第95話 デリカシーがない?!

 昨日は七不思議騒動で大変だったなぁ。

 今日の放課後は怖い話なんて忘れて人助けをするのだ!

 僕と燐火りんかちゃんは放課後に喫茶店に立ち寄った。


「いらっしゃ~い」


 何故か土偶が出迎えてくれた。

 何してるんだろうハバっちゃん。


「ハバっちゃん、お留守番してるの?」


 燐火りんかちゃんがハバっちゃんに問いかけた。


「お留守番ではない。バイトと言う役職に就任したのだ。食事をするにはお金が必要なのでな」

「働いているの凄いね。ハバっちゃんは大人なんだね」

「そうなのだ。働かざる者食うべからずだ!」


 そ、それでいいのかな?

 ハバっちゃんは神様なんだから、お供え物をもらえば良いと思うのだけど……

 本人が納得しているなら問題ないのかな?


「ところで増子さんは来てる?」

「お嬢様なら学校ですよ。いつも通りであれば15分ほどで帰宅されますよ」

「お、お嬢様って呼んでるんだ」

「一応雇われている身だからな。後ろの席なら空いてるから、気にせず待つがよい」

「分かったよ。燐火りんかちゃんも座ろう!」

「うん」


 僕は燐火りんかちゃんと一緒に座って増子さんを待つことにした。

 10分後、予想より早く増子さんが帰ってきた。


「お疲れ! 遊びに来てくれたんだね燐火りんかちゃん、テプちゃん」

「うん、人助けをして善の気を集めるのが魔法少女の使命だからね」

「敵を倒してレアアイテムゲットだよ!」

「そうだよな。僕達は魔法少女だから人助けしないとね。でも倒す敵もレアアイテムも出ないと思うぞ」

「それは分かってますよ。燐火りんかちゃん以外は……」

「なんでなの? 敵は勝手に出てくるものでしょ。この前の鉱魔こうまとか出てこないの?」

「鉱魔は大賢者アクイアス・セッテが捕まったから出てこないよ」

燐火りんかちゃんは、何でそんなに戦いたいのか?」

「火炎魔法が最強だって証明する為だよ! ブオッって焼き払うの!」

「物騒だから止めようよ。そろそろ可愛い魔法少女に戻ってみないかい?」

「嫌!」


 燐火りんかちゃんがそっぽを向いてしまった。

 戦う相手がいなくなったのだから、纏蝶てんちょうさんに改造された変身ブローチを元に戻しても良いと思うんだけどな。

 そんなに魔法少女になるのを嫌がられると悲しいよ。


「テプちゃん、燐火りんかちゃんが嫌がっているから止めようよ。魔法少女は強要するものじゃないよ。好きな人がなれば良いんだよ。僕みたいにね」


 増子さんが魔法少女の様な姿に変身した。

 事情を知らない人が見たら魔法少女だと言うだろう。

 でも僕は気付いている。

 全く魔法力を感じない事に……


「凄いね! プレナちゃんがいなくても変身出来るようになったんだね」

「そうなんだよ。最近のプレナは一人で瞑想めいそうしてるんだ。近いうちに新しい力を身に着けられるかもしれないな。はっはっは!」


 増子さんが嬉しそうに笑っている。

 プレナはサボっているだけなんだけどね。

 嬉しそうな増子さんを見ていたら、魔法じゃなくて超能力を使っているとは言えない。


「人助けをするのは良い事だな。新たに得た超能力を大いに発揮するがって何をする?!」


 燐火りんかちゃんが余計な事を言いだしたハバっちゃんを愚者ぐしゃの杖でつついた。


「余計な事を言うから燐火りんかちゃんにつつかれるんですよ」

「何だと! 察しが良いから私を消すつもりか?」

「そんな物騒な事をしませんよ」

「ハバっちゃんはデリカシーが足りないんだよ」

「デリカシー?! それはどういう能力なのだ?」

「僕達にとっても未知の能力ですよ。僕もよくデリカシーが無いって言われるからね」

「そうなのか。良く分からないけど、私はデリカシーが足りないだけだから、デリカシーが無いテプ殿よりはマシという事か」

「ぷっ。テプちゃんハバっちゃんに負けてる!」

「細かい事は気にするな! テプちゃんはデリカシーが無くてもいい奴だ!」


 増子さん!

 全然フォローになってないよ!

 どうせ僕はデリカシーがない妖精ですよ~!


「出発するよ。人助けに行く時間がなくなるからね」

「そうだな。出発だ!」

「大魔導士出撃~!」

「またのご来店を~」


 僕達は一緒に困っている人がいないか町中を回った。

 平和だな~。

 困っている人は殆どいなかった。

 荷物が重くて困っている人が一人だけいたけど、増子さんが超能力で解決しちゃったから僕達の出番はなかった。

 凄いな超能力。

 もう魔法必要ないかもしれない……

 便利すぎて、ちょっと嫉妬しちゃうよね。

 本当は魔法少女だって同じ事が出来るのになぁ。


「あら~っ、魔法少女の活動中だったのね」


 あっ、しず子さんだ!


「そうだよ。増子さんが解決しちゃうから、全然活躍出来ないけど」

「活躍を奪ってゴメンな」

「謝らなくて大丈夫ですよ。燐火りんかちゃんは重い物を運べないでしょ」

「テプちゃんの意地悪~」

燐火りんかちゃんは活躍したいの?」

「うん」

「それなら良い話があるわよ。仕事を頼みたいんだけど、お願い出来るかな?」

「テプちゃん、やってみよう!」


 燐火りんかちゃんがはしゃいでいる。

 なんの仕事だろう?

 しず子さんの事だから安全なお仕事を選んでくれるよね。

 燐火りんかちゃんがやりたそうだから、僕も頑張ってみようかな!

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