count1 星と川

 まず私の名前を紹介しよう!

私の名前は星野七奈、誕生日が七月七日で、今年で十六才になった。血液型は何だったかな、覚えてないや。身長は百六三cm。体重はレディの体重は聞かないでもらいたい。胸のサイズも、言わないでおこう、どうせ後でわかるから。

これで私の自己紹介はおしまい!

「そろそろこの物語を綴るつづるとしよう」



暦八年七月八日、天気は快晴 No.1 count0


 いつも通りの朝だった。部屋は明るく灯っており、カーテンの隙間から光が差し込んでいるのが見える。そして、私のベットで寝ているもう"一人"がいつも通り私の体に抱きついてくる。その"もう一人"をどかそうとするもなかなか離れてくれなかった。こうなったら、いつも通り毛布を脱がしてやるしかない。


「そーれ」

「ちょっとやめ、キャ」


 やっぱり思った通りだった。中から出てきたのは、男の人なら喜ぶかもしれないパジャマ姿の姉だった。


「あーあ、見つかちゃったかー」

「見つかちゃったかー、じゃないよ! 全く、こんなことやって恥ずかしくないの?」


そう問いかけると、姉が上を向いて考え、答える。


「七奈ちゃんが大好きってことの愛情表現だよ♡」


 朝からこの愛情表現はさすがというしかないだろう。正直ちょっとだけ引いてしまった。そんなことよりも重要なことがある。


「何で部屋に入ってるの?」


 姉はニコッと笑い、前屈みになって言う。


「えーっとねー、うん。かわいかったから♡」


そう、いつもお姉ちゃんは私が可愛いという理由でベットに入ってくる。


「早く出てってくれない?」


私は、頬をふくまらせ、姉をどかす。


「もうちょっとだけ居ようよー」


またいつもの展開だ。こうなったら、あの言葉を言うしかない。


「あぁこのままだと、遅刻しちゃうなぁ。お姉ちゃんのせいでぇ」


すると、姉の顔がみるみる青ざめる。


「よし、早く行こう!」


いつも通り、切り替えはやいな。


「七奈ちゃんの無遅刻無欠席のために!」


結局、私のためか。そうして、いつものやりとりを終え、学校へ向かう。それが私にとっての日常だ。


「次から気をつけてよ」

「りょーかい。でも、いいの? また、やっていいってことだよね?」

「…」


 違うからといつもと同じ答えかたをしそうになるのを耐え、早歩きする。


「どうしたの、顔を真っ赤にして? まさか、お姉ちゃんのこと好きになった?」

「そんなわけないから!」


 そんなことを言い合いながら着いた。私と姉が通っているのは、天竜宮高校。共学の学校で、男女ともにだいたい半々ぐらいになっている。


 高校の名前は、私たちの住んでいる市の名前から来ているらしい。私のクラスは一年二組だ。姉は二年生なので階が違うけど、楽しくやっているそうだ。


 そして今日は一学期最後の日。学生ならお馴染みの例の「アレ」をもらう日である。


教室に入り、自分の席に着くと、前から挨拶が聞こえてきた。


「おはよう」

「おはよう」


私も挨拶を返し、椅子に座る。

 

 私の目の前にいる彼女の名前は、宮川夕奈。私の幼なじみだ。背は、一五八cmで、私より少し小さい。あと、誕生日が同じでよく一緒に祝われている。


「どうしたの? お姉さんに何かされた?」


 相変わらずのように図星をついてくる。というか、今思ったけど、顔が近い。


「え、あ、そのー」

「何? 言いたいことがあるならどうぞ」


 ニコニコしながらもっと顔を寄せてくる。そして、私と顔が触れそうになる。もう無理、ダメ。


 私が少し目を逸らし言う。


「あのー、もうちょっと顔を離して下さい」


 恥ずかしすぎてもう顔が見れない。


「なんだそんなことかー。へぇ、そんなこと気にしちゃうんだ。やっぱかわいいね、七奈は」


そんなやりとりをしていると、先生が入ってきた。


すぐにホームルームが始まり、学校に必ずある終業式前の大掃除が始まった。着替えは、クラス別の部屋があり、そこですることになっている。この時間が、私にとって一番辛い。

 

 理由は、誰もが気にしうる周りと自分との体型との差が見えてしまうからである。私は、そこまで自分の体を自信を持っているわけではないからだ。とっとと早く、ジャージに着替えて、掃除の担当になったところに行くことにした。


 その後は、小学校から変わらない大掃除のやり方をやり、とっとと着替えて終業式に臨むという今まで私がやってきたことに沿うように行われた。


 

