世界が違う。
でも、めちゃくちゃ気になる。本当に私の知っているりんごちゃんなのかと。
「えっ、何?」
「中身が書き換えられているから、チップが埋め込まれているのかなって」
「何それ?」
私は凛の首元や頭を触り、凛の性格を変えたチップが埋まってないか確認する。
11年という年月があったとしても、私は全く変わってない。だから、凛の変化に納得でず凛が変わった理由を知りたかった。
「ちーちゃんってやっぱり面白いな」
「面白くないし…」
私の目の前でくすくすと笑う11年ぶりに出会った陽キャの幼馴染の【佐倉凛】。
久しぶりに会った幼馴染はなぜか今日から陰キャの私に付き纏い、私の平凡な高校生活と私の人生を狂わしていく。
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