高機動獣兵
パリアン少尉を騙り行っていたネイナート基地との通信を一方的に切ったカイルはサーデュラスを駆って空を一文字に切り裂きまっすぐにネイナート基地へと迫っていく。
基地の建物の大半が誘導弾の射程に入ったあたりで機体とトランスポーターの全ての火器の管制を起こす。
「バルーノのやつは、一番大きな建物にエルスターがいると言っていたな。」カイルは基地内にある建物を大きなものから順に機体とトランスポーターに積んである誘導弾の目標に据えていく。
「発射。」十分に基地へと近づいてから短い言葉と共にありったけの誘導弾を一斉発射し撃ちつくす。残す意味など全くない。
サーデュラスの両肩とトランスポーターに懸架された複数のランチャーから発射された誘導弾が渡り鳥の群れのように規則をもって並んで飛び、
立て続けにネイナート基地に襲い掛かり、
突き立ち、
破壊と悲鳴の災禍を上げる。
カイルはトランスポーターの高度を落とし、武装が空になったトランスポーターを投げ捨てる様に無雑作に放棄してネイナート基地のど真ん中に降り立った。サーデュラスの四つの脚が地面に降り立った感触をとらえるとカイルは即座に装輪での地上での戦闘機動へと移り露天駐機されている
「さすがは大型基地。駐機されている獣兵の数も多いな。」確認できるすべての獣兵を無力化し当座の脅威を排除したカイルは、エルスターがいるであろう一番大きく目立つ建屋へと目標を変えて、すでに誘導弾で燃え盛っているその建物の内部目掛け擲弾を執拗に撃ちこんでいく。
「エルスター本人を確認して始末できれば一番いいのだが欲は言ってられん。これですら迎撃が始まるわずかな時間しか無理だろう。」基地の状況を確認するため全回線をオープンにしてある通信ではネイナート基地の各部署間の混乱した通信が流れているだけだった。その聞き取りにくさ極まる混線の中に指揮所が壊滅と言う通信が乗った。
「指揮所は潰せたか?」カイルはその怒号が交わされている通信に耳をそばだてる。
「会議中だったエルスター指令や中将以下の安否は!安否は!」通信の相手を決めず、ひたすらに部隊幹部の安否を尋ねつづける男の声。
「不明!ただし会議室は誘導弾の直撃を受けた模様!」
「!」誘導弾が会議室に直撃したと言う情報を得たカイルは初期の目標であるエルスターを始末できたものとし、大きな建物に見切りをつけて破壊目標を
「ツァリアス、突撃機銃だけとは軽装だな。ゲート警備にでも配置されてるやつか?」敵機を一瞥して状況を推察すると即座に突撃機銃でもってそのツァリアスを吹き飛ばして黙らせる。続けて別の角からまたツァリアスが一機飛び出してくる。その敵機は周囲を確認しようとする行動を一手はさんで頭部を回す。
カイルはその一手の内にツァリアスを横から突撃機銃で撃ち抜き始末する。
「指令部の在る基地にしては警備が甘くあるか。散発的な。」主要基地を突っついた手前、虫が湧いて出るほどに
「主要基地の割には稼働状態の
あまりもの拍子抜けな迎撃に罠を疑い、レーダーをもって周囲を入念に索敵するカイルの視線の先で離陸する何かが3つあった。
「輸送機?いや、それとしては小さい。連絡機か?」カイルは見えたシルエットの厚みのなさからそれを航空機かと推測する。その3つの“何か”は大きく旋回をすると機首をカイルへと向ける。
「旋回してこちらへ。向かってくるか!?」それらに戦闘意思があると感じたカイルは迎撃のためにサーデュラスを後ろに下げて燃え上がる建屋と建屋の間へと入れる。直後建屋の壁ごと周囲の地面が爆ぜる。
「この音、衝撃。この弾は航空機のものではない。これは、
「空を飛ぶ、薄いシルエット。
敵を視認するために。
出来る限りサーデュラスの首を上げ空を舞う敵機をにらむ。
空を飛び交う3つの機影
「間違いない。あの姿はガズロベルダ、ガズロベルダだ。それが3機。1機は色がおかしい?白い。あれが指揮官か?。いずれにせよ厄介な!」
高機動型の