 

 いつも通りにこなしてきたことを終え、さっさとクラスのほとんどが帰り、教室が静まったころ、私と夕奈はまだ雑談をしていた。その時、ふと窓を見た。


 その時から、私たちの「人生」と「運命」は狂い始めることになる。


「ねぇ、あそこ。誰かいない?」


 校庭の端っこに見える木に指を刺しながら、夕奈に話かける。


「え、どこ。あれ? 確かに誰かいるね。先生かな? にしては、背が小さいし、なんか全身黒っぽく見える」

「なんだろう? 気になるし、行ってみない?」

「そうだね。行こっか」


 元々、帰り支度を終えていたので、急いで階段を降りて、私たちは校庭へと向かった。近づいていくにつれ、だんだん姿が見えてきた。


 上から見た時と違い、"それ"が何なのかがわかってきた。“それ“は全身黒と白のロリータ服をまとった銀髪の女の子だった。そして、泣いていた。


「あの、ここ部外者立ち入り禁止なんですけど」


 思い切って、話かけてみることにした。


「あの、大丈夫?」

「…」


 返事がない。


「どうしたんだろう、この子?」


 夕奈が問いかけてくる。


「わからない。迷子かも」

「でも、ここ高校だよ。先生たちが見回ってるはずなのに、どうして誰も気づかないの?」

「確かにそうだね」


 すると、突然女の子が私の目の前に立ち、脳内に声が響かせられる。


『ワタシノコトバワカル?』


 急に頭のなかで喋り始めた! えーっと、どう返したらいいのかな。とりあえず、脳内会話ができるか、試してみるか。


『分かるよ』


 すると、ぱぁと顔が明るくなり、抱きついてきた。


『キコエル、ウレシイ』


 というか、今気づいたけど、この会話すごくない!? だって、頭の中で会話してるし、普通じゃ体験できないよ、これ!?


『あのー、そろそろいいかな?』


 ずっと抱きつかれ、動けない。それになんかよくわかんないけど、夕奈がすごく機嫌悪そうだから、少し離れてもらおう。


 すると、女の子はビクッとして、木の影に隠れてしまった。


『大丈夫、怖くないよ』


 少しだけ近づき、相手の目線に合わせる。少しスカートが汚れちゃうけど、しょうがない。あとで、払えばいいし。近くに寄ったところで聞いてみる。


『あなたは宇宙人ですか?』


 木の影から質問が飛んでくる。


『ウチュウジンッテナニ?』

『えーっとね、私たちの言葉で外の世界に住んでいる人たちのことを言うの』


 木陰から出てきたちらっと出てきた頭にクエッションマークが見える。


まぁ、それはそうだろうな。さっきから脳内で語りかけてくるばかりで口なんて動いてないから喋る《しゃべ》ってことがわからないのかな? まいったなぁ。


『どうしたノ、お姉ちゃん?』


 だって宇宙人だよ。普通の対応ができる方がすごいと思う。というか、カタカナ感じじゃなくて、流暢りゅうちょうに喋れるようになってるし。それに、こんなかわいい女の子にお姉ちゃんなんて言われた。なんだか、新たな性癖に目覚めそうな予感がする。


『チカクにいた同じぐらいのコと同じ喋り方をしてみたノ、アッテル?』


 んん、うん。とにかくどうやってやったのかはわからないが、とりあえず変な人の喋り方じゃなくてよかった。近くにいた小学生の子、ありがとう! これで多少は話ができるようになった。


「その子の名前分かった?」


 あ、やばい。夕奈のことすっかり忘れてた。というか、夕奈にはさっきの会話聞こえてなかったんだ。


「えーっと、名前はー」


 今、気づいたけど、相手の名前も聞かずに話してた。


『お名前はなんて言うのかな?』


 さっきと同様に脳内解答を求める。


『名前? 名前って何?』


 そうか、名前って宇宙人に言っても伝わらないか。


『うーんと、自分が呼ばれてる呼び方のことかな』


 まだ首を傾げてる。


『せっかくならお姉ちゃんが名前をつけてあげようか? えーっと仮だけど、空野望美なんてどうかな。宇宙からやってきたってことで空って意味と望美は美しい希望と望みをかけた言葉だよ』

 

すると、望美ちゃんがぴょこんと姿を出してきた。


『空野望美、空野望美。お姉ちゃん、ありがとう! 私の名前は空野望美! これからよろしくね、お姉ちゃん!』


 これが私たち3人の最初の出会い。ここから全て始まった。

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