第104話 大ピンチ

 塾の先生から出て来た悪魔を倒した僕達は紅鳶べにとび町に戻った。

 そしてしず子さんと増子さんと別れた後に纏蝶てんちょうさんのお店に行って嘆願石たんがんせきを渡した。

 燐火りんかちゃんが楽しそうにお店に並んでいる商品を眺めている。

 今日はどんなアイテムと引き換をするのかなぁ。


「テプちゃんは興味ないの? 攻撃用の魔法道具もあるわよ」


 急に纏蝶てんちょうさんに声をかけられたからビックリした。

 何度見ても慣れないんだよなぁ。


燐火りんかちゃんがいるから攻撃アイテムは必要ないですよ」

「でもテプちゃんも戦えた方が良いと思うけどね」

「僕だって戦えるなら頑張りたいけど、僕は燐火りんかちゃんより強くなれないと思うから。今の敵は燐火りんかちゃんでも苦戦するから、燐火りんかちゃんより弱い僕が戦っても役に立たないですよ。それより燐火りんかちゃんをサポートする方が大事なんです。僕は魔法少女をサポートする妖精ですから!」


 僕は纏蝶てんちょうさんから貰った腕輪を見せた。

 最初は魔獣にランクダウンしたから驚いたけど、この腕輪のお陰で燐火りんかちゃんのサポートが出来るようになったんだよね。


「テプちゃんが満足しているなら良いけど、強くなりたかったらいつでもおいで。魔法道具だけじゃなくて呪物も沢山あるからね」

「じゅ、呪物?! 考えておきます……」

纏蝶てんちょうさん! これに決めたよ!」


 燐火りんかちゃんが禍々しいペンダントを纏蝶てんちょうさんに渡した。


「これに決めたのね。これは一人前の陰陽師でも苦戦する結構強力な呪物よ。燐火りんかちゃんなら問題なく扱えると思うけどね。はいっ」


 纏蝶てんちょうさんがペンダントを包んで燐火りんかちゃんに渡した。

 燐火りんかちゃんは何者なんだろう?

 一人前の陰陽師が苦戦する呪物を普通に取り扱うなんて普通じゃないよね。

 それなりに長く過ごしているけど謎が多いんだよね。


纏蝶てんちょうさんありがとう。じゃあね」

「気を付けて帰るのよ」


 僕と燐火りんかちゃんは家に帰った。

 次の土曜日、今週はしず子さんが忙しいからお休みだ。

 ゆっくりできそうだなぁ~。


「テプちゃん起きて! 隣町に行くよ!」


 何故か燐火りんかちゃんに起こされてしまった。

 しず子さん達がいないのに隣町に行くの?!


燐火りんかちゃん、どうやって隣町に行くの?」

「今日はバスで行くよ」

「ええええっ! バスで行くって事はおこずかい使うって事だよね」

「そうだよ。狩りに行くのにケチったらだめだよ」

「狩り?! そんなに嘆願石たんがんせきを手に入れたいの?」

「うん。纏蝶てんちょうさんのお店で普通に買うよりバス代の方が安いもん」

「そ、そうなんだ……」


 そこまでして纏蝶てんちょうさんのお店の不気味なアイテムが欲しいのね。

 バス代払って隣町まで行ったのに嘆願石たんがんせきの悪魔が出てこなかったらどうしよう。

 少し不安だな。

 でも僕が行かなくても燐火りんかちゃん一人で隣町に行っちゃいそうだな。

 仕方ない、僕も一緒に行くか。


「分かったよ燐火りんかちゃん。嘆願石たんがんせきが手に入らなくてもガッカリしないでね」

「大丈夫だよ。ゲームと同じでエンカウントするかはランダムだからね。それじゃ、しゅっぱ~つ!」


 僕は燐火りんかちゃんと一緒にお出かけし、大通りのバス停からバスに乗り込んだ。


「次は暗渠町あんきょちょう市役所前。お降りの方はボタンを押してください」

「テプちゃん、ボタン押してみる?」

「ボタン? もう降りるの?」

「降りるよ。次の停車場所が目的地だよ」

「隣町って暗渠町あんきょちょうって名前だったんだね。変な名前だね」


 僕は降車ボタンを押した。


「意味は分からないけど。芽衣子めいこちゃんが好きな名前だって言ってた」

「そうなんだ。バス止まったね」

「降りるよ」


 燐火りんかちゃんがお金を払ってバスから降りた。


「さぁ、獲物を探しに行こう!」


 燐火りんかちゃんが走り出したので、僕は慌てて追いかけた。

 そんなに簡単に敵が見つかるかな?

 ……見つかった!

 商店街で大人が喧嘩していた。


「もう諦めるんだな。商店街で暴れるなど許されると思うな」


 ボロボロで足がプルプルしている怪盗ガウチョパンツが言った。

 諦めるんだなとか言ってるけど、怪盗ガウチョパンツの方が諦めた方が良さそうに見えるよ。

 相手は纏蝶てんちょうさんみたいにムキムキで強そうだよ。


「何言ってんだザコが! 俺は世界最強を目指すんだ! 全員ぶっ倒してやるからかかってこいや!」

「させるか!」


 男が通行人を殴ろうをしたのを怪盗ガウチョパンツが止めた。


「テプちゃん、あの人って悪人だよね。やっつけちゃっても大丈夫かな?」

「今の所人間だから駄目だよ。戦うのは悪魔が出てからね」

「でも陽翔はるとお兄さん負けそうだよ」

「何騒いでやがんだ! うるせえよ!」


 男が殴りかかってきた。


燐火りんかちゃん避けて!」


 何とか避ける事が出来た。

 子供を殴ろうとするなんて酷い大人なのだ!

 僕がやっつけて……やっつけ……攻撃手段がないよ!

 こんな事になるなら纏蝶てんちょうさんに攻撃アイテムをもらっておけばよかった。

 再び男が殴りかかってきた。

 今度は避けられそうもない。

 僕が盾になって守るのだ!

 覚悟を決めた僕の前に女の子が割り込んだ。

 危ないよ!!

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