闇の住人

@SiSibu

入口

 色彩。がない。物。がない。音。がない。

 あるものは光源がわからない、おぼろげな『光』でつくられる輪郭と、しんとして、なのにずっしりとした、動かそうとも思わせないような存在。

 僕がそこに足を踏み入れると、まるで違う世界だ。世界が違う、そう感じられたのは久々だった。いや、久々ではなく、初めてかもしれない、いや、久々かもしれないな。なぜだろう、何度も入ったことのある場所なのに、わからない。

 それに、怖い。ないはずの圧倒的な存在感が四方八方から僕を襲ってくる。あぁ、あぁぁ、怖い。僕は想像しているのだ。それをわかっていながら、怖い。そうしていることすら忘れさせてくれるくらい、怖い。だから、

 「なんて、最高なんだ」

零れた、その声は、感動していた。感激していた。興奮していた。

 闇の中、入口で立っていた僕はわけもわからず。

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