第107話 クリスマス作戦失敗

 僕はパパさんと一緒にフラマ・グランデの限定フィギュアを購入して帰宅した。

 これでプレゼントの準備は完了だ。

 あとはクリスマス当日を待つだけ……なのはパパさんだけ。

 燐火りんかちゃんは謎の準備で忙しそうにしている。

 もうここまでくれば鈍い僕でも分かる。

 燐火りんかちゃんはサンタさんを捕まえるつもりなのだろう。

 でも目的が分からない。

 クリスマスは明後日だ。

 そろそろ目的を教えてくれても良いと思うのだけど……


燐火りんかちゃん、そろそろ何をするつもりなのか教えてよ。僕も協力しているんだからさ」

「どうしようかなぁ。敵をだますには味方からっていうからなぁ」

「だますって物騒だね。悪い事をしちゃだめだよ」

「悪い事はしてないよ。サンタさんに聞きたい事があるんだ。テプちゃんはサンタさんを知ってるよね?」

「し、知ってるよ。前に燐火りんかちゃんから聞いたからね。良い子にしてるとプレゼントくれるんだよね」


 僕は出来るだけ事情を知っている事を悟られないよう平静を装った。


「そうなんだよ。でもね、サンタさんはわたしが欲しい物をくれないんだよ。良い子にしてるのになぁ」

燐火りんかちゃんは今まで何をもらった事があるの?」


 僕が聞くと燐火りんかちゃんが今まもらったプレゼントを教えてくれた。

 全部女の子が喜びそうなプレゼントだね。

 パパさんはセンスが良いなぁ~。

 でも燐火りんかちゃんは喜びそうもないんだよね……


「それでサンタさんに何を聞くの?」

「何で欲しいプレゼントをくれないのか教えてもらうんだよ。あとはプレゼントが気に入らなかったら交換してもらうの」

「もしかしてサンタさんを拘束しようとしてたりする?」

「良く分かったねテプちゃん! 纏蝶てんちょうさんに交換してもらった拘束アイテムでサンタさんを捕まえるんだ」


 大変な事になった。

 このままではパパさんが影の拘束アイテムで捕まってしまう。

 何とかして燐火りんかちゃんの罠を把握して潜り抜けないと。


「僕も協力するよ! だから一緒に罠を作ろうね」

「うん! 頑張ろうテプちゃん!」


 僕は燐火りんかちゃんと一緒に罠を設置した。

 これで準備完了。

 あとはクリスマス当日にパパさんと一緒に罠をくぐり抜けるだけ。


 クリスマスの夜、予定通り僕は待ち合わせ場所の居間に向かった。

 パパさんは既に準備を終えていた。


「さぁ、プレゼントを渡しに行こうか」

「僕が先行して罠を確認するから、パパさんは指示に従ってくださいね」

「任せるよテプちゃん」


 僕は居間から出て階段の前まで来て足を止めた。

 ここには触れると拘束される魔法の罠が設置されているのだ。

 耳を立てて魔力感知に集中すると、赤外線トラップの様に魔力の糸が見えた。


「パパさん、右側を2段。そこで大股で跨いで左に寄って。そこでしゃがみながら3段進んで……」


 僕は次々にパパさんに指示を出してトラップを避けながら階段を上り切った。

 これで第一関門はクリアーなのだ。

 次の罠は燐火りんかちゃんの部屋の前に置いてあるマットだ。

 ここには纏蝶てんちょうさんから入手した影を伝って拘束するアイテムが設置されている。

 これは踏まなければいいだけだから避けるのは簡単だ。

 あとはドアノブに設置されている最終関門だけ。

 これに触れたら粘着魔法で拘束されてしまう。


「パパさん。僕がドアノブに掴まったら、僕ごとノブを回して下さい。あとは罠が仕掛けられているからマットを踏まないでくださいね」

「分かったよテプちゃん」


 ドアノブに触ると体がくっついて動けなくなってしまった。

 そしてパパさんが僕の体ごとドアノブを回して燐火りんかちゃんの部屋に入ろうとした。

 これでーー

 ガランガラン!

 急に大きな音が鳴り響いた。

 何が起きたの?!

 こんな罠が設置されているなんて知らないよ!


「まってたよサンタさん……あれっ、テプちゃんとパパ?!」


 しまった!

 燐火りんかちゃんに見つかってしまった……


「いやぁ、今日は冷えるから燐火りんかが心配で見に来ちゃったよ……ははっ」

「トイレに行ったついでにパパさんと戻って来ただけかなぁ……」

「何やってるのテプちゃん! せっかくの罠が台無しになったでしょ! パパも自分の部屋に帰って! 今日は大事な日なんだから!」


 燐火りんかちゃんが怒ってパパさんを追い返してしまった。

 僕は再度ドアノブに罠を設置する為に救出されたので部屋に戻った。

 残念だけどパパさんプレゼントを渡す事が出来なくなってしまったーー


 翌朝、燐火りんかちゃんが枕元のプレゼントを見て歓喜していた。

 さっそく机の上にフラマ・グランデのフィギュアを飾っている。


「テプちゃん! サンタさんは捕まえられなかったけど、欲しかったプレゼントをもらったよ!!」

「良かったね燐火りんかちゃん。今年は世界を救ったから特別だったんじゃないかな」

「そうだよね! 一緒に世界を救ったもんね。全部テプちゃんのお陰だよ!」


 僕は燐火りんかちゃんに抱きしめられた。

 全部僕のお陰って事は合ってるよ。

 だってプレゼントを選んだのも、枕元にプレゼントを置いたのも僕だからね。

 燐火りんかちゃんは気付いていなかったみたいだけど、毎年プレゼントは燐火りんかちゃんの部屋の押入れにパパさんが隠していたんだよ。

 今は僕のお部屋になっているけど、今回も押入れにプレゼントを隠していたんだ。

 本当はパパさんから渡して欲しかったのだけど、無事に燐火りんかちゃんにプレゼントを渡せてよかったよ。

 夜中にフラマ・グランデのフィギュアと目が合って怖かったからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る