第47話 魔法少女登場!

 今日も僕と燐火りんかちゃんは下校途中に喫茶店に向かっていた。

 しず子さん、増子さんと魔法少女の活動をする為だ。

 魔女の始祖を倒したから魔女は現れない。

 だけど、善行を積んで聖の気を集めて紅鳶べにとび町をもっと平和にしないといけないからね。

 あれ、大通りが騒がしいな。

 何で街の人が全力で走って来ているんだろう。


「逃げろ! 大通りに猛獣が出たぞ!」


 走り去る人たちの一人が叫んだ。

 猛獣?

 どこかから逃げ出したのかな?

 近くに動物園はないのになぁ。

 僕を嫌っているチーターさんじゃないよね?


燐火りんかちゃん、行ってみようか?」

「うん、敵が登場したかもしれないからね」

「敵なんていないよ。もう魔女は現れないんだよ」

「そうなんだ。結局魔女の始祖さんもアイテム落とさなかったからね。敵が出てきて欲しかったなぁ」

「なに言ってるの? 平和が一番大事だよ。さぁ、行こう」


 僕は猛獣がいると言っていた大通りに向かって走った。


 ゴウォォオオッ!


 大通りにいたのは猛獣ではなかった。

 少し黄色みがかった銀色に輝く狼だった。

 体の表面は金属の塊の様に角ばっている。

 ぬにゅぬうん。

 意識を集中して魔力を感知したが、謎の生物から魔力を全く感じなかった。

 何だろうこの生物は?

 燐火りんかちゃんは動物に詳しいから知ってるかな?


「鉱物の塊で出来た狼みたいだけど、ああいう動物って知ってる?」

「知っているはずないよ。テプちゃんは鉱物で出来た狼が普通の動物だと思っているの?」

「魔力を感じないから普通の動物だと思っちゃった」


 う~ん、燐火りんかちゃんも知らない生物か。

 なんだろうな。


「そこまでよ鉱魔こうま!」


 中学生だろうか、3人の少女が現れた。

 子馬?

 僕には狼に見えるのにな……って、そんな場合じゃない!

 危険だから逃げる様に言わないと。


「危ないから逃げて!」


 僕は逃げる様に呼びかけたが、三人の少女は逃げずに水晶の様に輝くたまを天に掲げた。

 太陽の光を受けてたまが輝いたと思ったら、それぞれのたまから光があふれ出して少女達を包んだ。

 濃い青の光、水色の光、そして虹色の光。

 僕の魔力感知能力に反応がある。

 これは魔法の力だ!


いやしの戦士! コスモオーラ!」

智慧ちえの戦士! アクアオーラ!」

「希望の戦士! エンジェルオーラ!」


 魔法のステッキを持った3人の魔法少女が現れた。


燐火りんかちゃん、燐火りんかちゃん! 魔法少女だよ! 本物の魔法少女がいた!!」


 僕は思わず叫んでしまった。


「テプちゃん、魔法少女ならいるでしょ?」


 燐火りんかちゃんが呆れた顔をしている。

 あっ、そうだった。

 でも忘れていても仕方ないよね?

 僕達の仲間に正統派の魔法少女はいないんだもん!

 燐火りんかちゃんは大魔導士で、しず子さんは魔法お姉さん、増子さんは魔法が使えない格闘家って感じなんだよなぁ。


「ギャラクシアン・ヒール!」


 コスモオーラと名乗った魔法少女が両手を交差してステッキを掲げると、謎の生物によって傷ついた人たちの怪我が治っていく。

 魔法を使ったコスモオーラを邪魔だと思ったのだろう、謎の生物がコスモオーラを攻撃しようとした。


「大人しくしなさい! ウォーター・ウイップ!」


 今度はアクアオーラと名乗った魔法少女が水で出来たむちで謎の生物を攻撃した。

 ビシッ、バシッ!

 謎の生物を叩いて動きを封じている。


「今だ! エンジェリック・スメルティング!」


 エンジェルオーラと名乗った少女が、動きを封じた謎の生物目掛けて魔法の光を放った。

 魔法の光が直撃すると、謎の生物の体が溶けて光り輝く鉱石に姿を変えた。


「パイライト・コア回収完了!」


 コスモオーラが現れた鉱石を手に取った。


「凄かったね燐火りんかちゃん。あれ、どうしたの燐火りんかちゃん?」

「悔しいよぉ!」


 燐火りんかちゃんが叫んだ。

 他の魔法少女の活躍をみて悔しいと思ってくれたんだね。

 嬉しいなぁ。

 他の魔法少女と出会って、燐火りんかちゃんも魔法少女としての自覚が出たんだね。


「今からでも遅くないよ。僕と一緒に魔法少女を目指そう!」

「何言ってるのテプちゃん? わたしは大魔導士志望だから!」

「えっ、なら何を悔しがっていたの?」

「だって! わたしが敵を倒しても何も出ないのに、あの人たちが倒したらアイテムが出たんだよ!」


 そっちかーい!

 アイテムドロップで悔しがっているとは思わなかったよ!

 でもこの魔法少女たちはなんだろう?

 魔力を感じたから魔法少女なのは間違いない。

 だけど僕達と同じ妖精が傍にいないのだ。

 魔法王国アニマ・レグヌムと関りがある魔法少女ではないのは明らかだ。

 僕達以外に魔法を使える存在がいるとは思えない。

 それに「こうま」って何だろう?

 僕が知らない謎の生物だった。

 考えても良く分からないから、謎の魔法少女に聞いてみようかな。

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