ガズロベルダはサーデュラスの様な一般獣兵が重火器などの兵装を積む上半身背部に武装の代わりに高推力のバーニアと翼、さらには機首をも兼ねさせた専用の飛行用ユニットを装備しており、4脚を畳み込み上半身を前屈させその背部ユニットをフードの様に頭にかぶることで航空機のような空力形状となり高速移動をすることができる。
単騎での離着陸と飛行を可能とした、いままでの
それがガズロベルダという
「空を移動できることが重要視された分構造が脆くもあるが。下手に飛ぶものを追い回すとこちらが振り回される。引きずり下ろしたいところだ。」カイルはガズロベルダのスペックと特徴を頭に広げながら勝ちにつながる筋を手繰る。
「もっと煙がいるな。地を這う煙幕ではない。沸き立つように、空に突き立つほどの燃え上がる煙が。」カイルは空を鋭く飛び回るガズロベルダを引きずり下ろすために火と煙を使うことにした。上空から襲い掛かるガズロベルダの機銃を、基地の建物を盾にしていなしつつ擲弾をそこここの建物へと撃ちこみ火災を広げることでガズロベルダのとぶ自由な空を削っていく。
「破壊され続ける自分の家を見て焦れろ。そして降りて来い。」カイルは広い場所で機体をわざと停止させ銃を振り回してガズロベルダを挑発する。手近に見えた軍用バイクを前脚で高く蹴り上げ、それを機銃で打ち抜き爆発させてみせさらに空を飛ぶ敵を煽る。それに反応してか1機がカイル目掛けて機首を向ける。
「機銃を撃つタイミングがわかりやすいのも欠点か。飛行形態では機銃の配置が固定される弊害だな。」カイルは機首を向けるガズロベルダの進行方向と垂直になるように機体を滑らせガズロベルダが放つ機銃の斉射を悠々と回避して転回し、機体を反転させると攻撃してきたガズロベルダの背後を取って撃破を狙って射撃する。しかし、カイルの弾はかすりすらもせずにガズロベルダの下を通過していく。
「仰角を取った射撃は上が見えない分。狙いが安定しないな。」
「かといって距離をとったらば偏差がきつくなる。」
幾度も撃たれる空からのガズロベルダの機銃をこともなげにかわし続けるカイルにしびれを切らしたのか先ほどから執拗にカイルを狙い始めていたガズロベルダが高度を下げてくる。カイルはそれを見てガズロベルダが地上に降りると直感し、奴が飛行形態から
「絶妙! やはり、色違いは腕が一つ違うか!?」好機をふいにされたカイルは白いガズロベルダを一瞥し舌を打つと、獣兵形態に変形し着陸した方の敵機へと注意を向ける。
「近づきさえすれば上の奴らもそう易々とは撃てまい。」地に降りたガズロベルダは自由に動くようになった突撃機銃をカイルへと向けまっすぐに迫ってくる。
「地面での勝負ならばこちらに分がある。」相手の銃が起き上がるとカイルは機体の進路を斜めに曲げる。
「銃の追従が来る。」カイルの機動を正確に追いかけてくるガズロベルダの銃口。その動きを読み機体を左右に切り返し敵の機銃のロックを躱しながら接近していく。一連の接近の中、カイルはあえて斜め回避の初動をワンテンポ遅くしてガズロベルダの攻撃を誘う。つられてガズロベルダが銃を発砲してくるもそれはカイルの意図通りであり急加速をしたサーデュラスの横を過ぎ去りむなしく空を走っていく。
発砲の反動で体勢が崩れたガズロベルダは機体を止めた。姿勢を立て直すため止めざるを得なかった。ガズロベルダのパイロットは急停止の反動で機体がつんのめり傾いでいる危険な状況だと言うになおもカイルに銃を向けようとする。
「脚の軽量化の弊害か。急停止からの姿勢回復が遅い。」カイルは突撃機銃の照準を悠々とガズロベルダの上半身にある操縦席へと定める。そのカイルの視界の端に白いガズロベルダが引っかかる。
「奴め、来る!。」危険を感じてカイルは攻撃をやめ狙っていたガズロベルダへと機体を寄せ、白い機体の銃撃を妨害する。白い機体は機銃を向けただけで射撃をせず二機の上を通過していった。カイルは上空からの攻撃を抑制するため、寄せて近くなったガズロベルダを捕獲しようと脚を上げガズロベルダに絡めに行く。ガズロベルダもカイルのサーデュラスを押し返そうと圧をかけて来た。二機の
