第46話 お別れ?!

「よくやったな。さすが我がライバルだ。やはり、お前を倒せるのは我だけだな」


 魔王がドヤ顔で言った後に去っていった。

 元敵だったけど、後で仲間になった人が言いそうなセリフだなぁ。

 そもそも魔王とは戦ってすらいないんだけどね。


「今回は少ししかお役に立てなかったね。次に会った時に借りを返すよ」


 怪盗ガウチョパンツが去っていった。

 うん、次こそ借りを返してね。

 いつも役に立っていないからね。


「じゃ、俺達も帰るぜ。早くゲームやりたいからさ」

「そうですね。次のアップデートまでにレベルを上限まで上げておきたいね」


 健斗君と翔太君も下山していった。

 しず子さん、増子さん、オハコ、プレナの4人がロボットから降りて僕達の元へ帰ってきた。


「大変でしたね~。ロボットで戦う事になるとは」

「俺様が説明書を読みながらナビゲートしたお陰だな」

「しず子さんの機体はオハコ殿が動力にならなくても動いたんだな」

「なに言ってんだよ増子。普通に動くだろ? メインエンジンを起動したらモニター右下のエネルギーゲージが切れるまで動くんだぜ」

「その通りですよ。エネルギーを三分の一すら使う前にやられちゃいましたけどね~」

「どういう事だプレナ?」

「たぶん機体が違うからだ。A7110ナイトは俺っちが魔法力を送らないと動かないんだよ」

「なぁ、プレナ。お前サボる為に嘘ついてるだろ?」

「嫌だなぁ。俺っちを疑うのかい? 同級生を疑うなんて酷いなぁ」

「同級生だから疑うんだよ! プレナは怠け者で嘘つきだろ」

「違うよ。俺っちは怠惰たいだ虚偽きょぎを申請しただけだからさ」

「プレナは怠けていないし、嘘をついていないって言ってるから信じてあげようよ」


 それでいいのか増子さん。

 怠けたとも嘘をついたとも言っていないが、怠惰たいだ虚偽きょぎを申請しているのは同じ意味だって分かるでしょ!


「まぁ、増子がいいなら気にしないよ……」


 オハコが引き下がった。

 流石にツッコミを入れづらかったのだろう。

 増子さんに恥をかかせる事になるからね。

 でも、大丈夫かな。

 増子さん高校生なんだよなぁ。

 素直なのは良い事だけど、悪い人に騙されないといいな……


「エピックマッスルの皆さんを呼びますね。ロボット壊しちゃったから謝らないとね~」

「そうだな。増子、A7110ナイトを壊したから謝らナイト」

「お詫びにふざけているプレナをあげればいいんじゃないか? プレミアム・ナイトのプレナだってさ」

「それは無理があるよオハコ。プレナはどう見てもタヌキにしか見えないんだから」


 しず子さん、増子さん、オハコ、プレナの四人が楽しそうに話している。

 だけど、僕の気持ちは沈んでいくだけ。

 何故なら、燐火りんかちゃんとのお別れの時が近づいているからだ。

 魔女の始祖プロパガンダを倒したので、もう魔女が現れる事はないだろう。

 それは僕がこの世界に留まる理由が無くなった事を意味する。

 お別れなんだよ……僕は燐火りんかちゃんとお別れするんだよ……

 僕は燐火りんかちゃんの方を向いた。

 背後には大きな槍で串刺しになった純白のA7110ナイトと、傍で片膝をついた漆黒A834闇夜がある。

 激戦を終えて大破したロボットを背景にたたずむ僕と燐火りんかちゃん。

 ロボットアニメの最終回の様だな……


燐火りんかちゃん、これで僕の役目も終わったね」

「そうだね。お家に帰ろうか?」


 僕は首を振った。


「ゴメンね燐火りんかちゃん、役目を終えた妖精は帰らなきゃいけないんだよ」

「そうなんだ……」

燐火りんかちゃん、今までありがとう。元気でね!」


 僕は燐火りんかちゃんの前から走り去った。

 言いたいことはもっとあった。

 でも泣いて話せないと思うから。

 燐火りんかちゃん、短い間だったけど楽しかったよ。

 僕は下山して、燐火りんかちゃんと初めて出会った公園から魔法王国アニマ・レグヌムに戻った。

 そして……パパが激怒した!


 ーー翌日の公園。


「僕はアルタロネクタネブ・アバ・センタンクトロルテプ6世。魔法王国アニマ・レグヌムの王子さ! 魔法少女になって欲しいんだけど、僕と契約してくれないかな?」


 僕はベンチに座る少女に声をかけた。


「何してるのテプちゃん? 故郷に帰ったんじゃないの?」

「一時的に帰ったような気がするなぁ」

「もうテプちゃんの部屋はないよ。今度は庭に犬小屋を用意するから」

「何でだよー。僕が戻ってく来て欲しいって思ってくれなかったの? そんなに直ぐに片づけないでよ!」

「本当は片づけていないよ。どうせすぐに帰ってくると思ったから。どうせ使命を放り投げて帰ったから、パパに怒られたんでしょ」

「何で知ってるの?! パパに怒られたよ! 魔女の始祖プロパガンダを倒した事はほめめられたけどさ、善行を積んで聖の気を集めるのが使命なのにサボるなって!」

「そんな事だろうと思った。さぁ、帰ろうよ。私達の部屋に」

「うん」


 僕は帰宅する燐火りんかちゃんの後ろについて行った。

 魔女は倒したけど、僕達の冒険は始まったばかりだ!

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