第111話 無力なままで
「どうやらその男は普通ではないようだね。それではこれはどうかな?」
ハバっちゃんが手をかざすと、怪盗ガウチョパンツが光に包まれた。
「暖かい……大きな力を感じる!」
怪盗ガウチョパンツが拳を握った。
ハバっちゃんから直接力を授かったんだね!
神様の力を授かるなんて凄い事だよ!
「う~ぬ。駄目だな」
ハバっちゃんがボソッと言った。
駄目?! なにが?
「はっ! とおっ!」
怪盗ガウチョパンツが気合を入れているけど何も起きない。
「ハバっちゃん。何も起きないけど、何が駄目なの?」
「力を与えたのだがね。すっと抜けてしまうのだよ。神の力を受け取る資質がない様だね」
「ハバっちゃんの力が偽物なんじゃないの? 光っただけとか?」
「失礼な奴め。これならどうだ!」
ハバっちゃんが僕に向かって手をかざした。
うにゃ~。
なんだかポカポカして暖かい力に包まれたのだ!
急に僕の体が黄金に光輝いた。
「どうだ。凄いだろ?」
「本当だ! なんかすごい力だ出せそうだよ」
「今日から貴様は神獣王アルタロネクタネブ・アバ・センタンクトロルテプ6世と名乗るがよい」
「神獣王! ありがとうハバっちゃん! あっ……」
僕の隣で怪盗ガウチョパンツがうなだれている。
しまった!
怪盗ガウチョパンツを鍛えるのが目的だったのに、僕だけパワーアップしちゃったよ!
「だ、大丈夫だよ怪盗ガウチョパンツ。他の方法で強くなろう!」
「ふっ、僕はなんて弱いんだ……僕に力があればテプちゃんに心配をかける事もないのにな……ははっ……」
ど、どうしよう……
「神からの忠告だ。強くなるのは諦めるがよい。出来ない事に時間を割くのは無駄だ」
「出来ないかどうかなんて決まってない! まだ頑張れるよ!」
「そう思うなら我が話す事はない。あとは注文を聞くだけだ」
「それじゃ。クリームソーダを一つ!」
僕は怪盗ガウチョパンツと一緒に喫茶店で休憩する事にした。
「もう駄目なのかな? 本当は分かっていたんだ。僕が出オチの咬ませ犬的な立ち位置だってね……」
「そんな事ないよ! 立ち上がってよ怪盗ガウチョパンツ! 諦めたら終わりだよ」
「諦めたら終わりか……でも諦めなくても終わりが見えない……永遠に抜け出せないんだよ!」
「大丈夫! 僕も一緒に頑張るから一緒に強くなろうよ!」
「ありがとう。もう少し頑張ってみるよ」
どうしよう。
元気づける為に一緒に頑張ろうって言ったけど、怪盗ガウチョパンツを鍛える方法が思いつかない。
いっその事、他の妖精に頼んで魔法少女にしてもらおうか。
……それも無理だな。
神様が無理だって言うなら他の人に頼んでも無理だよね。
そうだ!
神様が無理なら反対の立場にいる人に頼めばいいんだ!
僕は夕方に公園に行くことを怪盗ガウチョパンツに提案した。
一度お家に帰り、夕方になったので怪盗ガウチョパンツと一緒に公園に向かった。
いた!
僕の友達の魔王さんと
「魔王さん、条さん! こんばんわ」
「こんばんわ。よく来たなテプ」
「こんばんわテプちゃん。今日はお連れさんがいるみたいだけど、どうしたのかい?」
「この人を強くしてほしいんです。凶悪な敵と戦えるくらいに。魔王さんなら出来ますか?」
「無理だな」
ええええっ?!
いきなり否定された。
怪盗ガウチョパンツって、そんなに強くなる素質がないの?
「やっぱり僕では駄目なんだ。僕は役立たずのままか……」
「役に立ちたいなら役に立てば良いだろ。くだらない事で悩むな」
「酷いよ魔王さん。怪盗ガウチョパンツは真剣に悩んでいるのに!」
「僕も魔王さんと同じ意見ですよ。頑張り方を間違っていると思いますよ」
「条さんまで? 何で駄目なの?」
「愚か者! 今まで何を見て来たのだ? テプの主は敵を
「魔王さんの言う事は分かるけど……」
魔王さんの言っている事は分かるよ。
でも魔法の威力が強すぎて人間相手には使えない。
バルンシーさんの事も分かる。
戦う力は弱いけど作曲で活躍しているって知ってるから。
しず子さんだって戦う力はないけど、回復の能力で活躍しているからね。
戦う以外で活躍する方法がある事は分かっているよ。
でも……
「魔王さんの言っている事は分かるよ。でも怪盗ガウチョパンツは強くなりたいんだよ!」
「諦めろ。自分を知れ」
魔王さんが冷たく言い放った。
僕の気持ちは伝わらないのか……
「怪盗ガウチョパンツっていったかな。僕も悩んだ事があるけどね、自分のやりたい事と世間から求められる事は違うんだよ。君も大人なら、子供を困らせたら駄目だよ。魔王さんの言う通り、戦う力を持つ前に自分自身の事を理解しなさい」
条さんが落ち込む怪盗ガウチョパンツを励ます様に肩に手を置いた。
「自分自身を理解する? そうだな、子供を困らせるようでは大人失格だな。ありがとうテプちゃん。自分で解決してみるよ」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。一応人生の先輩がついていますからねぇ」
「そういう事だ。我が少しはマシな大人にしてやるさ」
条さんと魔王さんが怪盗ガウチョパンツの両隣りに立った。
うん、この二人に任せれば大丈夫だよね!
怪盗ガウチョパンツが強くなるところを見届けられなかったのは残念だけど、これで良かったんだと思う。
「じゃあね! あとはお任せします! 怪盗ガウチョパンツ頑張ってね!」
「おう!」
僕は三人に別れを告げて
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