第102話 オーバーキル

 今週の休日から隣町で嘆願石たんがんせきを使った事件の解決する事になったのだ。

 僕と燐火りんかちゃんはしず子さんが運転する車で隣町に向かった。

 とうぜん増子さんも一緒。

 魔法少女集結なのだ!

 隣町についてすぐ、町の中心にある学習塾に向かった。

 怪盗ガウチョパンツからの情報によれば、最近塾に通う子供たちに異変が起きているらしい。

 成績が悪い子が虚ろな目で勉強ばかりするようになるらしい。

 学校の成績が良くなっているから、やっと勉強に励む様になったって家族は気にしていないらしい。

 でも学校の友人達は塾に通って性格が変わった友人を心配していたので、怪盗ガウチョパンツに怪しい塾の事を教えてくれたのだ。

 真剣に友達の事を考えてくれるのは良い事だよね。

 普通だったら蝶のメガネをかけてガウチョパンツを履いた大人に相談なんて出来ないからね。


「ついたわよ。ここが噂の学習塾ね」

「しず子さん、どうやって調べるんですか?」

「どうしようかな~。私が小学生向けの塾に通うのは無理があるわよね~」

「僕も無理だぞ。一応高校生だからな!」

「わたしが行くよ! レアアイテムが待ってるからね!」


 燐火りんかちゃんが愚者ぐしゃの杖を具現化させて塾に入ろうとした。


「ちょっと待って燐火りんかちゃん! いきなり殴り込みみたいに突撃しちゃだめだよ! 最初は情報収集しないと!」

「どうして? 敵が待ってるんだよ」

「怪しいけど敵がいるとは決まってないからだよ。ここは体験入塾してみようよ。その方がいいですよね?」


 僕はしず子さんを見た。

 えっ?! どういう事?

 しず子さんが怖い顔でにらんでいる。


「テプの言う通りだぜ。しず子が親役で体験入塾しようぜ」


 オハコの一言が止めを刺した。

 僕とオハコはしず子さんに首根っこを掴まれた。


「私はそんな年齢じゃないです!」

「じゃぁ僕がやろうか!」

「増子が親役やったら若すぎて問題になると思うぞぉ~」

「駄目か!」


 増子さんはやる気だったがプレナに止められた。

 困ったなぁ。

 勢いで学習塾に来たけど、どうしていいのか分からなくなっちゃったよ。

 塾の前で揉めていると目の前を見た事がある少女が通った。

 あっ、芽衣子めいこちゃんだ!


芽衣子めいこちゃん、こんなところで何してるの?」


 燐火りんかちゃんが芽衣子めいこちゃんに声をかけた。


燐火りんかちゃんこそ何してるの? 私は塾に通う所だよ。折角の休日なのに遊びに行けなくてやんなっちゃうよ」

「そうなんだぁ。わたしは、この塾に侵入しようとしたたんだよ」

「侵入?! 体験入塾じゃなくて?」

「そういう言い方もあるみたいだね。こっそり入っても大丈夫かな?」

「こっそり入ってよいか分からないけど、塾生の紹介で体験入塾出来るよ」

「じゃぁ、それでよいかな。よろしくね」

「うん、こっちきて」


 芽衣子めいこちゃんと燐火りんかちゃんが塾に入ろうとしている。


「そういう事になったので僕も一緒に行ってきます!」

「任せたわよテプちゃん。何かあったらすぐに呼んでね~」

「危なくなったらすぐに助けにいくからなっ!」

「了解なのだ!」


 僕はしず子さん達と別れて、燐火りんかちゃん達を追いかけた。

 芽衣子めいこちゃんが手際よく事務員さんと話をして体験入塾の手続きを終わらせてくれた。

 さっそく英語の授業を受けられるようになったのだ。

 席に着いて待っていると、先生が教室に入ってきて授業が始まった。

 ほあっちょろけ~。ほにゃらむにゃ~?

 発音が難しくて僕には理解出来ないなぁ……

 でもちょうどいいかな。

 成績が悪い方が事件に巻き込まれる可能性が高いからね。

 燐火りんかちゃんも難しくて分からないよね?

 隣に座っている燐火りんかちゃんを見るを両腕を組んで反り返っていた。

 偉そうに上から目線で見守ってやるよって感じだね……


「そこのちみぃ。余裕そうだけど、これは分かるかな?」


 先生が燐火りんかちゃんを回答者に指名した。

 燐火りんかちゃんがスラスラと答えたので、他の塾生が驚いている。

 燐火りんかちゃんが勉強得意なのは知ってるけど、ここは勉強が出来ない振りをした方がよいと思うんだけど。


「簡単だね。塾って学校より難しい事を教えてくれるのかと思ってたよ」

「ちみ達にレベェルを合わせてあげてるだけだよ。僕は学生時代に1年間留学してネイティブと沢山話をしていたんだからね。学校の日本語英語とは違うのだよ」

「なら雑談をしてみようか」


 燐火りんかちゃんが流暢りゅうちょうに英語で話始めた。

 先生は途中で言葉に詰まり、たまに日本語が出ちゃっていた。

 誰がどう見ても燐火りんかちゃんの方が英語の実力が上だった。


「なんなんだ! 僕は留学で……ネイティブと……話をして……何でだ! 何で僕より話せるのだ!」

「留学してネイティブと話をした? わたしは毎日ネイティブの人に指示を出してるけど。留学しなくても毎日英語は話せるよ」


 燐火りんかちゃんが淡々と言った。

 そうだった。

 燐火りんかちゃんにとって英語は毎日普通に使う言語だった。

 昨日もボイスチャットで外国の人に指示を出しながらクエストを攻略していたよね。

 どうしよう。

 勉強が出来ない振りをするどころか、逆に先生を倒しちゃったよ……

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