第6話 立候補

 時鳥ときとり子規しきが入学したときの評価。

 宿木やどりぎさん並みの美少女が入学してきた。


 モデル並みのスタイルの美少女。背も高い。ポニーテールの髪がよく似合っている。同じ制服を着ていても、抜きん出て目立つようなカリスマ性。


 この学校の生徒会長……宿木やどりぎ会長。学校の美少女に大巨頭の一角。


 宿木やどりぎさんは、うちの学校の生徒会長で、真面目で成績優秀。スポーツ万能……だったら完璧だったのだが、意外にも運動音痴。


 そんな彼女が、進級当日に遅刻……? 本当に珍しい。


「すいません……」宿木やどりぎ会長自身も、かなり落ち込んでいるようだった。「寝坊しました……」


 見ると、宿木やどりぎ会長の上に寝癖がついていた。いつも完璧に容姿を整えてくる会長にしては、本当に珍しいことだった。


「いや……」守衛さんも、まさか会長が遅刻してくるとは思っていなかったのだろう。「まあ、キミがわざと遅刻してくるとは思ってないよ。注意なんかしなくても、いいだろうさ」

「……いえ……まだ、精進しなければ……」


 こんなヘコんでいる会長は初めて見た。いつも自信満々で、常に誰かから憧れられているような人だと思っていた。


「おや……」守衛さんが僕たちに気づいて、「キミたちも遅刻?」

「あぁ……はい」

「遅刻理由は? 場合によっては、遅刻がつかないよ」

「ちょっと犬と戯れてました」

「そうか……じゃあしょうがないな」なんか認められた。「3人共、どうぞ。門を開けるから……入っていいよ」


 そうして守衛さんに門を開いてもらって、僕たちは校内に入った。


「情けないところを見せたな」生徒の前だからか、宿木やどりぎ会長が生徒会長モードになっている。「生徒の模範となるべき生徒会長が遅刻とは……恥ずかしい限りだ」

「いえ……」僕に話しかけてるんだよな……? なんか距離感近いな……「誰だって、寝坊くらいしますよ。人間なんですから」

「ありがとう」


 そんな世間話をしながら、靴置き場に移動する。


 ……というか、僕は今……両手に花だな。学校最高級の美少女を2人連れ歩いている。しかも片方には告白されている。


 ……他の男子に見られたら、嫉妬されるんじゃなかろうか。刺殺されるんじゃなかろうか。


 さて靴を履き替えて、職員室に移動する。この中でクラス替えを把握している人はいないので、3人で職員室に向かう。


「その……なんだ……」気を使ってか、宿木やどりぎ会長が話題を振ってくれる。「ずいぶんと、仲が良いんだな」

「……」


 なんとごまかそうかと迷っていると、隣の時鳥ときとりさんが、


「私から告白しました」

「……ほう……」なんか一瞬だけ睨まれた、気がする。「……返事は?」

「保留されちゃいました。友達からって」

「なるほど……」


 ……なんだろう……この学校って交際禁止だっけ? そんな校則はなかった思うけれど……


 じゃあ、なぜ生徒会長宿木やどりぎ黒百合くろゆりが僕たちの仲になんて興味があるんだ?


「では、まだカップルは成立していないということだな?」

「……」時鳥ときとりさんがちょっと不服そうに、「そうなりますね」

「ならば、私が立候補しても問題はないな?」


 ……


 ……


 あれ……? これ、夢の中?

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