第17話

「ソニア嬢が君に会いたがっていた。直接顔を合わせてお礼を言いたいそうだ。後で処置室に立ち寄ってくれ」


「......」


 どうしたことか、ミハエルが話し掛けてもライラはずっと上の空のままであった。


「ライラ嬢!? どうした!?」


「えっ!? あ、あぁ、なんでもありません...ソニア嬢の元へは後でお見舞いに伺いますので...」


「なにか気になっていることでもあるのか?」


「...というより、ソニア嬢が気の毒だなと思いましてね...あんなトラウマになりそうな酷い目に遭ったっていうのに...帰るに帰れないだなんて...」


「あぁ、確かにそうだな...」


 沈痛な表情を浮かべるライラに釣られるように、ミハエルもまた悲し気な表情を浮かべた。


 しばし間を置き、ライラがなにか決心を固めたような顔でミハエルにこう告げた。


「殿下、私に一つアイデアがあります。上手く行けば真犯人を追い詰められるかも知れません」


「なに!? 本当か!?」


 ミハエルは直ぐ様食い付いた。


「えぇ、ただし条件があります」


「聞こう」


「まず第一に、先程提案した侍女の入れ替えが完了していること」


「それはすぐに手配しよう」


「第二に、次のお茶会の主催を私にすること」


「それは...構わないが、真犯人が誰かまだ分からないこの状況下で、果たしてお茶会を開けるものなのかどうか...参加辞退する者が相次ぐだけだと思うが...」


 ミハエルは顔を顰めながらそう言った。


「でしょうね。だから毒見役を用意して貰います。そうすればみんな安心して参加してくれるでしょう」


「なるほど...確かに...」


「ただし、ソニア嬢だけはあくまでも任意の参加ということにして下さい。本人の意向をなによりも優先したいと思いますので」


「あぁ、そりゃもっともだよな...分かった。許可しよう」


 ミハエルはゆっくりと頷いた。


「第三に、ある人物の部屋を重点的に監視して下さい」


「それは...真犯人ということか?」


 ミハエルは息を呑んでそう尋ねた。


「いえ、今の段階ではまだ容疑者の一人です」


「あぁ、そうだよな...それで? その人物の名は?」


「それは...」



◇◇◇



「失礼しますよ」


 ミハエルとの会合を終えたライラは、処置室に居るソニアのお見舞いに出向いた。


「あぁ、ライラさん!」


 途端にソニアがベッドから起き上がる。


「ソニアさん、どうか無理しないで。まだ安静にしてて下さいな」


「体はもう大丈夫よ! ライラさんの応急処置が的確だったからだとお医者様に伺ったわ! 本当にありがとう! あなたは命の恩人ね!」


「いえいえ、ご無事でなによりです。ところでソニアさん、二三お伺いしたいことがあるんですがよろしいでしょうか?」


「なんでも聞いて!」


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