夢の香りのする朝に

じぇっと

まだ夢が覚めない、淡い夏の朝に彼は消えた。

***

浮気をするでもなく、酒癖が悪いわけでもなく、私のことを殴るわけでもなく、ただ人に借金があるだけだった彼は私の大変短い人生の中で出会った最も良い男だった。

それまで薬物乱用者や私のことを殴る蹴る男しか性処理の相手としてこなかった私にとって彼は本当に新鮮だった。初めて彼とセックスをするとき、腿や肩にある痣を見た彼はとても悲しそうな顔をして私のことを抱きしめたが、私には彼のその時の感情を理解できず、なぜ抱擁されたのかまったく分からなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る