第99話 お化け屋敷

 今日は健斗君、翔太君と一緒にお化け屋敷に行く日だ。

 僕は燐火りんかちゃんと一緒に待ち合わせ場所の公園に向かった。

 公園に着くと陽翔はるとお兄さんが手を振っていた。


「お~い! テプちゃん、燐火りんかちゃん! こっちだ!」


 もしかして陽翔はるとお兄さんが付き添いなの?

 何か事件が起きそうな予感がする……。


「早く乗ろうぜ。燐火りんかとテプは俺と一緒に後ろに乗ろうぜ。陽翔はるとお兄さんがお菓子を買ってくれたんだ」

「僕は当然助手席に座りますよ。軍師である僕のサポートがあった方が的確に侵攻出来ますから」

「翔太君、カーナビがあるから大丈夫だよ」

陽翔はるとお兄さん、その油断が命取りになるんですよ」

「分かったよ。サポートを頼むよ翔太君」


 翔太君は何を言っているだろう?

 陽翔はるとお兄さんは話を合わせているが、僕には意味が分からないよ。


「テプちゃん、翔太君はレイドクエストのノリで言ってるんだよ」

「なるほど、ゲームの話なのね」

「さて、出発するよ」


 全員車に乗った後、隣町に向かって出発した。

 隣町について駐車場に止めた後、お化け屋敷に向かった。

 お化け屋敷は商業ビルの最上階のイベントスペースにあった。

 お祭りでもないのにお化け屋敷をするなんて珍しいな。

 既に大勢のお客さんが並んでいた。

 何でわざわざ怖い思いをしようと思うんだろうね。

 僕にはわからないや。


「さぁ、僕達の番がきたよ。みんなが怖くない様に僕が先頭を歩くからね」


 陽翔はるとお兄さんが先にお化け屋敷に入ったので、僕達も後に続いた。

 どんな怖い思いをするのだろう。

 ドキドキしながら暗い室内を進んだ。


「きゅぉああああっ! けはっ! 大丈夫かみんなはああああっ!」


 首が伸びる人とか白い服を着た女の人を見た陽翔はるとお兄さんが奇声を上げている。

 目の前に狂った人がいると冷静になれるんだね。

 せっかくのお化け屋敷が台無しだよ……。


陽翔はるとお兄さん面白れぇな」

「そうですね。ここまでうろたえる大人を始めてみましたよ」

「焼いても平気なお化けでないかな?」

「焼いたら駄目だよ燐火りんかちゃん。でも翔太君が怖がらないのは意外だったなぁ」

「僕がお化けを怖がるはずがないでしょ」

「何でだ? 翔太は俺と違ってケンカ弱いだろ」

「健斗君の言う通りかな。私は火炎魔法が使えるから大丈夫だけど、翔太君はお化けが出たらどうするの?」

「分かってないなぁ。いいですか。霊は実体がないんですよ。だから物理的に現実世界に干渉出来ない霊なんて恐れる必要はないんですよ。霊が何かするには、勝手に恐れて精神的に影響を受けた人を使う必要があるんですよ。だから誰も恐れなければ何も出来やしないのさ!」


 翔太君がカッコつけながらお化けを怖がらない理由を説明したくれた。

 そういうものなんだ。

 僕はお化けとか妖怪を怖いと思うけどなぁ。


「翔太は理屈っぽいんだよ。難しい事を考えなくても、お化けがなんかして来たらガツンと言ってやればいいんだよ!」

「担任の江原先生の真似して言ってみようよ!」

燐火りんかちゃんが江原先生のモノマネ出来るとは思わなかったよ」

「テプちゃんもモノマネ頑張るんだよ。毎日授業見ているから出来るでしょ?」

「出来ないよ~。でもみんながお化けとか妖怪を怖がらなくて安心したよ」

「妖怪?!」


 翔太君が急に震え出した。


「どうした翔太?」

「震えてるけど大丈夫?」

「僕なんか変な事言ったかな?」

「よ、妖怪なんて聞いてないですよ! アイツらはダメだ! 霊なんかと違って妖怪は実在するんですよ! 妖怪は人間では太刀打ちできないんだぁ!」


 翔太君が急に走り出した。

 急に走ったら危ないよ!

 翔太君が前を歩いていた陽翔はるとお兄さんにぶつかってしまった。


「へやぁああああっ! 背中に何か! 何かがあああああ!!」

「感触がある! こいつは霊じゃなくて妖怪だあああああああっ!」


 陽翔はるとお兄さんと翔太君が気絶してしまった。

 どうしよう?

 他のお客さんの迷惑になるよね。


「俺が店員呼んでこようか?」

「任せるよ健斗君。わたしが二人をみているから」

「僕も燐火りんかちゃんと一緒に二人を見てるよ」

「分かった。待ってろよ」


 健斗君が店員さんを呼びに行った。

 静かだな……。

 陽翔はるとお兄さんと翔太君が黙ったからなのだろうか、不気味な空気を感じる。

 僕も怖くなってきちゃったのかな?

 ……違う。

 これは邪の気だ!

 僕は周囲を見渡したが怪しい物は見つからなかった。

 目に頼ってはダメだ。

 意識を集中して邪の気の出所を探る。

 そこだ!

 僕は壁を指差した。


燐火りんかちゃん、そこに敵がいる」

「敵? 何も無いけど?」

「壁をよく調べてみて」

「分かったよ」


 燐火りんかちゃんがカーテンをめくると扉が出たきた。


「スタッフルームみたいだね。勝手に入っても大丈夫なのかな?」

「注意されるかもしれないけど、邪の気を放つ場所を放置出来ないよ」

「分かったよテプちゃん。入ってみよう」


 燐火りんかちゃんが扉を開けた。

 この先に何が待ち受けているのだろう?

 僕と燐火りんかちゃんは恐る恐る扉の先に進んだ。

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