アンテロスメイア戦録 惑星ダキン
作久
夜襲
遥かな宇宙。その広大な懐の中に小さく抱かれて在る巨大なアンテロスメイア銀河。ここは今、銀河内における2大勢力、マライデア条約同盟とメリアヴァリア共和星圏連合の間に起った銀河圏間戦争の最中にあった。
アンテロスメイアの銀河を大きく二分する大勢力の同銀河をまたにかけた直接衝突。そして、それぞれに追随する構成国家間による当然にして、起こるべくして起こる代理戦争の荒波にアンテロスメイア銀河は今強く揉まれていた。
さらにはその衝突そのものが放つ、その大規模かつ持続的な戦禍のほてりに野望を触発された、泡沫的で矮小、もはや木っ端にも過ぎたりないほどに侘しい惑星国家間でさえも各々に争いを始め、銀河の中で猫の額にも満たない狭い領域を奪い合う勢力争いを続けていた。
アンテロスメイア銀河は今、かようにとめどがない終わりなき戦争の大きなうねりのただなかにあった。
アンテロスメイア銀河は銀河と言うからには、人が作った数で表現など不可能なほどの星を内包し、
それらには人がおり、
それぞれに営みがあり、
今はそれぞれが戦争と闘争を隣人としている。
その星の中でもひときわ小さな惑星。名をダキンという。ここでもそれは例外ではなかった。
この惑星ダキンでは惑星内に存在する国家勢力の内二つ、それそれをジームダルとアラキバマと言う名を持ち隣接する二国が二国間の国境に長年にわたり存在しているカルオスマという領土係争地の領有とその正当性をそれぞれの武力でもってのみで証明しようと争いをはじめ、互いの国民の血と命を互いの国民の体と心になすりつけ合っていた。
その真っ赤な紛争の趨勢は、係争地カルオスマ内に先んじて侵入し、陣地展開と支配権を構成したアラキバマが優位に立っていた。
相対するジームダルはその成立してしまっているアラキバマの優位を覆すべく、空からアラキバマの後背地への夜間進入と降下による強襲攻撃。それと併せて連携する地上からの進軍によって係争地内へ挟撃を仕掛けることで一挙に深く切り込みアラキバマ勢力を一掃する作戦を立案し実行を開始していた。
その挟撃作戦を完遂するため戦場へと向かうジームダルの輸送機が夜の空に一つ。挟撃の要となる後背地への切込みを行う降下部隊を乗せた輸送機が、惑星ダキンのだだっぴろい夜の空をただ一羽孤独に飛んでいた。
戦場へ向かう輸送機なのだから格納庫には当然アラキバマへの攻撃に使われる兵器が積んである。
その兵器はアンテロスメイア銀河にある惑星、国家、勢力の大半が採用し、運用している
その姿は高速駆動用の車輪を付けた四つ脚を蜘蛛のように配した下半身に人型の上半身を乗せた構造をしている。言ってしまえば四本脚の蜘蛛に人がまたがっているようなもので、最もよくその姿を表している呼び方としては
そういった
ツァリアスは、脚や腕、機体内で共通化できる部品は全てを共通化することで量産性と一機当たりの経済性を高めることを主眼に置かれ設計開発された獣兵であり、昨今のアンテロスメイア銀河内の戦場ではその量産性をいかんなく発揮し、大量に使われ消費されているありふれた
今回の空挺作戦に投入されるその獣兵ツァリアスは降下のための追加装備が施された機体が四機のみ。奇襲とはいえ敵の後背地へと強襲を仕掛けるにはこころもとない数である。
しかも、その乗員は正規兵ではなく全て選抜された傭兵であった。
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