「銃をすくい上げて開いた胴を。」ガズロベルダの銃にカイルの手が掛かり、掴もうとしたとき、機体に掛かっていた圧力がスッと抜ける。密着していたガズロベルダが機体を引いたのだ。
「!」カイルは離れたガズロベルダに向けて機体をすぐさま寄せに掛かる。だが、ガズロベルダはそれに応じず大きく回避行動をとる。まるで、操縦者が突如別人に変わったかの如くカイルを狙うことに全く固執しなくなった。銃の制御をやめて銃口を下げ、機体を左右に鋭く動かしながらカイルから離れていく。
「なんだ…。急に。」その動作の変化を生んだ思考の変化にある種の恐怖を覚えたカイルは逃げたガズロベルダと同じ方向に機体を流す。カイルの背中があった場所を上空からの機銃斉射が駆け抜けていく。
「っちぃ。よほどしっかりと教育してると見える!」カイルは地上のガズロベルダは上空からの指示でカイルへの応戦をやめ回避を取ったと推測した。
「滾った我に固執せず指示に従える奴らか。」先ほどまで止まったままカイルを執拗に狙い追っていた地上のガズロベルダ。その動きは先ほどとはうって変わり常に動き続けカイルとの距離を適度に保ちながら銃を構えている。カイルが隙を見せるのをじっくりと狙い一撃を決めようとする企てが目に見える動きを取り始めていた。
「明らかに戦闘を変更している。」カイルはそれを確認するため全速でガズロベルダへと近づいてみる。ガズロベルダは背面の推力ユニットを起動して強く大きく飛んでカイルから距離を取っていく。距離が十分にとれたガズロベルダはカイル目掛けてではなく、カイルの走っているルートの一歩先に向けて機銃を撃ってくる。それは、足止めを意図した攻撃であることは明らか。
「っくぅ!」しかし、カイルはサーデュラスを止めるわけにはいかない。止めれば上空に居残るガズロベルダの機銃が飛んでくることは自明であるからだ。右前脚を走行から歩行に切り替え爪を地面に立てて踏ん張らせ、右前脚への圧倒的負荷を承知で急制動をかけ、そこを軸に右に無理やりに機体を曲がらせ空からの銃撃を無理やり回避する。
「っはっ!―、そう、何度も使える手ではないな。」ゴーグルには前脚の状態が悪化したとの表示が点滅していた。カイルは建屋と煙のあるエリアへと身を引くことにして一目散にそちらへ駆ける。背面からの映像を映したモニターには地上を疾走して追撃してくるガズロベルダが映っている。その銃の射線を躱す様に左右へスラロームする。
「このまま追ってくるなら。」カイルは即座にプランを立て実行を始める。燃え盛る建屋の間にある道。煙で満たされた隘路へとサーデュラスを滑り込ませる。
「もってくれよ。」緞帳の様に厚くなっている火災の黒煙の中に突入した瞬間にカイルはサーデュラスにまたも急制動をかけ、つんのめった前足2脚に体を支えさせて勢いそのまま後ろ足を持ち上げ機体を二脚で逆立ちに立ち上がらせると、後ろから来るであろう衝撃に備える。すぐさまサーデュラスにカイルが予期した強い衝撃と耳障りの悪い金属の衝突音が後ろから押し寄せる。追撃してきたあのガズロベルダが煙幕の中構えていたカイルのサーデュラスに真正面から突っ込んで来たのだ。
「っぐう!っ…―よし!」カイルは振り上げていた後脚を畳み込みもくろみ通りに突っ込んで来たガズロベルダをしっかりと抱きとめる。
「少しの間足元でおとなしく盾になってもらおう。」上半身のみを反転させたカイルは後脚の股に見えるガズロベルダの頭部パーツを突撃機銃の銃床で殴り破壊する。ガズロベルダは頭をつぶされてもなおサーデュラスの下でもがいているが重量、パワー、サイズの物理スペック全てでサーデュラスに負けているガズロベルダではこの拘束を振り払うことは容易ではない。
「この角度なら空を狙うに十分だ。」ガズロベルダに乗り上げる形で斜めになったサーデュラス。その角度を利用してカイルは上空を飛び交うガズロベルダの一機に狙いを定め突撃機銃を放つ。狙われたそれは、ポウッと炎を上げ錐揉みで墜落していった。
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