第7話 告白が招いた悲劇

 誠君は、行ってしまう・・・!

 だけど、私は何をしている?

 何がしたいの?


 誠君に伝わるようにわかるように、告白しなくてはいけないはずなのに、どうしてだか口が動かない。

 振られることがこわい。

 誠君ともっと良好になりたいけれど、今の関係を崩すことがこんなにもこわい。


 誠君は、曖昧にしてはだめなのに。

 私は誠君を取られてしまいそうで、胸が苦しくなる。


 廊下で、すれ違った女性がいると、誠君が「モーション先輩!」と叫んで、駆けつけた。


 この人が、誠君のいうモーション先輩?

 髪は腰まで長くて、綺麗だった。

 

「モーション先輩、久しぶりです」


「君は、誰なの?


この学校の生徒みたいだけど」


 知り合いじゃないんだ・・・・。


「俺ですよ。


俺。


後輩の井藤誠ですって」


「ごめん、誰なのかわからない。


君と私は、どこかで話したりしたことある?」


「あるわけないじゃないですか?


今日が初めてですよ」


 初対面なのに、なれなれしくしすぎじゃない?


「あ、そうなんだ。


君は、確か井藤誠君だっけ?


私がモーションというあだ名だということも含めて、いつ私のことを知ったの?」


「あはは、遠くからみれば誰でも知っている人になれますよ」


「つまり、君は私のストーカーをしていたということでいいの?」


「はい。


それと近いです」


 誠君、何を言っているの?

 これ、完全なる天然じゃない?


 モーション先輩は、顔が青ざめていた。


「君は、罪悪感とかないの?」


「え?


何が?」


「私のストーカーとかして」


「あるわけないじゃないですか!


モーション先輩が好きなんですよ。


そのまま連れて帰りたいくらいに。


ですから、モーション先輩、俺と付き合ってくれませんか?」


「無理です!


こんなストーカーじみた人は、こちらからお断りです」


「そんなあ」


 ショックを受ける誠君をおいて、モーション先輩はそのまま去っていった。


「振られちゃったよ・・・・。


どうして?


赤音、俺のどこか悪いんだと思う?」


「それは、誰でも振ると思うよ。


まず、自分がされたら、言われたらどう思うかを先に考えるべきだと思う。


でないと、誠君は一生彼女なんてできないと思う」


「そんなあ。


俺の運命の人は、本命として、両思いになれる人は、どこにいるんだろう・・・・?」


「誠君、そんなに落ち込まないでよ。


第一、私がいるじゃない。


それじゃあ、満足できないの?」


「赤音の存在には、感謝している。


感謝しても、しきれないくらい。


この先も、何年先もずっと一緒にいてほしい。


いてほしいの。


だけど、だけどね、それくらい俺には特別な存在がもう一人ほしいんだよ」


 どうしてなの?

 ここまで言っても、気づかないものなの?


 なら、今度こそ、告白しないと。


「誠君に伝えたいことがあるの」


「伝えたいこと?」


「私、誠君が好きなの」


「好きだよ。


俺も友達として、幼馴染として」


「違うの」


「違うって、何が?」


「私は、好き。


恋愛感情として」


 誠君は、驚いていた。

 

 やっと、言えた。

 私は安堵したその瞬間、


「それじゃあ、俺たちは友達でいられないし、俺はもうすでに好きな人いるから」


 誠君は冷たく答えた。


「ーっ!」


「俺は、華ちゃんのことが好きなの」


「さっき、振られたばかりじゃん?」


「たった今、華ちゃんのことが好きになったの。


君の親友という人。


じゃあね」



 こうして、誠君は去っていった。


 嘘、振られた・・・・?

 やっとの思いで、告白したのに?


 家に帰ってから、華ちゃんから電話がかかってきた。


「赤音に謝らなくちゃいけないことがあって」


「なあに?」


「私ね、井藤君に告白されて、付き合うことになったの。


ごめんね」


 こうして、一方的に電話を切られた。


 こんなことになるなら、告白しなければよかった。


 私は一人で泣いた。

 自分の部屋で、誰にも聞こえないように静かに泣いた。


 私は高校2年生になり、誠君と違うクラスになり、華ちゃんとも違うクラスだった。


 だけど、失恋の傷からは立ち直れていない。


 華ちゃんと誠君は学校で有名なカップルとなった。

 だけど、華ちゃんはしばらくしたら、亡くなっていた。

 殺人事件に巻き込まれたらしい。


 ここから、私は誠君からアプローチをされるようになった。


「赤音、もし俺のことをまだ好きなら、付き合ってくれないか?」


 ここで、私は誠君が嫌いになる。


「自分から振っておいて、何なの?」


「赤音が必要だって、今になって気づいたんだ。


俺たち、やり直そう」


「華ちゃんのこと、好きなんでしょ?」


「あいつは、故人だから・・・・」


「私と誠君が付き合ったら、どうなると思う?」


「それは大切にするし、守るよ」


「有言実行なんて、本当にするの?」


「え?」


 私は、腹が立ってくる。

 誠君が好きなうちはこれも含めて、許せたけれど、恋愛感情がなくなった今は、これが苛立ちしか感じなくなってくる。


「私は、もう誠君に対する気持ちがないの。


それに、私と誠君がカップルになったら、唄さんに狙われるし、命を落としたくない」


「俺が守るよ」


「守りきれてない」


「俺のこと、好きなんだろう?


だから、告白したんだ。


あれは、罰ゲームだったのかい?」


「罰ゲームでもないけど、あの時は本気で好きだったから、告白した。


だけど、それはその時限定の気持ちなの。


今は、誠君に対する気持ちがない」


 冷たく言う私に、誠君は叫んだ。


「嘘だよ!


赤音は、本気だった!


認めない、認めないよ!」

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