夏の季節の。その五。

寝かせていた生徒から突然聞こえてきた野太い声。

俺達はその声に驚く。

明らかに女生徒の声には聞こえない声は男の声そのものだった。


『ここは!?』


すると、部長がそいつに問いかける。


「お主は……誰だ!?」


部長の言葉に女生徒は答える。


『ククク……僕の事は別にいいだろう!?』

「何っ!?」

『んん!?これはこれは……。』


身体を乗っ取られている女生徒はニヤリと微笑む。


「なんだ貴様!?何をニヤついている!?」

『フフン……この身体…全くどうしてこの俺を現代に蘇らせてくれたというのか。』

「なんだと!?その娘の身体からでていくがよい!!??」


部長のその声にニヤリと笑みを浮かべる男の霊体。


『お前は馬鹿なのか?折角手に入れる事ができたこの身体を逃すはずもないだろう?』

「ぐぬぬ……貴様ーーーーーっ!?」


部長が叫ぶ。

次の瞬間……女生徒はスーッと立ち上がる。


『ククク…この俺に手出し無用……何かしてもこの女が傷つくだけだからなあ。』

「貴様……卑怯だぞ!?」

『うるせえ……俺の生きてた時代は今とは違い寂れた時代だったからなあ……このまま楽しませてもらおう。』


ジリジリと奴は後ずさる。

部長の身体を突き飛ばし…ダッと走りだす女生徒。


「きゃっ!?」

「部長!?」


仁は部長を抱きとめる。

俺は女生徒の進路を塞ぐ。

すると。


『鬱陶しいわ!!!!!』


押さえ込もうとした俺の腕をするりとすり抜ける女生徒。


「なっ!?」

『貴様、女性だと思って捕まえる事に遠慮したな。』


ドンッと俺の身体を真横から押し俺が捕まえる事を防いだ霊体。


「うあっ!?」


ドカりと転倒してしまっていた俺。


『じゃあな!!あばよ!!!!!』


女生徒は走り出していってしまう。

この時の俺達には捕らえることができずに、彼女は走り去っていってしまったんだ。

「いてて…すまん……仁。」

「部長…無事で良かった。」


ひとまず俺達の間では怪我人はなかった……。

だが……。

先生は口を開く。


「お嬢様……あの娘の情報は得ております…。」

「ああ……すまない……だが……あの娘の身体を自在にしている奴が素直に自宅へ戻るかどうかも分からぬ………これは奴を見つける事を念頭に置き対処せねばなるまい…親御さんの事もあるしな。」

「そうですね……捕まえるにはどうします!?」

「捕まえても霊体をどうにかしないとダメですしね。」


俺達はこうなると八方塞がりだ。

すると岡崎先生が口を開く。


「お嬢様……とりあえず女生徒の親御さんには学校で遅くなると伝えましょう…そしてこれからどうするか話し合いましょう。」

「おお…分かった……頼む。」


そして俺達はさらに考えるのだった。

一方……その頃。


『ぐへへ……これは気分がいいぞ。』


霊体は彼女の姿のまま逃げていたのだ。


『はあはあ…ここまでくれば簡単に追ってはこれまい。』


すると霊体の彼女に声をかけてきた者がいたのだ。

それは彼女の友人だった。


「紗枝!?どうしたの!?あの時オカ研に行ってみるって言ってたけど問題解決したの!?」

『え!?ええ!大丈夫だったわ。』

「そっかあ…それなら良かった。」


俺は母体の女の友人と一緒に歩き出す。

すると俺の脳裏にある欲求が沸き起こってくる。


(ククク……この女……こいつの中身が別物だとは思ってないだろうなあ。)

「でね?あの時さあ。」

(しかし…奪った身体が女だというのが良くなかったな…折角こんないい女と近づけてるのに……このままでは襲うこともできねえだろうが!?)


こうして話しながら歩いていると一人の男が前から歩いてくる。


(おおっ!?もしかしてあの男を使えば…だがまずは…この女を。)

「あ!ちょっとあそこ!!きて!?」

「えっ!?なにっ!?どうしたの!?」


そう言いながら娘はついてくる。

そして路地へと駆け込み………。

俺は意識を先程の男に持っていく。


「紗枝!?紗枝!?大丈夫!!???」


友人の女子は必死に先程の女子に声をかけている。

俺が離れた事で気を失っているからだ。


「誰か!?誰か!?助けてください!?」


友人は叫びだす。

泣きながら叫ぶ彼女。

俺は男の身体を操ると。

ゆっくりと背後から近づいたのだ。


『大丈夫……ですか?』


俺が声をかけた事に気づいた彼女は目に涙を浮かべこちらをみている。


「え!?あ!この子が突然倒れたんです!?」

『へえ……そうかい。』


ニヤリと笑みを浮かべる俺。

次の瞬間俺の腕に捕らえられる女生徒。


「えっ!?いや!いや!いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

お読み下さりありがとうございました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る